第七話 驚き…
「流!!起きなさ〜い」
寝ぼけた頭を遠くの方で、母ちゃんの声が聞こえる。もう少し、もう少し、俺はこの寝ぼけた時間が好きだ。
十五分位した頃、母ちゃんが飛び込んできた。いきなり布団をはぎとり、腹の上に乗って来やがった。
「流!!いいかげん起きなさい!!歩君迎えにきてるのよ!」
「それ早く言えよ!!」
俺は、すぐに起き上がって制服に着替えた。急いで下に行ってみると、父ちゃんの横に歩が座ってコーヒーを飲んでいた。
「流、おはよ」
俺は、昨日の一件があったから少しよそよそしく、
「あっ、うん。おはよ」
「ねぇねぇ歩君、昨日お兄ちゃんフラれちゃったの?」
恋愛話に目のない結は、歩に聞いている。俺は歩なら余計な事は言わないだろうと、安心して牛乳を飲んでると、
「別にフラレた訳じゃないよ。ただ喧嘩しただけだよ。」
俺は牛乳を吹きだ出してしまった。結のニヤニヤした視線を見ないようにして、
「余計な事は言わなくていいんだよ!もう、行こ歩」
家を出て少し歩いたところで、俺は切り出した。
「昨日は、雰囲気壊しちゃってゴメン。俺あそこまで言うつもりなかったんだけど…」
「まぁいきなりだったし、流があんなにムキになってるの初めて見たからビックリしたけど、それなりに事情があったんだろうから仕方ないよ。流が帰った後、フォローしといたから平気だよ」
相変わらず気がきく歩に、
「毎度毎度悪い」
とお礼を言った。
「それはそれと、今日放課後空けておいてね流」
そう言われて、何だろうと思ったけど、「うん」と言っておいた。
学校に着くと下駄箱の所で、明らかに怒ってる俊が立っていた。
「流!!昨日の態度はなんなんだよ!百合さんがビビっちまったじゃねぇか!!俺まで怖がられたらどうすんだよ!!」
「はいはい、ゴメンナサイ。迷惑おかけしました。」
と、丁寧に頭を下げた。
「まぁ俺は百合さんとかなり仲良くなったし、電話番号も聞いて、今度また遊ぶ約束したもんね」
幸せそうに自慢してくる俊が少し羨ましく思えてきた。
今日の授業を終えて、歩と歩いてる途中俺は、
「放課後空けておいてって言ってたけど、何があるの?」
「実は、流に逢いたいって人がいるんだよ」
「俺に逢いたいって誰だよぉ?」
と、不思議な顔をしてると、
「まぁ〜行ってみたら解るよ」
と、歩はニヤリと笑い言った。
少し歩いて、駅前の喫茶店で歩は止まった。中に入って、辺りを見渡すと驚いた事に、綾と百合がいた。近付いて行くと綾が
「あっ、来た来た。ゴメンね呼び出しちゃって。とりあえず座って。」
歩はすぐに座ったが俺は、
「昨日はホントにすいませんでした。場の雰囲気壊しちゃって…。後、美音さんにもあんな言い方しちゃったし…」
と言うと、百合が、
「そんなに気にする事ないよ。あの後の雰囲気悪くなかったし平気だよ。平気じゃなかったら美音も綾に、あんなメール入れて来ないよ」
と百合が言い、俺と歩は意味が解らなくて、
「メール!?」
と聞いた。すると綾が、
「そうそう、その話で呼んだんだった。あのねっ、美音が流星君にもう一度逢いたいんだってさ」
俺はビックリして、
「俺に!?」
て言うと、
「そんなに驚かないでよ。美音はただ、もう一度話してみたいだけだと思うからさっ。それでメールアドレス教えるから、一回メールしてみてくれない?美音には了承とってあるから」
俺は戸惑ったが、
「わかりました。じゃぁ一度メールしてみます」
と言った。少し話をして俺は家に帰った。
家に帰ってきてからずっと、俺はベットの上で携帯を見つめながら悩んでいた。何を打ったら良いのかがさっぱり思い付かなかったが、俺は、頑張ってメールをしてみた。
<どーも天川流星です。綾さんからアドレス聞いたので、メールしてみたんだけど、昨日はホントにすいませんでした。俺初対面なのに酷い言い方した事を反省しています。
でも、美音さんが悲観的な考えをしていて、すっごく悲しくなっていってしまいました。美音さんの、本当の気持ちはわかんないけど、怖いっていうのは伝わってきた。正直もっと知りたいと思いました。もし良かったら、ホントの気持ちを教えて下さい。返事待ってます。>
一度深呼吸して送信ボタンを押した…