【第一章 始まり】4話 追いかけてくる恐怖
9月20日
また、一人来ないやつが増えた。
大崎の二つ後ろの空席。
これでもう8人も教室にいない
こんなことは初めてだった。
咲が真剣な顔つきで教室に入ってきた。
「みんな、ちょっと聞いてほしいことがあるの」
自分の席に鞄を置き、
教卓へと咲は移動した。
「最近、休んでいる人が増えた気がしない?」
この前の帰り道に言っていた事だ。
みんな少なからず気にかけていたようで
咲の話に目を丸くしていた。
「それで、みんなが休み始めたのは
青田君の事件の時からだと思うの」
咲は教室を見渡した。
「俺もそう思ってたんだ」
「私も」
「僕も」
教室に居た皆が次々と言い出した。
「俺、気付いたんだけどよぉ
出席番号順に休んでねぇか?」
俺の前の席、出席番号10番岸間 正也がそう言いだした。
「でもさ、大崎がいるんだから
それはおかしいんじゃない?」
女子が否定。
大崎はキョトンとしていた。
「けどよぉ~、歌咲が休んでるからよぉ」
歌咲は大崎の後ろの席の女子の事だ。
「じゃあさ、それがほんとだったら
次休むのあんたじゃん」
否定した女子が心配そうに言った。
俺も少し心配していた。
「岸間、大丈夫なのか?」
気づけばそう口に出していた。
すると
「大丈夫だよ和也。何が起こってるのか
この目で確かめてやるさ」
岸間は力こぶを見せ
ただただ笑っていた。
俺もなんだかちょっと安心できた。
次の日 (9月21日)
岸間の事がどうしても心配で
少し早く家を出た。
学校に着いた時、岸間はいなかった
しかしまだ登校時間はある。
来るかもしれない。いや、来てほしかった。
8時20分。
1時間目が始まるチャイムが鳴る。
いつも通りのチャイム音
でも、俺には何かを予兆するような
言葉では表せない音に聞こえた。
「岸間・・・」
俺は肩を落としてそう言った。
1時間目が終わるチャイム
2時間目が始まるチャイム
・・・・・・・・・
6時間目が終わるチャイム
終礼
とうとう下校の時間になった。
岸間があの笑顔を俺に見せることはなかった。
今日1日、岸間の事ばかりを考えていて忘れていた。
「次は・・・俺か?」
前列を見ても大崎以外の姿はない。
右にも誰もいない。
俺は少し身震いをした。
すると、咲と洋介が近づいてきて
「和也、心配しないで」
咲が言ってきた。
「私も洋介もついてるから」
少しだけだが安心した。
でも確実に
俺の中に何にも変える事の出来ない
恐怖が生まれた。
その日の帰り道
咲と洋介が家までついていくと言ってくれた。
でも、なぜか
「いいよ、自分の身ぐらい
自分で守れるって」
強がってそう言ってしまった。
それでもついてこようとする2人。
俺はつっぱねた。
それ以上2人はついてこなかった。
2人と別れた後
自分に何が起こるのか
ただそれだけを考えていた。
怖い・・・怖い・・・・
ただそれだけだった。
本当に出席番号順なら
今日のうちに俺に何かが起こる。
なんで素直に
「ありがとう」が言えなかったのか
自分を恨んだ。
恐ろしくて、怖かった・・・・
そんな事を思って
交差点を曲がろうとしたとき
俺は何か強い力にねじ伏せられた。
何が起こったのか解らなかった。
だが、理解するのにあまり時間はいらなかった。
布のようなものが口に当てられている!?
徐々に視界がぼやけて
ついに真っ暗になった。