【最終章 真実の姿】14話 復讐
今私の目の前にあるのは現実なのか。
もし、もし夢なら
すぐに覚めてほしい。
「あお・・・やま・・・刑事?」
目の前にいたのは青山刑事だった。
「なんで、こんなところにいるんですか・・・」
「・・・・・」
青山刑事は黙っている。
額に汗をかきながら、しばらく声を発することはなかった。
すると
「黙ってないで、何とか言ってください!!」
小暮さんが叫んだ。
「・・・・・」
それでも青山刑事は口を開かない。
ただ、何かを考えているかのように
じっとこちらを見ている。
「青山さん!!」
その時だった。
{パンッ}
乾いた音が聞こえた。
そして、洋介が・・・
倒れた。
「洋介!?洋介!!!」
洋介の腹部から、赤い血が流れ出している。
{パンッ}
「きゃあああ!!」
小暮さんの声で、私は振り返った。
「小暮さん!!」
小暮さんが抑えている右腕から、
血が溢れていた。
「あら、ちょっと外れたわね」
聞きなれた声。
信じたくない現実の姿が、そこにはあった。
「美坂・・・先生・・」
「咲さん。あなたなら来ると思ってたわ。
それより、洋介君助けなくていいのかしら?」
「なっ!!」
美坂先生の手には、確かに拳銃があった。
この人が洋介と小暮さんを撃ったのは明白だった。
「う・・・」
「洋介!?」
洋介はまだ息をしていた。
「うふふ・・・
せっかく助けてあげようと思っていたのに
余計なことに首をつっこむからこうなるの
アハハハハハハ!!」
これがあの美坂先生なの?
頭が勝手に自問する。
答えなど、わかりきっているのに・・・
「悪魔・・・悪魔よ!!
あなたは狂ってる!!
こんな・・・」
{パンッ}
小暮さんの叫びは、
一つの銃声で絶たれた・・・
「小暮さん!!!!!」
私の目の前で
美坂先生が小暮さんを撃ち殺した。
友達が友達を殺した。
「う・・・そ・・・・」
私はこの時どんな顔をしていただろう。
怒っていただろうか。
泣いていただろうか。
いや、迷っていたんだ・・・
「さて・・・・次はあなたね」
銃口が私に向く。
でも、私の目には血を流して倒れている
小暮さんしか映っていなかった。
なんとなく、感覚でそう思った。
そんな時、誰かが私の服をつかんで
私を投げ飛ばした。
「え・・・?」
一瞬何が起こったのかわからなかった。
でも、次には洋介が再び撃たれた光景が
私の目に飛び込んできた。
「いやぁあああああああああ!!!」
なんでこんなことになっているの?
私たちは・・・
自らこの現実に飛び込んでしまった。
「がぁ・・・ぐ・・・」
洋介の声。
「あら、まだ生きてたのね」
美坂先生の声。
「やめてぇえええええええ!!!!!」
私の声。
{パンッ}
銃声。
全てがコマ送りになったような
そんな感覚だった。
「さてと・・・青山刑事
だめじゃないの
迷ってちゃ子供とはいえ出し抜かれるわよ」
美坂先生がそう言った。
青山刑事も、目の前で起きた惨状に驚いている感じだった。
そんな時、私たちが進んできた方向から
いくつもの叫び声が聞こえてきた。
「あら?あ~あ
咲さん。さっき別れた貴方の友達
今死んだわね」
なに?
なんなの?
この人は何を言ってるの?
「なんで・・・こんな事・・・」
美坂先生がこちらを向く。
その目は、狂気じみた目をしていた
「美坂先生が・・・殺したんですか・・・」
やっと出た言葉が、それだった。
美坂先生は、声を出して笑った。
「アハハハ!今私はここに居るでしょ?
大崎たちは私じゃないわキャハハ!
大崎たちは多分、この人の部下がやったんじゃないかしら?」
なんで笑っているの?
「先生は・・・何とも思わなかったんですか・・・」
美坂先生は急に真顔になって
「思うはずないじゃない。
だって、それが私の復讐だもの」
「復讐・・・?」
この女の復讐は
普通じゃなかった