【第一章 始まり】3話 空席
9月17日
今日は一段と静かだった。
岩山がいないからだ。
皆も何やら緊張が解けたような感じだった。
今日になってクラスで5人
学校を休んだ事になった。
5人とも連絡をしても通じなかったらしい。
しかし今日は前みたいな普通の1日だった。
警察の人はこなかったし
授業も普通にあった
他のクラスより授業が遅れていたせいか
先生たちの焦りが見えたような気がした。
次の日 (9月18日)
今日は一番右端の列の生徒が一人もいなかった。
こんな事はどの学校でも稀だろう
あったとしても
インフルエンザなんかがはやった時ぐらいだ。
明らかにおかしい
クラスでも何人かが今日の事を話題にして話していたのが
耳に入った。
何故だか、俺は気にしていないふりをした。
動揺しても何も変わらないと思ったからだった。
静かな帰り道で
おもむろに咲が言った
「ねぇ、何か変だと思わない?」
「何が?」
俺がそう返す。
「最近、学校に来ていない人が増えた気がしない?」
「あぁ、確かに増えたな」
そっけなく返したが、
そんな事、俺自身も気づいていた。
すると洋介が
「確かに、変だよな
今まで休んだ事がなかった
加奈子や岩山も休んでるもんな」
誰だって学校を休む事はある。
でも普段休む事がない人間が突然休んだりすると
なんだか不吉な気がする。
「みんなが、休み始めたのって
青田君の事件からだよね」
「そうだな」そう返した。
咲は続ける
「それから、また変なのが
出席番号順に一日ずつ休んでる気がするの」
それにも気づいていた。
でも認めるのが少し怖かった。
「たまたまじゃねぇの?」
そんな事を言ってしまった。
クラスメイトの欠席の話だけで
帰り道は終わった。
次の日(9月19日)
青田の自殺から数日たって
少しは・・・いや、だいぶ落ち着いてきた。
でもこのクラスでは
もっとおかしな事が起き始めているのは確かだった。
昨日、咲が言っていた事がほんとなら
今日は出席番号7番の大崎 守が休むはずだと思っていた。
教室の扉を開けるのを少しためらった。
ゆっくり、音もなく扉を開ける。
すると
大崎 守は学校に来ていた。
緊張が急にほぐれた。
やっぱり深く考えすぎだったんだ。
そう思いながら大崎の後ろの席をふと見た。
いや、見てしまった。
大崎の後ろの席には
誰の姿もなかった。