第三十七話「攻撃」
まずは腰ベルトから投げナイフを数本取り出す。それを一人に向かってダーツの様に投げる。この時狙うのは頭や心臓などの急所ではなく当たりやすい腹や太腿の辺りだ。
「そらよっ!」
そして投げたと同時に武器を持ち追い打ちをかける。撃ち落としていたら俺にやられるし、避けても俺にやられるという状況を作り出すのだ。
結局、そいつは迷いで動けずナイフが刺さったうえに俺の短剣で両腕を裂かれた。これで一人料理完了。
続いて後ろから四人が武器を振り下ろしてくるが、敢えて前に出る。その衝撃で一人を突き飛ばし脱出。
一度振り下ろした物を途中で止めることは容易ではなく、奴らは無防備な姿勢をとってしまう。その隙に短剣で脇腹をかっさばく。
「ぐあああああ!」
下手に心臓を狙うと骨に挟まってしまい次の行動に移れなくなるので比較的柔らかい部位を狙う。
痛みと大量出血のショックで暫くは動けない筈なので二人目も終了。
密集地帯で戦うのは危険なので距離をとる。幸い敵は飛び道具を持っていないので一息つく。
「おいおいこんなもんか? 散々粋がってた割には弱えな!」
こうして挑発するのも作戦の一つだ。わざと怒らせ頭に血を上らせる。人間は興奮すると行動パターンが単調になって読みやすい。
挑発は効果てきめんだった様でバラバラに走ってきた。力任せに武器を振り回すが、予備動作が大きいので軽々と避けられる。
「おのれらは扇風機か? 全く当たんねえぞ」
その調子で避け続けていると、武器を振るスピードが鈍くなってきた。考えなしに動いたせいだ。動きが止まった奴には矢継ぎ早にナイフを投げる。
「オラオラ休んでんじゃねえよ! このナイフには毒が塗ってあるから死にたくなけりゃ必死で避けな!」
もちろんハッタリだ。だが疲労困憊して頭が回ってない状態ではそんな事も見破れない。結果走れない体にムチ打って逃げるしかないのだ。
ナイフのストックが無くなろうかという時、一人の足にナイフが刺さり転んだ。俺はそいつの頭目掛けて硬い石を振り下ろす。
「がっ! ……」
頭に強い衝撃を受けた奴はピクリとも動かなくなる。暴徒鎮圧の基本だ。固い地面に顎をつけていたので多分顎も砕けているだろう。
これであと二人。そろそろカーテンコールにしよう。
「かかってこいよ! ビビってんのか?」
挑発はしたが、効果がないようだ。それもそうだろう。あっという間に仲間が三人倒され、敵には一発も攻撃が当てれていないとなれば萎縮するのも当然だ。
「来ねえならこっちから行くぞ!」
「ヒ、ヒィッ!」
武器を構え直し、全力で近づく。相手は混乱して中途半端に武器を構えているが、その姿勢では攻撃出来たとしても大ダメージは与えられない。
フェイントで意識をそっちに向け、もう片方のナイフで足を刺し、捻り回した。
「あああああああああああ!!!!」
「うるせえ!」
ナイフを刺した場所を両手で押さえながら崩れ落ちたので、頭を思い切り蹴っ飛ばした。爪先が口に当たったせいかそいつの歯が飛び散った。
次でラスト。