【最終章 真実の姿】11話 覚悟
9月28日 昼休み
美坂先生は
あの工場の事があってから
病院で入院していると聞いた。
私たちも怖かった。
能世さんは、私より怖い思いをしていると思う。
次は能世さんの番だから・・・・
私もその恐怖を経験した身として
どんなに恐ろしい思いをしたか覚えている。
何とか助けてあげたい。
それだけを必死に考えていた。
すると、能世さんがこちらに歩いてきた。
「能世さん・・・ごめん・・・
私は、何もしてあげられない」
私は自分の無力さをかみしめながら
能世さんにそう言った。
「咲さんが謝ることないわ」
「能世さん・・・・・」
「私は大丈夫だから
心配しないで」
能世さんもこんな時でも
笑顔を絶やすことはなかった。
そして、能世さんが口を開いた。
「あのね、咲さんにお願いがあるの」
「え?」
「もし私が、明日来なくても
みんなを助ける事を
あきらめないでほしいの」
心が折れかけていた私に、
その言葉はかすかに希望をつかめるような
そんな思いを起こさせてくれた。
「わかった、絶対にあきらめたりしない」
「うん、ありがとう
これで、覚悟が出来たわ」
やさしい笑顔だった。
9月29日
能世さんは来なかった
昨日まで、あんなに笑顔だったのに
他の二人能世さんの後ろの席の2人
と一緒に消えてしまった。
もう、教室には10人しかいない。
少し前までみんなが居た教室。
青田君の自殺から始まった事。
みんな、暗い顔をしている
そんな時私は能世さんとの約束を思い出した。
そして、ある覚悟を決めた。
自分の本能だったかもしれない。
昔から、負けてばかりなのは気に障って、
なんでもあきらめずに挑戦してきた。
だからこその覚悟だ。
皆を助けると言う、無謀な覚悟だ。