第二十一話「風呂上がり」
風呂から出ると、ティルシアが夕飯を前に座っていた。水着では無かったので、着替えたようだ。
「あ、出てきたんですか。ちょうど今出来上がったところです、食べましょう」
俺に気付いたティルシアは手招きをし、俺を座らせる。
「じゃじゃーん、今日は少し奮発してみました。偶には贅沢しても良いでしょう?」
「ああ、確かに美味そうだな。いたたきます」
「召し上がれ」
今日のメニューはいつものハク米とソミ汁に加え、ベリーボアのステーキやガジャ・イモなどの旬の野菜がふんだんに使われたサラダだ。
ティルシアがステーキを是非食べてみてくださいと言うので最初に食べたところ、たっぷりの肉汁や肉厚で噛み応えがあり飲み込むのが勿体無い位美味かった。
「美味い! ティルシア、ありがとうな」
俺が心からの礼を述べると少し照れくさそうに、
「そんなに喜んでもらえるとこっちも作った甲斐がありますね。このサラダはどうですか?」
俺は差し出されたサラダを食べてみる。旬の野菜が使われたサラダは、非常に新鮮でシャキシャキしていた。サラダにはティルシア特製ドレッシングもかけられているので美味しさは倍増だ。
「これも美味いな。ところでこのドレッシングはどうやって作ってるんだ?」
「それはちょっと教えられませんね。これは一族に伝わる魔法のドレッシングなので」
「そりゃ残念。気が向いた時にでもまた作ってくれよな」
俺達は楽しく会話をしながら食べていく。
食後。ティルシアを風呂に入らせその間に皿を洗ったのだが、なんだか体が熱い。それも外からの熱気とかではなく内側から沸き上がるような熱さだ。
ティルシアには悪いが先に寝させてもらおうと思い、寝室へと歩き出した。
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熱を下げようと数十分ほどボーッとしてみたり、窓を全開にして外の空気を吸ってみたりしたのだが一向に熱は下がらない。これ以上は無駄だと考え、諦めて寝ることにした。
布団に入り、寝ようと目を瞑った時寝室の扉が開いた。ティルシアは風呂上がりのせいか少し顔が赤い。
ティルシアは俺に近寄ると顔を近付けこう言った。
「ラックさん、顔が真っ赤ですけど熱いですか?」
「ああ、そういうお前も顔赤いぞ」
「これはお風呂上がりだからであって別に緊張してる訳じゃないんですからね!」
ティルシアが意味不明な弁解を始める。緊張する要素なんかあっただろうか?
「とりあえずもう寝ようぜ。電気を消してくれ」
一人で訳の分からない弁解を続けているティルシアに声を掛ける。その言葉で自分を取り戻したのか『ハッ! 私は一体何を……』と言い弁解を止めた。
電気を消し、ベッドに潜り込んだ後ティルシアは蚊のような声で、
「……ラックさん、そっち行って良いですか?」
「構わんぞ。何だ、怖くなったのか?」
俺の布団に入り、抱きついて来たティルシアを少しからかってやる。するとティルシアは一度深呼吸をし、自分の中で何かを決意した。
「ラックさん聞いてください、大事な話です。私はあなたのことが好きです。……ラックさんは私の事をどう思っていますか? 正直に答えてください」
「っ!?」
ティルシアの質問に息が止まりそうになる。俺は数秒考えてから返答をした。
「俺は、俺は────」