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EveningSunlight  作者: 蒼原悠
第五章 ──また明日って言いたくて──
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Episode10 超高速!迷子解決





 ものすごい急転直下の展開になった。

 明穂は覚えていたんだ。いつか私がお財布をなくして駆け込んだ宇田川町交番で、私たちの隣で迷子の相談をしていた人のことを。

「確か“りゅうき”って名前だった気がする。あれから一時間近くだから、時間経過も合ってる」

「電話してみよう!」

 すぐさま私が、さっきの交番に電話をかけた。そちらで迷子になっている子はいませんか、それっぽい子がいるんですけど──。そう伝えると、宇田川町交番のお巡りさんはすぐに周辺の交番に確認を取ってくれた。

『うちではないんですが、いま駅東口の宮益坂交番にお母様がいらしているらしい。連れて行ってもらえますか』

 どこ、宮益坂(それ)……。途方に暮れかけたのも束の間、明穂が「分かるよ」って言ってくれた。『NI∀DS』宮益坂店の広告に載っていた地図を見ていて、交番の場所を見つけていたんだって!

 さすがは明穂の記憶力!

 さっそく龍生くんを引き連れて南に向かった。超高層ビルの立ち並ぶ渋谷の駅前は、お仕事帰りのスーツやジャケット姿の人で溢れていて、私も、明穂も、はぐれないようにしっかり手を繋いで走った。

 きらびやかに(またた)く大きなネオンサインや街頭ビジョンが、急ぐ私たちを見下ろしている。

 (ここ)には陽の光は届かない。その代わり、人の作ったたくさんの光が、目が、私たちをいつでも見守っていてくれている。頑張れ、あと少しだよって応援してくれている。──そんな風に感じた時、「あれだね」って明穂が前方を指差した。

 大きなシアターのあるタワー『渋谷ヒカリア』。そのすぐ脇を掠めていく地下鉄銀座線の高架の隣に、交番のマークと赤いランプが見えた。交番だ!


 私たちの判断は大正解だった。交番の中で悄然として座っていた女の人に、龍生くんは飛び付いたんだ。

「ママ!」

「龍生!?」

 龍生くんの笑顔は一秒ももたなかった。お母さん、大泣きだったなぁ……。感動の再会シーンを見つめるお巡りさんや私たちも、半泣きに近かったような気がする。違う、それ私だけだ。明穂は気が抜けたみたいに、柔和な笑みをずっと浮かべていたっけ。

 円山(まるやま)真弓(まゆみ)と名乗ったお母さんは、何度も何度もお礼を言っては頭を下げた。

「本当に、何と感謝すればよいか……。どうかきちんとお礼をさせてください。私ひとりじゃ、絶対にうちの子を探し出せませんでした……」

 いくら私と明穂で押し止めても、お財布からお札を引っ張り出そうとする。せめて連絡先を教えてくださいって言われて、交換した。

 別れ際の龍生くんが笑ってくれただけで、報酬なんて十分に足りてるのに。

 あ、それで思い出した。私のお財布、どっかに行方をくらませてるんだった……。


 交番を出ると、不意に吹き付けたビル風が髪をさらって流れていく。うわ、って二人して髪を押さえながら、上を見た。あっちこっち行き過ぎて、もう、どこがどこやら……。

 えっと、目の前のこれが渋谷駅でいいんだよね。ひときわ高いビルがその上に立っている。

「『渋谷スクランブルシティ』」

 明穂が、言った。そうそう、そんな名前だった。確か最上階の屋外展望台が有名なんだよね。

 頂上の方がオレンジ色に輝いて、眩しいや。

 渋谷に来て二時間くらい。もうそろそろ、かな──。私は頂上に指を向けた。

「ね。あれ、上っていかない?」







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