第十一話 水族館
店を出た流星は、複雑な気持ちだった。自分があんな風に他人をいきなり殴ったり、あれほど他人を思いやったりしたのも初めてだった。しかも、美音の事を『俺の女』なんて言ってしまったのにはかなりビックリした。美音には聞こえてないだろうとは思うけど、顔を合わせずらい。そんな事を考えながら歩いていると後ろから美音が、トントンと肩を叩いてきた。振り返った流星は、
「ゴメンなさい… 毎回毎回美音さんと逢ってる時、俺キレてばっかで… 本当最悪ですよね…」
と、うつむきながら言ったので美音がまたトントンして、手話で何言ってるのか分からない。と、手と口で流星に伝えた。流星は、美音の言いたい事を理解して、もう一回同じ事を言おうと話し始めたところで美音が、手を合わせて『ありがとう』とした。流星は、何の事か分からず、
「えっ!?ありがとうって何がですか?」
美音は、メモ帳にペンを走らせて、
<あたしの為にあの人達を怒ってくれた事>
「あれ?何で分かっちゃったんですか?」
<だって、流星君の口の動きで大体の事は分かっちゃったもん。『俺の女』ってところもね>
流星は、そこまで知られていた事に恥ずかしくなって段々顔が赤くなってきた。
「いや、あれは何て言うかその… とっさに…」
そういう流星に美音はメモ帳を見せた。
<ありがとう、本当に嬉しかった。でもあたしなんかの為にあんな危ない事もうしないでね。あたしなんていろんな事言われるの慣れてるし、聞こえないから大丈夫だよ。>
と、美音は流星に笑顔を見せた。だけど流星は、
「また使ってますよ!!『なんて』、『なんか』。これからは、それ禁止ですよ!!俺は、ああゆう奴許せないんですよ!人の気持ちも知らないで勝手な事ばっかいいやがって!お前も同じ思いしてみろって感じですよ!!」
怒ったように言う流星を見て美音は笑った。そして、メモ帳に書いた。
<流星君ってそんなに熱い人だったんだねビックリ!!そうゆう役目は俊君だっけ?あの子の担当だと思ってたけど、流星君も似てるんだね。>
それをよんだ流星はすかさず、
「似てないですよ!!俊程俺熱くないですって…もう参ったなぁ〜」
<そうかなぁ〜流星君も十分熱いキャラだと思うよ。まぁ、とにかくありがとね。>
流星と美音は、微妙な距離を保ちながら水族館に着いた。
二人っきりで水族館に来るなんて恋人みたいだなぁと、お互い思っていたが、そんな事を口にする訳でもなくぼんやり魚をみていると、美音がイルカの前で立ち止まって離れようとしない。しばらく経っても動こうとしない美音に、流星は肩を叩き問いかけた。
「美音さんイルカが好きなの?」
<うん、水族館で一番好きかな。イルカを見る為に水族館に来てるようなものだしね。>
「確かにイルカって可愛いし、人間を癒す力もあるって言うしね。俺もイルカを見てると落ち着く。」
<そうだよね。あたしの世界って、海の中に似てるのかもしれない。浅い所だと、太陽の光で暖かいし、明るい。でも、深い所は冷たくて真っ暗。あたしはそんな海にいる魚と同じ。>
「深い所に闇があっても、その上には必ず光があるんだから、大丈夫ですよ。」
<流星君なかなかいい事言うね。>
そう言った後ちょっと恥ずかしくなってイルカを見ると、首を縦に動かして、
『うんうん、それでいいんだよ』
と、笑ってくれたような気がした。まぁ気のせいかもしれないけど…
その後も水族館をゆっくり見て回ってる時の事だった。少し離れた所で聞き覚えのある声がしたのだ。気のせいかと思い、そのまま角を曲がった時、目を疑ってしまうような光景がそこにあった。
何と!!そこには歩と百合が手をつないで楽しそうにしてるじゃないか。横の美音を見ると、同じように呆然と固まっている。とっさに美音の手を掴んで、歩と百合に見られない所まで逃げて来た。
あれは一体どうゆうことなんだろう…
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