第一話「久々のギルド」
俺が目を覚ますと窓からは光が差し込み、小鳥がチチチとさえずっていた。
「ラックさーんそろそろ起きてくださーい朝ですよー」
俺の耳に鈴のような可愛らしい声が聞こえてくる。この声は……ティルシアか。声の主は今日もショートカットの茶髪と平たい胸と小さな身長がチャームだな。
「うーん……あと五時間だけ寝かせて……」
「どんだけ寝る気ですかっ!? ……まあ冗談はこの位にしておいて本当に起きてください。今日こそクエストを受けに行かせますからね」
そんな事言われても眠いのだから仕方ない。
「えー……働くの面倒くさいから嫌なん「ちなみに貯金はもう無いですよ」さーって今日も元気に働くかー!」
労働って素晴らしいよね!
ーーーー
街の大広場からほど近い場所にある一見居酒屋のようなギルドに意気揚々と乗り込んだ俺だった……んだが。
「……なあ、帰っちゃ駄目か?」
「駄目に決まってるじゃないですか。ついさっきまでうるさい位だったのになんでいきなり萎えてるんです?」
何故かって? そりゃあーー
「面倒くさいクエストしか残ってねえんだよおおおおおおお!! どれを見てもやれ森奥のキノコを採ってこいだのやれ山のキノコを採ってこいだのばっかじゃねえか! もうそんなにキノコが好きなら自分で採りに行けばいいだろお!?」
「黙ってください。他の人達に迷惑ですよ。それに私の忠告も聞かずダラダラしてたのはあなたでしょう? 自業自得って奴です」
ぐっ……こいつめ正論を言いやがって……! しかしそんなんで俺の怒りが収まると思ったら大間違いだ!
「で? 結局どんなクエストだったらやるんですか? 探してきてあげますから言ってください」
「面倒臭くなくて簡単な奴。あと出来れば近場が良い」
「はぁ……ま、一応探しては来ますからその辺のテーブルにでも座って待っててください」
そう言うとティルシアはトテテテと行ってしまった。あいつも中々良いところが有るじゃないか。ほんの少しだけど見直したぞ。
そんな事を考えながら待っていると一人の男が話し掛けて来た。
「ようラック。随分と久しぶりだな。ここ最近来ねえからてっきり死んだと思ってたぜ」
「なんだマルスか。久しぶり。あと勝手に人を殺すな」
話し掛けて来たのは一八〇センチは優に越すであろう大男だ。俺が身長一七〇センチなので十センチ以上も高い。その身長と比例するかのように性格も豪快で、ワイルドって言葉がピッタリな奴なんだが……そのせいかこいつの浮いた話を聞いた事が無い。そこまで酷い顔はしてないんだけどな。スキンヘッドなのが関係しているのか……?ちなみに俺はフサフサだ。
俺たちが駄弁っているとクエストを探しに行っていたティルシアが帰ってきた。
「ラックさーんありましたよー。ボアの間引きのクエストです。報酬は四五〇〇ガルですって。やりますか?」
「ありがとうティルシア。場所は?」
「場所はこの街の北はずれにある民家周辺だそうです。ここから大体八キロぐらいですね」
八キロ程度なら許容範囲。前に片道二日掛かったことが有ったからな……アレに比べたらまだマシな方だ。
「よしじゃあこのクエストを受けよう。ティルシア、頼んだ」
「はーい」
ティルシアが責任者欄に名前を書き込んでいく。書き終えるとティルシアは受付の方へ走って行った。
「じゃ、そういうことだからまたなマルス」
「おう! しっかり稼いで来やがれ」
そう言い残して俺はギルドの外に出る。少し待つと中からティルシアが出てきた。
「それじゃあ行きましょうか」
「おう」
こうして俺たちは街はずれの民家へと向かった。
人物描写をほんの少し足しました。