第十六話「究極の選択」
ユピーさんに昼飯を奢ってティルシアを探すのを助けて貰うか、一人で探して一度の失敗でアウトの莫大なリスクを背負うか、究極の選択を迫られた俺。結局俺は昼飯を奢る代わりにユピーさんに助けて貰う事を選択した。
後者を選択し、失敗した場合に比べたらマシだと自分に言い聞かせ、歩き出す。
別に財布が軽くなる事が確定して泣いてる訳じゃない。ただちょっと、腹への風が冷たいだけだ。
結局、ティルシアが見つかったのは迷路のようになっている店内の奥。ティルシアは背が小さく、見渡しても見つけられないので苦労した。
水着を買い、外に出ると少しお昼にするには早い時間だった。
「やっと出られましたー。ん、もうこんな時間ですか。じゃあ行きましょう」
「あーそれなんだが、お前を見付ける為にユピーさんに手伝って貰ったから奢っても良いよな?」
「それは一緒に食べるってことですよね。まあ、私が迷子になったのも原因ですし、良いですよ。ただしラックさんのお小遣いから出してくださいね」
少し不機嫌そうにティルシアが言う。何か二人で話したいことでもあったんだろうか。
「ああ、分かってる。じゃ、早速案内してくれ」
話題を変えないと間が持たないので強引に変える。
店まで歩いて行く途中、女性二人は仲良く喋っていて俺は蚊帳の外に居た。
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歩くこと三十分。俺達は『コーヒーハウス・ジェランダ』という店の前に居た。石造りであまり大きくはなく、それでいてシックな感じのする外観だ。さっきみたいに女性限定感マックスな所じゃなかったことに本気で感謝。
ティルシアに先導され、店に入るとカランコロンと俺達を歓迎するような音が鳴る。中は外観と同じく、派手ではなくテーブルの数も少なかった。
「いらっしゃいませー。あちらの席にお座りください。ご注文がお決まりでしたらベルを鳴らして呼びつけください」
男性店員に誘導された席は丸いテーブルと四つの椅子が設置された所だ。
ティルシアとユピーさんが並ぶように座り、俺はティルシアの向かい側に座った。
「とりあえず何か注文しようぜ。ユピーさんも遠慮なくどうぞ」
「ええ、存分に好意に甘えさせてもらうわ」
ちょっとは遠慮してくれても良いんですよー、と心の中で呟く。
「私、決まりました」
「早いな」
もうメニューを決めたティルシアからメニュー表を受け取り、メニューに目を通す。
メニューは値段設定も手頃で、色々と揃っていた。俺はその中のホットケーキセットを選んだ。
「ん、決まったぞ」
「私も決まったわ。店員さんを呼ぶわね」
そう言ってユピーさんは備え付けのベルを鳴らし、店員を呼ぶ。さっきの男性店員が来た。
俺達の注文に、店員は慣れた手つきでメモを取っていく。
「ーー以上でよろしいですね? それではしばらくお待ちください」
メニューの確認を済ませた店員は、厨房へと戻っていった。




