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第5話:視察(その1)

投稿が遅れてすみません。

午後8時:扶桑王国上空

月明かりがわずかに照らす漆黒の空に一機の輸送機が飛んでいる。その輸送機の側面には赤い丸が描かれている。これは「日本皇国」の国旗、日の丸である。


同時刻:沖野航空基地食堂

厳しい訓練を終えた兵たちにとって有一の楽しみは食事である。訓練で消耗した体を食べ物の味覚と満腹による満足感でそれを補給してくれる。

ここ食堂ではある者は同僚と会話し、またある者は仲間と馬鹿騒ぎをしている。だが、北川と安藤はその輪に加わらず、隅っこで細々と食事を摂っていた。

「・・安藤」

「はい?」

「なぜお前は俺の隣にいる?」

「まだこの基地に慣れていなくて、だから顔見知りの中尉と食事を取ろうとおもいまして・・」

「そうか・・」北川は少し焦っていた。なんとか話題を出して会話しようとするが、なかなか会話が続かない。それでも北川は話題を出す。

「そういえば、お前の出身はどこだ?」

「月奈県(扶桑の西)です。

「・・・・」また会話が続かなかった。北川にだんだん焦りの色が濃くなってきた。

「あの中尉、失礼承知で聞きますが、」

「ん?なんだ」北川は表情には出ていないが喜んでいた。向こうから話題を上げてくれたからである。

「なぜ中尉はひとりで食事を摂っているのですか?」北川の胸に鋭く大きな衝撃が来て、北川の心は砕けた。安藤自身に悪気はないのは北川自身わかっていた、しかし、北川の心を壊すにはそれで十分だった。

「ああ!中尉!中尉!」安藤はパニックになっていた。突然北川が椅子の上で小山座りをしたかと思うと尋常じゃないほどの禍々しいオーラを放出してうずくまってしまった。


午後9時 扶桑王国:流星すばる日本軍基地

先ほど飛行していた日本の輸送機が滑走路に着陸した。輸送機は着陸の勢いが止まるとトラックが輸送機に群がるように集まってきた。積んでいる物資を下ろすためのトラックである。作業員は積荷を手早く下ろしていく。

そんな中、二人の女性が輸送機から降りてきた。作業をしていた男性は彼女らに見とれていた。軍隊では女性がいないからである。

すると、一人の男性が彼女らに近づいていき、目の前に立つと敬礼をした。

「お疲れ様です。”坂田さかた 春香はるか”大尉 ・”武藤たけふじ 優子ゆうこ”少尉、お待ちしておりました。」

「うむ、ご苦労。」「ありがとうございます。」と二人は兵士に返事をかえした。

背が高く、美少年のようなキリっとした顔立ちをしているのが坂田で、逆に背は低く、坂田とは対照的に少女だしいあどけさを残しているのが武藤である。

「今は遅いので今日はここでお休みください。”訪問”は後日ということにさせていただきます。」

「わかった。」返事を返す坂田に対して武藤は何かそわそわしている様子であった。

「どうした少尉?そんな”もわもわ”して。」

「”そわそわ”ですよ大尉。」坂田のボケを武藤は慣れたような口調で返した。坂田のボケっぷりは日本皇国軍の中では有名で、特に皇国海軍では一種の名物とかしている始末である。

「だって久しぶりに”友”に会えるんですよ。」武藤は目を輝かせながら言った。

「坂田大尉はそんな気持ちがないんですか?いくら久しぶりだからってまさか”彼”の存在を忘れてしまったんですか?嗚呼、なんて悲しいことでしょう!」とオーバーなリアクションをしながら「よよよ」と胡散臭い嘘泣きをした。

「忘れてはおらぬ!」とふざけている武藤に強めの口調で言い放った。それを見て武藤はにやりと坂田には見えないように笑っていた。

「えっと・・・ほら・・・あれだろ・・・」その場にいた武藤と兵士は呆然とした。坂田の額から冷や汗が吹き出て、そして目は海を泳ぐ活魚のように泳いでいた。たまらず武藤がもしかして、本当にわすれたんですかと言おうとした時、

「ああ、そうだそうだ!思い出したぞ!」と坂田は手を叩いた。彼女のそこ行為を見て、武藤はホッと安堵の息を漏らす。

(はあ、驚いた。坂田さんのボケは確かにひどいですけど、まさかいくら会うのが久ぶりの友達のことを忘れるわけないですよね。)しかし、安心したつかの間、このあと坂田はとんでもないことを口にした。

「”土屋”少尉のことだろ。私も流石にそんなにボケてはおらぬよ。ははは。」大工や土木工事にいる親父のような豪快な笑いをした坂田はふと武藤の方を見た。しかし、彼女を見て坂田は笑うのをやめた。武藤の顔はいつもしているような元気な少女のような明るい顔つきではなく、まるで誰かを”軽蔑”しているような目をしている(周りは作業中なので気づいていない)。一体誰を・・・

「貴様か?」

「へ!?」突然振られて驚く男。

「あなたですよ!坂田大尉!」突然の大声で驚く坂田はその声の主、武藤を見た。さっきとは打って変わって真剣な眼差しになって坂田に言った。

「私が行っているのは北川中尉のことですよ・・・たしかに・・坂田大尉はボケていますけど・・・ここまでだとは思ってませんでした!!第一、土屋と北川って一文字どころか文字数自体違うじゃないですか!!」鼓膜や破けそうな音量の声で武藤は言った。坂田はある事に気づいた。武藤の目に涙が浮かんでいた。さっきから言葉がとぎれとぎれだったのはそういうわけか。

坂田は頭が混乱していたのかわからないが武藤にハグして頭をさすってなだめた。

「すまない。一言だけで申し訳ないが、今はこれしか謝罪の言葉が浮かんでこないんだ。すまない。」

「!・・・・・」突然のことで驚いているのかなとふと坂田は思っていたが、なんか・・荒い息遣いがするな・・・。

しばらくして坂田は武藤を突き放した。兵士は驚いた。

(一体どうしたんだ、さっき言った言葉とは、む!?)男は驚いた。なぜならいつも男のように振舞う坂田大尉が胸を抑え、恥ずかしそうに頬を赤らめていたからである。

(な!?坂田大尉のあのような姿は・・・初めて見た。)男は驚くと同時にそんな大尉を”可愛い”と思った(彼曰く、”ギャップ萌え”だしい)

「貴様ぁ!”上官の匂いを嗅ぐ”とは何事だ!!」

「何を言ってんですか!?正確には”胸”のです!!」

「開き直るな!!馬鹿が!!」

「あぁ、馬鹿に馬鹿って言われた!しょっくだなぁ~。」

「私は”馬鹿”ではない!”ボケている”だけだ!」

「同じですよ!!」

「わけがわからないよ。」と男は目を丸くして状況を把握できないでいた。ひとまずわかったのは武藤少尉がまた”ボロ”出したということだけだ。ちなみにこの口喧嘩は1時間近く続き、二人は喉を痛めた。


また次回も投稿が遅れます。

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