【最終章 真実の姿】13話 仲間の行方
私たちは、すぐに学校を飛び出した。
そして工場に向かった。
みんなを助けたい決意と
少しの恐怖が心の中でぐちゃぐちゃに混じっていた。
でも、怖がってなんかいれない
友達のために、クラスメイトのために。
走っている途中
工場の屋根あたりが見えた。
私たちは、スピードを上げて
呼吸を切らしながら
必死に走った。
1秒でも早く、みんなに会いたかった。
工場の入り口に着くころには
みんな息切れをしていたが
ゆっくりと、工場の中に入って行った。
やはり、あの時の錆びの匂いが鼻を衝く。
まだ日は落ちてない
「この間よりは明るいけど、
やっぱり薄暗いね」
私は落ち着いたように見せかけて言った。
「そ・・・・そう・・・だね・・・」
この前は気づかなかったが大崎君は、暗い所が苦手なのか
洋介の服をつかんでいた。
少し歩いていると
「ここよね・・・美坂先生と刑事さんがケガしたの・・・・・」
小暮さんが、そうつぶやいた。
「・・・・・・・」
私たちは立ち止まって
そこを黙って見つめていた。
沈黙の中で音が響いた。
{ギィ・・・・・ギギギィ・・・・}
「何・・・・?この音・・・・」
私は、辺りを見渡しながら言った。
「咲さん逃げて!!!!」
小暮さんが叫んだ
私は言われた通りに、前に走った。
{ガンッ ガガガ ドゴォ }
私のすぐ後ろで
大きな音が響いた。
振り返ると
いくつもの鉄パイプが転がっていた。
天井に吊るされていたものが
落ちてきた。
間一髪でそのパイプの直撃を避ける事が出来たが
私の体は震えていた。
「大丈夫だった!?咲さん!!」
「うん・・・・なんとか・・・・」
小暮さんが、手を差し伸べていった。
「よかった」
私は小暮さんの手をつかんで
立ち上がった。
落下してきたパイプの音がやみ
静かになった時に気が付いた。
私たちは誰も動いていないのに
足音が聞こえてくる。
その足音は、だんだんと近づいてくる。
私たちは咄嗟に近くのコンテナの影に隠れた。
隠れた後、みんなに目をやると
大崎君が頭を抱えて震えていた。
洋介たちは大崎君を安心させようと
必死になっている。
そして、足音が止まった。
私はコンテナから頭だけを出して
その足音の正体を見ようとした。
人影が見えたが
顔は暗くて良く見えない。
すると、声が聞こえてきた。
「なんだ、鉄パイプが落ちてきただけか」
声からして男の人。
その男の人は、懐中電灯を辺りに向けて
何かを探しているようだった。
私はすぐに頭を引っ込めた。
しばらくすると、足音が遠のいて行った。
「ふぅ」
私は胸をなでおろした。
大崎君も落ち着いたようだ。
「私は先に向かうわ、
みんなはついてきてくれる?」
「当り前よ、ここまで来たんだから」
「俺もついてくぜ。女子2人に任せるわけにはいかないからな」
小暮さんと洋介はついてきてくれるようだ。
「俺たちは、ここで待ってるよ
大崎は先には、行かない方がいいと思うし
お前らに何かあったら
助けを呼びに行けるからな」
弥生君たちはここに残るようだ
小暮さんが
「頼んだわよ」
と、弥生君に言った。
私たちは3人で奥へと進んだ。
残りのみんなは工場の入り口に向かった。
歩きながら私たちは話した
「さっきの男の人は誰だったんだろう」
「男の人?あぁ、さっきの足音の事?」
小暮さんと洋介は不思議そうな顔をした。
「うん・・・でね、
あの声・・・・・どこかで聞いたことがある気がするの」
「私も、声だけは聴いてたからわかる、
確かに聞いたことがある気がするわ」
小暮さんも聞いたことがある声
私は洋介に聞いてみた
「洋介は、聞いたことある?」
「え?俺・・・・俺はなぁ・・・
えっと~・・・・ごめん、聞いてなかった
大崎の事でいっぱいいっぱいだったから」
「そっか、そうだったね」
そんな話をしていると、
小暮さんが足を止めた。
「ねぇ、何か声が聞こえない?」
そう言われて、私と洋介は耳を澄ました。
{・・・・・・って・・・・・だ・・・・・・・}
「確かに、なんか聞こえるな」
洋介にも聞こえたようだ。
みんなを消した、真相の声なのだろうか。
私たちは足音を立てずにゆっくりと奥へと進んだ。
声が、だんだん近くなってくる
人影が見えた。
そして、声がはっきりと聞こえるようになった。
「これからどうするつもりですか」
「明日、残りの4人を殺してから
俺たちは、姿を消せばいい」
私はその声に驚愕した。
固まった足を無理やり動かして私たちはその声のそばまで走った。
「そんな・・・嘘でしょ・・・」
私たちの目の前には
真実の姿があった。