第十話「ベリーボア」
「そうですねえ……じゃあーー」
俺は後に続く言葉を予想し、身構える。二万ガル以上のクエスト? それとも森の奥でキノコ採取か? 一人で大型の魔物の討伐をしてこいなんて言うんじゃねえだろうな?
「じゃあ、このクエストを私達三人でやりましょう」
「へ?」
ティルシアがクエスト用紙を持ちながら後に続けた言葉は予想外の物だった。
「俺は構わないが……。マルス、どうだ?」
何か用事があるならばそっちを優先させてやりたいので、尋ねてみる。
「俺も今は暇だし良いが、ちゃんと金は貰うぞ」
なら良かった。流石に嫌がってるのに強制するのはあんまり良いことじゃないからな。
「ええ、もちろんです。では報酬の半分でどうですか?」
ティルシアの発言に腰を抜かしそうになったが、冷静に考えればそれで妥当かもしれない。俺とティルシアは二人で一人分みたいな物だからだ。
「いやいや、それは貰いすぎだろ、三分の一で良いよ」
「良いんですよ。こっちから誘っているんですし、そのくらいしても罰は当たらないでしょう?」
「そういう事なら貰っておくよ」
なんだか今日のティルシアは優しいな。怒ったのに暴力を振るわないし、許す条件は甘いし……良い事だ。
「それでどんなクエストなんだ? その紙を見せてくれ」
そう言って俺はティルシアからクエスト用紙を受け取る。なになに……報酬は八〇〇〇ガル、内容はベリーボアの討伐? 依頼人は前のノスタさんか。
ちなみにベリーボアと言うのは前に間引いたボアのボス的な存在で、各群れに一匹ずついる。体格は個体差もあるが、通常のボアの四〜五倍だ。大体通常のボアは〇・八メートルから一メートルなので大きい個体だと五メートルにもなる。
一人で討伐出来るようになれば、一人前の冒険者とも言われている。所謂登竜門ってやつだ。
「二人とも、どうですか? 嫌じゃなければこのままやろうと思っているんですが……」
「「異議なし」」
俺とマルスが合わせて言う。
それを聞いてホッとした表情で、
「じゃあ出しに行ってきますから先に外で待っててください」
とスキップしていった。
外で駄弁りながら待っていると昨日と同じように現れた。
「お待たせしましたー。じゃ、行きましょうか」
ティルシアは何が嬉しいのかステップを踏みながら歩いて行った。
今日は何も起きない事を祈りつつ、後を追いかける。
遂に二桁到達です。
これからの道のりは長い……