第四十話「突撃」
あまり時間を掛けてもいられないのですぐに街へ向かう。するとティルシアが俺に魔法を掛けた。
赤い光の衣が俺を包む。
「これは……肉体強化魔法か? ティルシアありがとう。これで速く走れる」
「いえいえ。今日私は何もしてないんですからこのくらいはさせて下さい。さあ、行きましょう!」
俺は頷き、再び走り出す。魔法のおかけで速く走れる分先に向かったマルス達にも追いつけるだろう。
全力で走っていると、街まであと少しという所でマルス達に追いついた。予想以上に速くて驚きだ。
「お、ラックじゃねえか。それに嬢ちゃんも。手伝いに来てくれたのか?」
「もちろん。お前だけが英雄扱いされんのは癪だからな」
冗談めかしながら言うと、マルスは違えねえと豪快に笑った。さっきまではリーダーとしての重荷か、いつもと違う様子だったがすっかり元通りの顔だ。
「よーしそんじゃあお前ら行くぞ! 死ぬと痛えから気を付けて闘えよー!」
マルスの言葉に、部隊の全員が雄叫びと武器を掲げて応えた。まるで地鳴りのようだ。
リーダーのマルスが街に突撃すると、それに続いて他のメンバーも雪崩れ込んだ。
「さて俺達も行くか」
「はーい。ピンチの時は守ってくださいよ?」
「気が向いたらな」
そうぶっきらぼうに答えたらポカポカと頭を叩いてきた。身体強化魔法が掛かっているため意外と痛い。
「ふんだ! もうラックさんなんか死んで苦しめば良いんです」
「すまんすまん、ちゃんと守るよ」
「約束ですからね! 破ったらあとで全力パンチしますよ」
それだけは勘弁してくれ。はっきり言ってアレはただの人間が受けて良いものじゃない。
気を取り直して街の中に入ると、火事や暴動は収まっていた。ギルドの別働隊のおかげだ。
しかし街の中心部にある広場で一人の男をマルス達が囲んでいた。男の周りには気絶した討伐隊のメンバーが転がっている。
「あいつが暴れてる奴か。そんなに強いのか? そうとは見えないぞ」
マルス達が型作っている円の中心に居る男は、優しそうな顔立ち。体つきはどちらかというと細身で、喧嘩してもすぐにやられてしまいそうだった。
ただ異質なのはその身体に似つかわしくない巨大なハンマーと返り血で赤く染まった服。それらがこの男の異常っぷりを表していた。
「ラック! 不用意に近づくなよ。そこに転がってる奴らが一瞬で気絶させられた。何かを隠してるのは間違いない」
マルスは男から目を離さず俺に告げる。そのくらいの相手って事か。
「りょーかい。そうなると速く仕掛けを見破らなきゃ勝てねえな」
何もかもが正体不明の男との死闘が今始まる。




