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蚊の鳴くような声で。  作者: N.G
2/5

彼女と私。

 蚊の鳴くような声で、女の子が震えている。

 心療内科の待合室は薄暗く、彼女の表情は窺えない。

 「大丈夫だよ。心が風邪をひいただけだから。」

 母親と思われる女性が彼女を抱きしめながら優しく声をかけていた。

 何故か私は後ろめたい気持ちになった。何故私はここにいるのだろう。

 医者に匙を投げられたと思った。症状を説明したところ程なく別の病院を紹介されたのだ。

 あぁ私は病院をたらい回しにされて、脳だか心臓だかの病気で死ぬのだなぁと思っていた。

 心療内科とはいえ内科は内科であった。血液検査などの健康診断、からの申し訳程度のカウンセリング。正直、治療の成果は感じられなかった。

 その後、医者は私の母親を呼び出し何か話したらしい。彼女は涙を流していたが、その表情は晴れやかであった。

 むしろ私よりも彼女のほうが救われたようであった。

 結局、私は心療内科に3回しか通院しなかった。

 近所を散歩するようになり、症状は薄れていった。

 「自力で治した」、そう思いたいが、いまだに事ある毎に心が不安定に陥る。

 心療内科医にさえ心を開けない人間に、誰が心を開いてくれるのか。

 飛蚊症の事も、誰にも話せなかった。

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