第3話:出会い
テスト前なのにこんなことしていいのかな・・
扶桑王国:岩浜県・沖野航空基地
扶桑南部にあるここ沖野航空基地に一人の青年がやってきた。顔は少年のようなあどけなさもあるが自信を持った凛々しい顔つきで中性的な顔である。身長は低くいが体格自体はガッチリしている。
ふと彼が上空を見るとで2機の赤と白の帯がついた白い戦闘機が模擬戦を行っていた。その下では見物人の影もちらほら確認できる。
2機の戦闘機の名前は”九六式艦上戦闘機”。現在の扶桑王国海軍の主力戦闘機で、日本では旧式の戦闘機だがここではまだ現役で活動している。
それは置いといて、模擬戦を行っている2機の九六式は始めは互角に格闘戦を行っているように見えたが次第に白帯が押されているように見えてきた。
「あ!」青年や見物人は思わず声が出た。
模擬戦の決着は突然付いた。
追い込まれていた白帯が突然急上昇した。もちろん赤帯はそれを追いかけるために急上昇する。
すると、白帯は突然減速させ赤帯が追い越してしまい、白帯は失速状態からすぐに回復し、赤帯の背後を取る形で赤いペイントを撃ちだすペイント弾を発射、命中させた。
白帯が滑走路に着陸すると見物人たちが駆け寄ってきた。彼もそれに便乗してかけ寄った。(ちなみにすぐ後に赤帯も着陸したが、誰も来なくて、パイロットがすごい哀愁を漂わしていた。)
降りてきたパイロットを見て、まず青年の第一印象は”怖い”であった。そのパイロットは顔つき自体はよいのだが問題は目つきだった。表現するなら”釣り目で三白眼。瞳も生気を感じない”このような感じである。
「やばい、やばい」青年は急いでいた。初転属なのに模擬戦を見るのに夢中で基地長に挨拶をし忘れていたのだ。基地の司令塔内を全速力で走っていた。そして、司令室の前まで着くと、走って上がっていた息を深呼吸で元に戻し、司令室のドアをノックした。
「失礼します!」やや緊張した口調で司令室に入った。すると彼は驚いた、なぜなら、司令官だと思われる初老の男性の前で会話をしている男性はあの模擬戦で白帯をした九六式に乗っていたあのパイロットだったからだ。
「おお、やっと来た。わたしは沖野航空基地司令官”田島 弘樹”だ。そしてこいつは我が基地一番のエースパイロット・・」
「北川正弘中尉だ。」そのパイロットもとい北川中尉は言った。
「・・・は!?も・・申し遅れました!あ・あ・・安藤博之少尉であります!」安藤はあまりの緊張で盛大に噛んでしまった自分に情けなさを思えた。安藤自体人とあまり関わる事が多くないので、こうゆう時はかなり緊張してしまうのだ。安藤自身これがコンプレックスだったりする。
「そうか、君がか。ちょうど良かった。」安藤は田島司令官の言っていることがわからなかった。
「北川中尉、彼だよ。今度の君の僚機のパイロットは。」安藤は余計頭が混乱した。(君の!?僚機!?何のことだ!?)
「ふむ、君がか。司令官から聞いたとおり北川正弘だ。よろしく。」北川は安藤の前に立ち、手を伸ばした。握手を交わそうとしているのだろう。
「は・・はい。」安藤もそれに応えるように握手した。北川の手は力強く温かい手だった。