第四十一話「対話」
「まずは小手調べ、だっ!」
腰のベルトから投げナイフを取り出し投げる。だがこれは素早く振るわれたハンマーで弾かれてしまった。
しかし、よくあの細腕であんなどデカいハンマーを使えるな。普通だったら持ち上げる事すら出来なさそうなものだが。
「マルス! そこに転がってる奴らはどんな攻撃でやられたんだ?」
「ただハンマーでぶっ叩かれただけだ。だけど攻撃が速すぎるから避けられず、一発で眠らされちまった」
「お話は終わりましたか? いくら話し合っても無駄ですよ。どうせ見破れないんですからね」
奴はそう話している間にもハンマーを振るい、群がる討伐隊のメンバーを薙ぎ払っていく。マルスの言ってたように全員が一発でやられている。
「お前は誰なんだ!」
少しでも時間を稼ぐ為に会話を試みる。この間にマルス達が閃いてくれたら良いのだが……おそらく無理だろう。
「これは失礼。紹介が遅れました、私はプラートと申します。以後お見知り置きを。出来ればあなたの名前もお聞かせ願えませんか?」
「俺はラック。会話はできるようだな」
「ラックさんと言うのですか。なかなか良いお名前ですね。ではこちらからも質問をさせてもらいましょう。なぜあなたは私達と闘うのですか?」
てっきり普通の質問をしてくると思っていた俺は予想外の質問が来て戸惑う。あいつらと闘う理由だと? うーむ、思いつかねえな……。
「ああ、そんなに深く考えないでください。もっと思いついた事を言えば良いんです」
「そうだな……俺の闘う理由は俺の手の届く範囲は守りたいから、だ。お前らのアジトに居た五人と闘ったのもそこのティルシアが攫われたからだしな。お前は何故なんだ?」
「ほう、なかなか珍しい理由ですね。他人の為に闘うというのはあまり聞きませんでした。私の理由は簡単ですよ、ただ単に私の名前を知らせたいからです」
お前の理由も珍しいじゃねえか。それにしてもこいつ今俺が事実上のアジト壊滅を知らせたのに気にも留めずスルーしたな。こいつにとってはどうでもいい事なのか?
「お前の理由も変わってるな。というか随分と仲間に対して冷たくねえか? アジトが潰されたんだぜ、もちっと反応しろよ」
「それは別にどうでもいいんですよ。元々私とあいつらの目的は違いますし。ただ有名な集団になろうとしていたので、それのトップだったら私の名前を広めるのも楽だと思ったから入ったまでです」
これは意外だな。ずっとボスのこいつが仲間を集めて事件を起こしたとばかり思ってたんだが、どうやら違ったようだ。
「話すのにも飽きましたね……そうだ、一つゲームをしましょう」
それは悪魔の提案だった。