▽壱
とりあえず一話、上げてみた。
ここは東京郊外松平市、そして重光先生の御膝元にある笑顔溢れる【希望が丘駅前商店街】。
この商店街に関わったり、ここで暮らしている人達は毎日元気で前向きに過ごし、個性が光り輝いてる。
そんな素敵で魅力たっぷりな商店街のメインストリートを少し外れた箇所に、当民宿【ゆめくら】はございます。
いらっしゃいませ、こんにちは。
当宿【ゆめくら】は365日、24時間、基本年中無休、休まず営業致しております。
ですが、実際の所は年の半分は開店休業状態です。
...ぐすんっ、悲しくなんてありませんよ。
そんな日は普段手入れが行き届かない部屋を綺麗にしたり、布団を干したりするのです。
それに帳簿や仕入れもしなきゃなりませんしね。
あ、あとはご近所付き合いも欠かせません。
「zzz...」
ころころろ、と、一人の女性の手から離れ転がっていく毛筆のペン。
そのペンの持ち主はと視線を彷徨わせれば。
ぱらぱらとノートのページが風に吹かれ捲れていく傍らで、暖かな日差しの誘惑にかられ寝落ちている人物が一人。
もう二十歳を過ぎているというその人物のその幼い寝顔を見て、微笑む男が一人。
「いやぁ~、今日も壱芦はデラ甘だなぁ、笑える」
そしてその様子をひっそりと覗き見て唇をにんまりと歪ませる従業員が一人。
とりあえず、今日も【ゆめくら】は通常営業中です。