第十七話「限定メニュー」
しばらく談笑していた俺達の前に運ばれてきた料理らは、メニュー表の通りのボリュームだった。
「おっ、美味そうだな。いただきます」
フォークとナイフを使い、バターとたっぷりのメープルシロップが乗った熱々のホットケーキを切り分ける。程よい固さで、それだけでも美味い事が分かる。
一切れ食べると、とても甘く弾力があって飲み込むのが勿体無いくらいだった。
ティルシアはハムサンドイッチとチョコレートパフェとミックスジュースを、ユピーさんはフルーツサンドイッチと紅茶を注文していた。
「美味しいわね。ティルシアちゃんはどうやってこんな店を見付けて来るの? 今度教えて頂戴」
「ええ、構いませんよ。って言っても基本は食べ歩きですけどね」
二人は食べながらガールズトークに花を咲かせている。仲が良いのは良いことだ。
メニュー表を見て何かに気が付いたユピーさんはティルシアに耳打ちをしてから、用事を忘れていたと言い残して帰っていった。ニヤニヤしながら帰っていったので、何か企んでいることは間違いない。
すると数分後、食べ終えたティルシアは俺をじっと見て何かを決心したように話し掛けてきた。
「ラックさん。私、これが食べたいんで協力してください」
そう言ったティルシアから差し出されたメニュー表に書かれていたのは、
「カップル限定メニュー?」
「ええ、そうです。このメニューはカップルで、とある試練をクリアするとプレゼントされるメニューなんです」
メニュー表には、どんな試練かは書かれていない。
「私も何をするのかは知りませんが、そう時間をとるものでは無いそうです」
「うーん、それならやっても良いぞ」
俺の返答を聞くやティルシアはベルを鳴らし、店員を呼んだ。ティルシアが店員にメニューを注文すると、
「わかりました。では準備をしますのでお待ちください」
と言われ、ティルシアは緊張していた。そんなに緊張するような試練なのか?
二分程で店員は戻ってきた。タイマーとカメラを持って。……なんか試練が予想出来た気がする。
「それでは試練の内容をご説明させていただきます。まずお二人のどちらかにクジを引いて貰います。そこに書かれていた秒数分だけキスをしてもらいます。もう良いかなと思ったら止めてもらって結構です。ただし、キスの時間はこのタイマーで計測しておりますので、もし書かれていた秒数に満たなかった場合はやり直しとなります。それではクジをどうぞ」
うん、予想はしてた。大体予想通り。だから全然動揺なんかしてない。
ティルシアの方を見ると顔が真っ赤になっていた。
「……ラックさんが引いてください」
「あ、ああ」
俺は店員が差し出した箱に手を突っ込み、折りたたまれた紙を一つ選ぶ。箱から出し、机の上で広げる。
そこに書かれていた数はーー。