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ゆめ日和~希望が丘駅前商店街~  作者: 天咲 あゆる
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・急襲!!雁屋さん

 東京郊外は松平市にある、自然と人が集う【希望が丘駅前商店街】に小さななんちゃって民宿を構えて数日。

 私は今日も元気に働いてます。

 元気に働いてはいるんですよ?

 本当ですよ?


 でもですね? 

 働いてはいても利用して下さるお客さんがいるかどうかは別問題ですので、私は副業として学生時代から続けている通信教育の採点をして何とか日銭を稼いだりして日々を過ごしていたりします。

 あとはそうです、和裁関係の内職とかを少々。


 まさかこんな所で高校・専門短期大学時代の身に着けた技術が役に立つとは思い当りませんでした。

 人生って何が役に立つか判らないモノですね♪


「っと、今日は面接が入ってるんでしたね。えーーっと、確か今日くる人は、っと」


「おはようございます、こちらが【ゆめくら】さんで宜しかったでしょうか」


 繕いものをしていた住居部分の和室のすぐ傍にある横開き玄関がガラガラと開け放たれ、聞こえてきた声に、ドクンっと、胸の鼓動が高鳴ってしまいました。


 いいえ、そんなわけないですよね?

 まさかですよね?

 だって彼は将来有望視されていたお義兄さんの親友で、古くから続く良いお家柄の一人息子さんです。

 ここに来るわけがないですし、何より私の行方を知るわけがありません。


 そんな私の希望的予測を裏切るかのように、面接希望に見えられた方は・・・。


「あれっ?偶然だねえ、奇遇だねぇ、いやはや運命だねぇ、由芽唯ゆめいチャン?元気にしてた?」


 ――まあ、見る限りは元気そうだったけど。


 と、得体の知れない、妙ににっこりと爽やかに浮かべられた彼の、雁屋さんの笑顔が、私は怖くて仕方がありません。

 

 雁屋さんはお義兄さんの片腕で、親友で。

 そして誰よりも悪知恵が働く優秀な人で、そこを買われてお義兄さんに認められてヒトで。



 玄関先にゆったりと腰を掛けた、肩先まである綺麗に栗色に染めた、男性にしては少し長い髪を持つ人は、彼の急な出現に戸惑う私をよそに、あたかも自分が雇われるのが当然の如く満面の笑みを私より美しいその顔に浮かばせたのでした。


「――よろしくね?ゆめちゃん?」


 この時、混乱していた私は知りませんでしたが、後日改めてその時の事を語って下さった雁屋さんは。





 まさか、まさかのまさかだよね。

 あの壱芦がまさか執着の上、溺愛するなんて。

 しかも相手は妹ちゃんときたもんだ。

 仮にも俺の婚約者候補だった子よ?

 って、殴るなよ、この横暴くそ旦那が!!


 と、当時の心情を語って下さったのです。

 でもそれは今より少し未来のこと。

 

 こうして5月の下旬、私の小さなお城に、新たな従業員さん改め、雁屋さんが加わることとなったのでした。


 

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