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運と仲間でファンタジー  作者: 旧正 睦月
第四章「『トリックスターズ』」
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第三十八話「幕引き」

 最後の一人、ティルシアを触ろうとしていた男は早く片付いた。

「ま、待ってくれ! 女も返すし謝れってんなら土下座だってする! 許してくれ! 話せば分かるから!」

「もう遅え」

 武器を捨て地面に頭を擦り付けながら懇願する男に全力で踵落としを決める。自分で好き勝手しといてヤバくなったら見逃せだなんてそんな道理が通る筈ないだろう。

「ごぶっ! うぁぁ…………」

「誰が寝ていいっつった? まだお前にゃ恨みがあんだからよ、気絶しても終わんねえからな」

 男の右腕を背中に回し、骨を折る。パキッと木の枝を割ったような音がしたので完全に折れたはず。

「ぎゃああああ!」

「まだ死ぬなよー。あと三本、いや首も含めて四本残ってるんだからな」

「もうやめてくださいラックさん!」

 逆の腕に手を回したところで、目を閉じさせていたティルシアからの声が聞こえた。

「私は大丈夫ですから、もうやめましょうよ!」

「何でだ? こいつはそれだけの事をしたんだ。その報いを受けるのは当然だろう?」

 純粋に疑問が湧いたのでティルシアに問う。

「確かに私を触ろうとはしましたけど結局触られてはいませんし、十分痛い思いをしてます。だから、もうやめてあげてください!」

「だとよ。心優しいあいつに感謝するんだな。あ、そうだ。お前らの目的は何なんだ? 何故ティルシアを攫った?」

 ティルシアの手足を縛っているロープを切りながら、辛うじて意識のある男に聞く。こういう事ははっきりと知っておきたい。

「……目的は『トリックスターズ』って名前の売名だ。その女を攫ったのも人質にして街のお偉いさんに言うことを聞かせる為。誰でも良かったんだが、一人で行動してたしまるで周りを警戒してなくて攫いやすそうだったから選んだ。まさかこんな強え奴が助けに来るとは思わなかったぜ」

 言っていることを全て信用することは出来ないが、ある程度は信じてもいいだろう。

「なるほど大体は分かった。じゃあもう二つ聞かせろ。トリックスターズには何人くらい居て、どんな計画を立てたんだ?」

 男は全てを諦めたように一度大きく息を吐き、話し始めた。

「人数は俺らも合わせて約四十人。今はもっと減ってると思う。計画の方は俺達もあまり深くは知らされてなかったんだが、基本的には事件を起こす組と俺らのアジトを守る組に分かれてる。そんで、そこそこ事が大きくなったら偉い奴らを山に呼び寄せて名前を知らしめるつもりだった。その計画も失敗に終わったがな」

 こいつの言っている事が本当なら不味いことになった。事件を起こした奴らは一旦戻ってくるはずだ。きっとすぐに大軍が押し寄せてくる。

「話は分かった。ティルシア、逃げるぞ!」

「はい!」

 罠の位置は覚えているので、引っかからないように気をつけながら外を目指す。敵が来る前に逃げられるか微妙なとこだが会わないことを祈りながら走った。

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