第二十三話「朝」
「朝ご飯出来ましたよー」
俺が洗面所に行き顔を洗っている内に朝飯が出来上がったようだ。
「じゃあ、いただきます」
「どうぞ。と言っても昨日の残り物ですけど」
今日の朝食は、昨日の夕食で食べきれなかった分を温めて食べるので昨日の夕食と同じだ。腹が減っているので次々と口に運んでいく。
「それにしても昨日は激しかったですね」
「ぶっ! ゲホッゴホッ! お前な、急に何を言い出すんだよ!」
唐突なティルシアの爆弾発言に思わずむせてしまう。これは卑怯だ。
「何って、昨日の事ですけど?」
仕返しのつもりか、昨日の俺の口調で言ってくる。
「その手には乗らんぞ。で、大丈夫なのか?」
冷静に返し、話のペースを取り戻す。
「まだちょっと腰が痛いですね。どこかの誰かさんが激しくするせいで」
「分かった、次からは優しくするよ」
「そういう事を言ってる訳じゃないんですけどねぇ……」
その後もティルシアの爆弾発言をのらりくらりと躱し、朝飯を食べ続けた。
全てを食べ終え、片付けが終わったところでティルシアが話し掛けて来た。
「あの、二つ聞いても良いですか」
「なんだ?」
「一つ目は、あなたとラックさんのどっちで呼べば良いんでしょうかって事です。二つ目は、私達が付き合ってる事を隠すかどうかって事です」
「そうだな。俺は『あなた』って呼ばれるとなんかむず痒くなるんだけど、お前の好きな方で構わん。二つ目に関してだがそれもお前の好きな様にしていい。隠したければ隠せばいいし、そうでないならばそうでないで良いと思うぞ」
この答え方は相手の事を尊重するかのように見えてその実全てを相手に丸投げしているという最低な答え方だ。考えたくない場合にオススメする。ま、その分バレると地獄を見る事になるが。
「そうですかー。じゃあラックさんって呼びますよ。そっちの方が慣れてますし。あと、私達が付き合ってる事は隠しはしませんが言いふらしもしないようにします」
「オーケー。そうしよう」
特に異論はないので了承する。
「あれ? そういえば私達ってどうやって知り合ったんでしたっけ」
どうやって知り合ったかだと? うーんパッとは思い出せないな。
「確かお前がこんなにちっちゃかった時だから……あ、それは今も変わってなぐべっ!」
「ミンチにしますよ」
ティルシアのパンチが俺の腹を貫いた。いや、実際にはそんな規制が掛かるような事態にはなっていないがそうなったと錯覚するほどの威力だった。
ティルシアは目に見えるほどのドス黒いオーラを背中から出し、第二撃の準備をしながら言う。笑顔なのがまた怖い。
「分かった、分かったからその構えを止めてくれ。真剣に思い出すから!」
床に額を擦り付けながら言うと、ティルシアは構えを解いた。あんなもん二発も食らったらそれこそ擬似的な死を味わうことになっちまう。
「えーと三年前の雪が降ってた日の事で──」