第二十六話「露出狂?」
部屋の中には、予想通りと言うべきかやっぱり服を脱いだままのティルシアが居た。
「……露出狂なのか?」
「なんでそうなるんですか!」
だってさ、と前置きしてから、
「初めて会った男に自分の肌を見せびらかすなんて……露出狂以外に何があるって言うんだ?」
「違います! 体が固くて背中が拭けないから拭いてもらおうと思って読んだんですー!」
なるほど、そうだったのか。だが一つ言いたい。
「それなら別に下は履いてても良いんじゃねーの? やっぱり露出癖があるんじゃ……」
事実を指摘すると、そんな事に今更気が付いたのか顔を真っ赤にして唸っていた。
「うー! 履きますから早く出て行ってください! ほら早く!」
押し出されるようにして部屋を出る。
あいつは熱が出たせいでボケてるんだな。きっとそうだ。そう信じなきゃティルシアの将来が不安で仕方ない。
真剣にティルシアの将来について案じること数分、部屋に入る許可が出た。
「じゃあお願いします。私が拭けていない所を指示しますから、くれぐれもそこ以外は触らないでくださいね」
「ああ、了解だ。それじゃ始めるぞ」
そう言葉をかけるとティルシアは小さく頷き、背中をこちらに向けた。タオルを背中に触れさせ拭こうとした時俺はある事を感じた。
ティルシアの背中が冷たいのだ。それもただ雪を触っていたとかのレベルの話ではなく、タオル越しでも分かってしまうくらい異常に。
「おい……お前は自分の身体がおかしくなってるって自覚はあるのか?」
「え? 何のことですか?」
これはヤバい。死の直前に体の全神経の働きが鈍くなるのと同じようにコイツも似た状況になっているのかもしれない。
「やっぱお前風呂に入れ。沸くまでは体を冷やさないようにしてろ」
「そんなに私のお風呂シーンが見たいんですか? 仕方ない人ですねー」
「冗談を言っている場合じゃないんだ! 自分の事も分からなくなるくらい重症なんだぞ!」
はっ、つい怒鳴ってしまった。急な大声に驚いたのかティルシアは戸惑っている。
「ごめんなさい……そんなつもりは無かったんです」
「いや俺も急に怒鳴って悪かった。すまん。……じゃあ俺は風呂を沸かして来るから待っててくれ」
気まずい空気に耐えられず、俺はその場から逃げるように風呂場に向かった。
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「うーん、感情のコントロールができないなんて俺もまだまだ未熟だな」
そんなことをポツリと呟きながら準備をする。よくよく考えてみればティルシアも場を明るくしようとしてくれてたのかもな。それなのに俺は怒鳴って……最低だ。
「あ、そういえば着替えはどうすりゃ良いんだ? 替えは持ってるのかな」
無かったら最悪俺のを貸せば良いし何とかなるだろう。
準備を終え、部屋に戻ると早速その事を聞いてみた。
「一着は替えがあります。ですがそれは夏用なので寒いのです。だから冬用の服を貸してください」
夏用と冬用で分けてるのか。で、いつもは魔法で汚れを飛ばして着続けると。かなり経済的だな。
風呂に入ってる間にでも出来るだけサイズの合いそうな物を探しておこう。