第二十八話「出発」
数十分後、終わりそうだったのにバスタオルが落ちてしまい制裁の時間が伸びるなどのハプニングもあったがようやく終わった。
「いてて……少しは手加減してくれよ」
「覗き魔にかける情けなんてありません」
「だからあれは覗いた訳じゃなくてだな……」
誤解を解こうと奮闘するが、あまり成果は出ない。どうすりゃいいんだ。
「まあいいです。それより着替えるんで出てってください」
流石に着替えるシーンを見たいとか言ったら今度こそ殺されそうなので、おとなしく従う。
その後、俺の服を着たティルシアが出てきたがとても色気があった。
「なにジロジロ見てるんですか気持ち悪い。通報しますよ」
こいつは人を罵倒しないと喋れないのか。それに仮にも看病してくれた奴を通報するとは酷いな。
「そういえば飯食うか? 何にも食べてないだろ」
「いいえ、あんまりお腹空いてないんですよ。これも熱のせいなんですかね」
腹が減ってないなら無理に食べさせることもないだろう。
ティルシアはあくびをしたりして早く眠りたそうだったので、寝室へと運ぶことにした。
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「寝室は内側から鍵が掛けられるようになってるからな」
「はい。おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
ティルシアに一通りの説明をし、部屋を出た。同じ部屋で寝るわけには行かないが、リビングにはソファと毛布があるし何とかなるだろう。
「今日は一段と疲れたな。まさか少女を看病する羽目になるとは思わなかったぞ」
本当に今日一日はいろんな事があった。天気予報では晴れだって言ってたのに雪になったし、見ず知らずの女の子に二度もぶっ飛ばされた挙句看病することになったし、わざとじゃないが裸も見たし。
「…………トイレ行っとこう」
こうしてドタバタの一日が終わった。
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翌日、朝飯を食べティルシアの熱を計ったら平熱に戻っていた。
「熱は下がってるな。どうする、もう一日様子を見るか?」
「いえ、旅を続けます。あんまり迷惑をかける訳にもいかないですし」
少し寂しいような気もするが、笑って見送る事にする。
荷物をまとめたティルシアと玄関で最後の会話をした。
「じゃあ。またいつか会えると良いな」
「そうですねー、旅が終わったらまた来ますよ。ありがとうございました」
「おう、達者でなー」
外の雪は少し残っていたが、雲ひとつない快晴なのでじきに全て溶けるだろう。
俺は家に戻り、昨日の賑やかさを思い出しながら仕事の用意をした。
一年後、俺とティルシアが一緒に暮らす事になるのはまた別のお話。