第二話「ボアの間引き・前編」
俺たちはギルドから一時間ほど歩き、目的地へと辿り着いた。道中、馬車を使おうと提案したらお金が勿体ないとのことで棄却されたのは秘密だ。
「やっと着いたな」
「そうですね。じゃあちゃちゃっと片付けちゃいましょうか」
そう言うとティルシアは木造の民家へと走って行き、呼び鈴を鳴らした。
「ごめんくださーい」
「はいはーい今行きますよー」
そう言いながら四十代と見られる男性が出てきた。
「えっと、どちら様ですか?」
「あ、私達ギルドで依頼を見て来た者です。私はティルシア、あっちの男はラックと申します」
「ああ、私は依頼主のノスタです。今日はよろしくお願いします。では日没までに十匹ほど狩ってくれるかな」
「了解いたしました」
俺の入る間もなくトントン拍子に話が進む。一応俺も一緒のクエストを受けてる仲間なんだから挨拶させてくれたって良いだろ……。
そんな事を一人ごちているとティルシアが話し掛けて来た。
「とまあ聞いての通りです。十匹程度なら二時間もあれば終わるでしょう」
「りょーかい。お前も頑張ってくれよな」
「前向きな方向に検討できるよう善処します」
あ、これ絶対にやらない奴だ。
「冗談です。主に火魔法で殲滅しますから巻き込まれないように注意して下さいね」
「さらりと鬼畜発言!? ていうかお前が気を付けろよ!」
「嫌ですよ。なんでそんな事に気を配らなきゃいけないんですか」
「前から薄々感じてたけどやっぱりこの子ドSだー!」
「はいはい。無駄話もこの辺にしてさっさと狩りに行きますよ」
あれ? この話を始めたのはあなた様じゃありませんでしたっけ?
ーーーー
黙々とボアを狩り続けあと二匹で目標に達するというところでティルシアから呼びかけて来た。
「ラックさーんボアがそっち行きましたよー」
「は? って危ねえええええええ! おま、そういう事は早く言えよ! 運良く回避出来たから良かったものの!」
「チッ」
「おいコラ今チッて言ったよな。まさか俺を亡き者にしようとか考えてねえだろうな」
「いえいえ全然そんなことはアリマセンヨー」
とティルシアが棒読みで笑顔を浮かべながら言う。ティルシアの背後に禍々しい黒いオーラが見えるのは気のせいだろうか。
「ウソつけこのぶっ!?」
俺がティルシアに文句を言おうとした途中、俺の方向へ突進してきたボアに跳ね飛ばされた。
「あーあ、戦闘中におしゃべりなんかしてるから……仕方ないですね、ダメダメなラックさんの代わりにこの可愛らしいティルシアちゃんが華麗にやっといてあげますから感謝してくださいよ?」
「そもそも原因を作ったのはお前だろ……うが……」
薄れゆく意識と閉じる視界の中で見えたのはロリっ子魔法使いが猪二匹を蹂躙する景色だった。




