第四話 出会い
「ゴメン、待たせちゃって。出る時、母ちゃんと結に捕まっちゃってさ」
待っていた俊と歩に言った。
「大丈夫だよ。まだ時間少しあるから」と、ジーンズにロングTシャツという、ラフな格好をした歩が、優しく言ってくれた。
が、もう一人の男は違っていた。
「流!!ちゃんと気合い入れろよ!!年上をゲットするチャンスなんだぞ!!」
と、思いっきり今風の、B系できめてきた俊が、気合い入れてます。と言わんばかりに、俺に噛みついてきた…。
「何をガツガツしてんだよ俊。そんなんじゃお姉様達に逃げられちゃうぞ!!やっぱ年上は、落ち着いた男がいいんだよなっ歩?」
と、歩に振ると、
「それはどうかなっ?」と、曖昧に返してきた。すると俊が不安そうに、
「どっちなんだよ!誰か教えてくれぇ〜!!」と、叫んだ。
俺達が、待ち合わせのカラオケ屋に着いた時には、もう彼女達は来ていた。
部屋に入り歩が、
「ゴメン、待たせちゃったね」
「え〜どうしよっかなぁ?」
と、不機嫌そうに彼女達は顔を見合わせている。
すると、いきなり俊が、「すいません!!機嫌を直してもらえませんでしょうか?俺達、何でもしますので!!」
と、深々頭を下げた。
一瞬シーンとなったが、すぐに歩と彼女達は笑いだした。
「俊!大丈夫だよ。綾達は、そんな事で怒ったりしないよ」
「そうそう!ジョーダンよジョーダン!!間に受けちゃうんだもん。ビックリしちゃうなぁ〜」
綾という、背が高くて、モデル系、目に力が溢れてる子が笑顔で言った。
俊は、「よかったぁ〜」
と、ホッとして、しゃがみ込んだ。
「まあまあ、みんな座ろうよ。」
綾の横にいた、女の子が俺達に言ってくれた。その声は驚くほど透き通った、綺麗で優しい声だった。まさに美声だと思った。
そして、百合の横には、もう一人の女の子がいた。緊張しているのかその子は、ずっとうつむいている。何だろう…
「じゃあ〜紹介するね。こっちは、幼なじみの俊と流星で、僕は歩。」
「初めまして!!」
と、俊。
「どーも」と、俺。
「今度はこっちね。あたしは綾。それでこっちが、高校からの友達で、百合と美音。」
「ヨロシクお願いします」と、百合。俺達は、この美声に聞き惚れていた。
次は、美音という子の番なのに一行に話そうとはしない。さっきと変わらず、うつむいたままだった。どこか俺に似ていて、イライラしてきた。
でも俊は、
「緊張しますよねぇ〜俺なんて朝から緊張しっぱなしですもん。」
それでも美音は無反応。不思議そうな顔をしてる俺達に、綾はこう言った。
「美音は耳が聞こえないの…連れてきていいのか悩んだけど、歩が『俺の友達は、いい奴だから大丈夫だよ』って言ってくれたから連れてきたんだけど…良かったかなぁ〜?」
「いいも何も大歓迎ですよ!!なっ流!」
と、涙ぐみながら言うので、俺は「あぁ」と答えた。
ホッとした綾は、美音をトントンと叩き、手話をしだした。美音は、俺達を見渡し一度お辞儀をした。そして、顔をあげた美音と俺は、目が合ってしまった…。
聞こえるよ、君の声が。
『怖い…怖いよ…』
その少し脅えたような瞳から俺は、目をそらす事ができなくなってしまった。