第十六話 喜怒哀楽
綾と百合と話をした日からもう一週間以上も経ったのに、流星達の関係は何にも解決してなかった…。
毎日毎日どうにかしようと悩んで、俊に話をしようとしても、未だに聞く耳を持たないし、歩は自己嫌悪でいっぱいなのか、流星ともギクシャクしていた。でも、そんなある日歩が、
「俺達もうダメだね。こんな事で崩れてるんだから、いつかはきっと壊れてたはずだよ。まぁその原因作ったのは俺なんだけどね。」
そんな歩にイライラしてきて、言ってやった。
「そうだよ!!原因作ったのはお前だよ!!俊もそうだけど、何でこんな事一回でここまで壊れちゃうんだよ!!壊れたら修復しようとすればいいじゃねぇか!!何で諦めてるんだよ!!俺は嫌だからなっ!!絶対に諦めないからなっ!!」
そう言って、俊の時と同じく感情的になって背中を向けてしまった。最近の流星の悪い癖だ。
その日の夕方美音と逢った。たんなる相談の為だけじゃなくて、自分が逢いたい口実に相談を使っただけかもしれない。美音は逢うなり、ノートに何かを描いて見せてきた。
<流星君、大分疲れてるみたいだね…今日も何かあったでしょ?>
と、鋭く言い当てた。流星は美音からノートを借りて、今日あった歩むとの事を描いた。それを見て美音が、
<やっぱり流星君は熱い人なんだよ。それと、歩君と俊君の事すごく好きなんだよ。そんなに思える友達がいてあたしは羨ましいよ。>
そう言われて少し照れてしまった。
立ち話もなんだからって事で、近くの店に入り、深い話をし始めた。
<何で歩君も俊君もちゃんと話しようとしないんだろうね?>
<そうなんだよ!!二人共諦めモードでイライラするよ。今までにも三人の中で喧嘩は合ったんだけど、こんなにヤバイって感じたのは初めてだよ…。>
<もしかしたら、俊君は歩君と百合がよりを戻すのを願ってわざとそんな態度取ってるって事ないかなぁ?>
<俊が?あいつはそんな気が利く奴だとはおもえないけど…。それに、俊は、百合さんの事すごく好きになってたんだよ。>
<そうかなぁ?俊君は、結構気が利く友達思いの子だと思うけどなぁ。あたしと流星君が初めて会った合コンの時、流星君怒って帰っちゃったでしょ?その後『流星はいつもあんな感じじゃないですから。すごくいい奴で…』とかって、あたし達に長々フォローしてたんだよ。>
流星はすごくビックリした。いつもそうゆう役目は歩だし、俊がそんな事を言ってくれてるなんて嬉しくもあった。
<俊がそんな事言ってくれてたなんて…。俺、そんな気遣いも知らないで俊にガツガツ言っちゃってたんだ…。>
<でも、そんな事恩着せがましく言うタイプじゃないだろうし、男の人って何かそうゆう思いやりみたいな事を、隠そうとする所あるし仕方ないんじゃない?>
<あるある。意外とシャイなんだよね。そんな事利くと、少し話変わってくるなぁ。美音さんの言う事も一理あるのかもしれないなぁ。尚更どうすればいいか悩んじゃうなぁ。>
<流星君は、そのままでいればいいんじゃない?二人の事を大切に思って二人に接していれば、何かのきっかけでうまくいく時もあるよ。漠然としたアドバイスでゴメンね。>
全然そんな事はなかった。確かにここ最近力が入りすぎてたのは事実だし、早くしないと、早くしないとって焦りもあったから、美音の言葉はすごく気持ちを楽にしてくれた。
<それもそうですよね。どこでどうなるのかなんて分かんないんだし、あんまり力いれ過ぎててもダメですよね。俺、美音さんに話して本当に良かったです。>
<いいのいいの。あたしでよければ何でも聞いてあげるよ。いいアドバイスできるか分かんないけど、流星君の力になれるならなりたいし。>
すごく嬉しくて、顔の筋肉が緩むのを抑えられなさそうだったので、下を向いた。浮かれた気持ちを表情で悟られないように、顔を引き締めた後顔を上げて次の話を切り出した。
<七月七日に俺の誕生日が来るんだけど、毎年海で誕生日パーティーしてるんだけど、もし良かったら綾さんと百合さんも誘って、三人で来てくれませんか?>
<そうなんだ?七夕が誕生日なんだ!!すごくロマンチックだね。でも、そんな所にあたし達がお邪魔してもいいものなの?>
<全然いいよ。いつもは、俺の家族、歩、俊、何人かの友達でやってるんだけど、誕生日パーティーって感じなんて全然なくて、みんなでワイワイ騒ぐって感じだから。おまけに、俺の誕生日がある感じ。>
美音は、ノートを見て一瞬笑った。
<そっかぁ、何か楽しそうだね。綾と百合にも声かけてみるけど、歩君と俊君は来るの?>
<それは俺が何とかするよ。でも、百合さんは来づらいのかなぁ?>
<それは、あたしが何とかするよ。そうゆう日は、楽しくしたいもんね。>
<ありがとう。織姫と彦星が出会う為の天の川みたいに、俺が歩と俊の天の川になって見せる!!なんてね…。>
ノートを見て二人は笑い合った。こんなたわいもない会話がすごく楽しくて、幸せを感じた。流星がそんな事を考えている時、美音も同じ事を考えていた。美音は、ずっとこの間見た夢の事が気になっていたので、流星の笑顔を見るだけで嬉しかった。でも、やっぱり少し気になっていたので、流星に探りを入れて見た。
<流星君って、好きな子とかいないの?>
流星は、美音がいきなりそんな質問をしてくるのでドキッとした。
<好きな人??いる事はいるんだけど、多分片思いだと思う…。そうゆう美音さんはいないの?>
美音は、質問を返されて動揺した。
<あたしもいることはいるけど、こっちも片思いだと思うよ…。>
一瞬の沈黙の後、二人は目を合わせ、ノートを使わず、言葉で、
「頑張ってね。」
と、言った。