【最終章 真実の姿】10話 工場
9月27日
私たちは昨日見た事を
すべてを美坂先生に話した
「わかったわ、今日の放課後
その工場に行ってみましょう」
美坂先生はそう言ってくれた。
私はその工場に何かを期待しているのかもしれない。
消えたみんなが、その工場に居るかもしれない。
でも、工場にみんなが居るのなら
そんなことをした犯人は誰なのだろろうか。
私の中で、期待と不安が入り混じっていた。
放課後
私たちは、美坂先生と一緒に
昨日の道を歩いていた。
小暮さんや洋介たちも、私と同じ気持ちなのだろう
誰も口を開こうとはしなかった。
すると美坂先生が
「みんな、もし消えたみんなが
その工場に居なくても、落ち込んじゃだめよ
あなたたちは、よくここまで調べたわ」
そういっても誰もしゃべらなかった。
工場がだんだんと近くなってくる。
そのたびに、何か錆びた匂いが漂ってくるようだった。
そして、工場の中に足を踏み入れた。
工場はただならぬ雰囲気を醸し出していた。
私たちはそびえ立つ鉄の塊に少しおびえながら、工場を進んだ。
錆びた鉄の匂いがあたりを包んでいた。
周りをを見渡すと、
天井に、今にも落ちてきそうなパイプの束が
吊るされていた。
「危なそうなところだね」
大崎君が言うと
「気を付けて歩くのよ」
と、美坂先生が心配そうに言ってくれた。
ガラスが割れた窓。
そこから外が見えた。
工場に着いたのが夕方だったので
もう、夜を迎えていた。
すると、
「みんな、家に人に連絡しておいた方がいいかしら」
美坂先生は携帯を取り出しそう言った。
「大丈夫です、出るときに言ってきましたから」
「俺も、言ってきました」
「私も」
小暮さん、洋介、能世さんの順に言った。
「僕、言ってくるの忘れました」
大崎君が言ったのを聞いて
私も言ってなかった事を思い出した。
「じゃあ、今から連絡するわね」
美坂先生が携帯電話を耳に当て
そう言った。
美坂先生が、電話を終えると
「じゃあ、どうする?
先に進んでみる?」
と言った。
私たちはお互いの顔を見て
首を縦に振った。
それから少し進むと
{ガシャン}
と、音がした。
みんなが後ろを振り返ると
懐中電灯がこちらに向いていた。
「君たち、そこで何をしてるんだ?」
そこには青山刑事が居た。
「ちょっと、ここで調べ物をしてるんです」
美坂先生が青山刑事に近づき
話をしに行った。
夜の工場は、ちょっと先でも見えないぐらい暗かった。
すると急に大崎君が
「ねぇ、何か聞こえない?」
声を震わせて言った
耳を澄ませてみると
{ごごごごごご・・・・・・・・}
何の音かわからないが
何かの転がるような
音が聞こえてくる。
そして、その音が近づいてくる。
だんだん、だんだん
こちらに近づいてくる。
すると、暗闇の向こうから
いきなりドラム缶が転がってきた
「きゃぁあああああああ」
私は思わず叫んでしまった。
「咲さん!!危ない!!!」
{ドゴッ}
鈍い音が響いた。
気が付くと美坂先生と青山刑事がうずくまっていた。
「美坂先生!!青山さん!!」
私は急いで美坂先生にかけよった。
「美坂先生!!美坂先生!!」
美坂先生は目を開けなかった。
「だいじょうぶだ、気を失っているだけだ」
青山刑事が腕を抑えながら言った。
「青山さん!大丈夫なんですか?」
「ああ、何とかな」
青山刑事は痛そうに言った
「ひとまず、ここを出よう
また、何かあるかもしれないから危険だ」
「はい!」
洋介と大崎君が美坂先生を担いだ。
そして急いで工場の外に出た。
すると青山刑事の
仲間らしき人が、
車で待っていた。
その人が
「青山さん!大丈夫ですか!」
そう言いながら駆け寄ってきた。
青山刑事が
「俺は大丈夫だ。
だが、この先生が気を失っていて
今すぐ、病院に運んで欲しい」
と言うと
「わかりました」
美咲先生を車に乗せて
車を走らせた。
「じゃあ、話を聞きながら
送っていくから
今日の事を全部聞かせてくれよ」
私たちは静かにうなずいた。
「それで、なんであんなところにいたんだ?」
「それが・・・・・」
私たちは、すべてを話した。
「そうか、そこまで
調べたのか」
青山刑事は、何かを考えているようだったが
すぐに
「でもな。今日の事でわかっただろ?
君たちは、危ない事に手を出しているんだ」
「でも・・・」
「でもじゃない!」
青山刑事が少し怒鳴るように言った
それから、一息吐いて
「すぐに、手を引きなさい
後は警察に任せるんだ」
青山刑事の気迫で
私たちはうなずくことしか出来なかった。
次の日 (9月28日)
まさかこんなことが起こるとは思わなかった。
今までは一人ずつだったのに
今日は3人も居なかった。
昨日いなくなった高島さんが出席番号17番だった。
そして今日、18番の玉川君
19番の地織さん、そして20番千葉君
の3人が居なかった。
そして、その後ろには、津田が居るはずだった机があるだけだった。
先生に聞いてみたら
3人とも、連絡はなかったそうだ
それを聞いた瞬間
恐怖が一気に私を包んだような感覚になった。
私たちは、取り返しのつかない事をしてしまったかもしれない・・・と