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運と仲間でファンタジー  作者: 旧正 睦月
終章「世界」
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第百話「終焉」

「ふーん、そういう態度を取るんだ。なら良いよ、こっちも本気でやってやるよ。チマチマやるのも飽きてきたとこだし」

 バルペウスは地に降り立ち、冷たい声で言った。

 バルペウスの纏う雰囲気が変わった。今まではどこか闘いを楽しむような感じだったが、今は違う。鋭く刺すような冷たい雰囲気だ。

『お主、なぜ挑発したのじゃ! 少しずつ追い詰めて行けば良かったものを!』

「あのまま防戦一方を続けてたら追い詰める前に多分俺の精神力が尽きる。そもそも無限にあるバルペウスの攻撃を避け続けるなんて不可能だしな。だからせめて勝算のある内に決着をつけたかったんだよ」

 俺が神様に自分の考えを伝えると、少し悩んでから神様は言った。

『……お主はワシの予想を超える速さで成長しとる。さっきの槍を弾いたのが良い例じゃ。じゃから、感じるままにやるがええ。ワシの言う事を聞いとっても勝てるとは限らんからな』

「ありがとよ。じゃ、行くぞ!」

 棒立ちのバルペウスへ向け、神器を構えて走り出す。が、それより速くバルペウスが俺の顔を殴りつける。

「がっ……!?」

 殴られた場所から周辺に痛みと熱が広がる。だがそんな事で俺は倒れない。

 気合を入れてもう一度バルペウスの元へ駆け出す。

「おらああああああああ!」

「…………」

 熱くなっている俺とは対照的に冷静なバルペウスは短くため息をつくと、俺の腹を殴り、吹き飛ばした。それも一撃ではなく連打で。

「ごばっ! ぐべっ!  ぐぼ!」

「だから言ったじゃん。本気でやるって。もう手加減なんかしないよ」

 地面に突っ伏す俺に吐き棄てるようにバルペウスは言う。そして足で頭や背中を踏みつける。

「ほらほら、抵抗しないと。死んじゃうよ?」

「…………」

 今はただ何もしない。何もせず耐える。

「……はあ、もう終わりか」

 一通りやって気が済んだのか、バルペウスは踵を返して歩き出した。今がチャンスだ!

「……おい」

「なっ……!?」

 振り返る間も与えずバルペウスに神器を渾身の力で振り下ろす。これで決着を付ける。

「油断したのが運の尽きだ。後悔しやがれ!」

「うわああああ! し、死にたくないよ!」

「もう遅い!」

 慌ててバルペウスが防御しようとするが、そんなものは関係ないと神器で頭を叩っ斬る。……しかし、神器が最後まで振り下ろされる事はなかった。

「な、なんで……!?」

「あーあー。やっぱり無理だったか。どっかに僕を傷付けられるようなのは無いかな?」

 神器はバルペウスの頭に当たって停止している。当たっているが、いくら力を込めても神器が動く事はない。

「でもさっきの僕の演技完璧だったでしょ? 驚いた表情で『なっ……!?』だよ? その後のも良く出来てたよね」

 バルペウスはさっきまでとは別人のように悪戯が成功した子供のような笑顔で言う。

「ま、まだ終わってねえぞ!」

「あれ、まだ君居たの? もう帰って良いよ」

 バルペウスは神器を片手で掴むとその辺の木に向けて放り投げた。

「あー楽しい茶番だった。さあ、世界と一緒に死のうかな」

「待て! 待ってくれ! もう一回だけチャンスをくれ!」

「仕方ないなあ。ほら、僕は何もしないから攻撃してみてよ。それでかすり傷でも負わせられたら世界を壊すのはやめてあげる」

 バルペウスは呆れたように言うと、身体の力を抜いて地面に寝そべる。

 俺が気を静め、力を込めて神器を握ると神器はボロボロに崩れた。

「っ!?」

「あ、言い忘れてたけど今この世界に残ってるのは君一人だよ。ほらあのカプセルの中には誰も居ない」

 バルペウスが指差す先を見ると、確かにカプセルの中は空でティルシアもシルヴィさんも居なかった。

「おい! ティルシア達をどこにやった! 教えろ!」

「だから言ってる通り、消えたよ。死んだとかじゃなくて消えたの」

「そんな、嘘だろ!? どっかに隠しただけなんだろ? そうと言えよ!」

 小さな希望に縋り付く。

「なんで僕が嘘をつかなきゃいけないのさ。この世の生物は君以外全員消したよ」

「う、うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 目の前の事象に耐え切れず、絶叫する。究極の絶望を超えた後に待っているのは更に深い絶望だった。

「じゃあそういう事だから。バイバーイ」

「あああああああああああああ!!!!!!!!」

 何も考えられない頭でバルペウスが世界崩壊の魔法陣を発動させるのをただただ見ているだけだった。

 次の瞬間、火でも水でも土でもひかりでも闇でもなければ赤でも青でも緑でも黄色でも紫でもない、無。

 無が世界の至る所から噴き出す。そして無が世界を染めるまでさして時間はかからなかった。いや、時間さえも無に染まったのか。

 足も手も声も身体も何もかもが無に染められていき、最後には意識が──


















────

「やあ『×××××』。今回は上手く演じれたんじゃない?」

「そうじゃの。特にあのラックとかいう奴はワシを完全に信じ切っておったわい。あれは傑作じゃったな」

「だよね。僕があいつだけを残して他の奴を消したら発狂しちゃってさ、うるさい事うるさい事」

「本当か? 見てみたかったわい。そうじゃ、次は立場を変えてやってみんか? ワシが悪の親玉で、お主はそれを倒す側じゃ」

「良いね、やってみようか。それじゃあまた新しく設定を考えよう。まずは──」

「いや、そこは──じゃろ」

「これは──だから──」

「なるほど、それなら──も良いんじゃないか?」

「て事は──だね。ふう、こんな所かな」

「じゃあワシが作っておくわい。お主は休んでおれ」

「お、ありがとー。お言葉に甘えて休ませてもらうよ」

「よーし次が楽しみじゃな──」


fin

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