麦わら帽子を追いかけて
初投稿です。
変な表現。誤字、脱誤もあると想います。
そんな変な所、注意点など大歓迎です。
よろしくお願いします。
僕は目を覚まして、白い雲が流れる空を見上げた。
風が吹くと、僕の肌に短く伸びた草の先っぽが当たり、ちくちくとあたりかゆくなる。
僕は、自分が何故こんな所で寝ていたのかわからなかった。
ふと、誰かが横にいるのに気がついた。
首だけを動かして横を見ると、僕と同じくらの歳の女の子が、赤いリボンがついた麦わら帽子を抱いて、僕と同じように眠っていた。
……思い出した。僕はこの子と一緒にここに来たんだ。
一緒に遊んで、偶然見つけた原っぱがとても気持ちよさそうで、僕たちは寝転がったんだ。
僕は起き上がる。すると、女の子が身をよじって、うっすらと瞼を開いた。
「あっ……」
起こしちゃった。
「……ごめん」
僕は謝った。
「……いいよ」
女の子はクスリと笑い、僕に手を差し出した。
「起こして」
僕はその手を両手で掴んでひっぱた。
女の子は起き上がると僕に、ありがとうと言って服についた葉っぱを手ではたき始めた。それを見て、僕は自分の背中にも葉っぱがついたままだったの思い出した。
パンパン。パンパン――
二人で自分の服についた葉っぱを払う。
僕はある程度払うと、女の子の方を見た。どうやら背中に手が届かないらしい。持っていた麦わら帽子で一生懸命背中を叩いている。
「僕がとるよ」
僕はそう言って女の子の背中に残っていた葉っぱを手で払い落とした。
「うん、いいよ」
「……ありがとう」
払い落とした事を言うと、女の子がお礼の言葉を言ってきた。僕はそれが恥ずかしくて、でも嬉しくて、女の子の顔を見ることができなかった。
「これからどうしようか?」
そんな僕に女の子が聞いてきた。
まだ夕方じゃないから家に帰らなくてもいいし、もう少しこの子と遊んでいたい。
そう思った僕は、何をして遊ぼうか考えた。
「う~ん」
お父さんは何かを考える時はいつも腕を組んでうなりながら考える。こうすれば何か思いつくかもしれない。おいかけっこ? でも二人だけだし……。
その時、僕達の背中から強い風が吹き抜けて行った。
「あっ」
女の子の声が聞こえて、僕は顔を上げてそれを見た。
女の子が持っていた麦わら帽子が風に吹かれて飛んで行く。
「行こう」
僕はすぐに女の子の手を取ると、その麦わら帽子を追いかけた。
僕たちは走った。
大空を飛んでいく、麦わら帽子。
どこまで飛んでいくんだろうか。
走る僕たちの背中を吹き抜けていく風。そして、走るたびに、空に舞った小さな葉っぱが、その風に乗って、僕達の視界に緑色が鮮やかに舞っていく。
楽しかった。
後ろを振り返って女の子の方を見ると、彼女も楽しそうに笑っていた。
僕たちは笑いながら、麦わら帽子を追いかけた。
そして、僕達は立ち止まった。
ずっと、どこまでも続くと思っていた草原、それが川を挟んで途切れていたから。
「あっ」
立ち止まって見上げた空。
まだ風は止んでない。
吹き抜ける風に乗って空高くまで飛んでいく、麦わら帽子。
僕たちは立ち止まってその麦わら帽子が木の陰に入って見えなくなるまで見つめた。
消えちゃった……。
僕は振り返って、女の子を見た。
すると、女の子は泣いていた。
麦わら帽子が無くなったから?
「……ねぇ、探しに行こうか」
えっ、女の子が僕を見る。
「まだ時間もあるし……あの帽子を探そうよ」
僕は自分でもこの考えは良い考えだと思った。
「冒険だよ! この前テレビで見たんだ。宝物を探して冒険するんだよ」
女の子は泣き止んでジッと僕の方を見つめる。
「でね、その冒険者にはじょしゅって言うのがいるんだ。だから僕が冒険家で、君がじょしゅをやって、帽子をさがそうよ!」
僕は興奮していた。こんな楽しそうな事を考えれた事が嬉しかった。
「……じょしゅってなあに?」
「よくわからないけど、冒険家を手伝う……人かな?」
僕が見たテレビではじょしゅは、冒険家の言うことを何でも聞いていたと思う。
「じゃあ、私が冒険家になる」
「……うん、いいよ」
それに僕はなんて答えようか迷った。冒険者には僕がなりたかったからだ。でも……、女の子が笑うのを見てると、まぁいいかって思った。
その後、女の子は僕に冒険家がいったい何のかも聞いてきた。僕はそれにテレビで見た冒険家のお話を教えた。そして、僕たちの冒険が始まった。
女の子が冒険家で、僕がそのじょしゅ。
「じゃ、どこに向かおうか?」
「空に消えたから、空に近い場所に行こよ」
「じゃあ、……あの山に行こう」
僕は帽子が飛んでいった方向にある山を指さした。
「うん」
女の子が頷く。
僕たちは山に向かうため、まず始めに目の前の川を渡る事にした。
前の僕たちだと渡る事なんてできなかったけど、今の僕たちは冒険者だから、こんな川なんて平気で渡れる。
そして、女の子がジャンプして川を飛び越えた。僕は驚いた。僕はこの川を真ん中にある石を踏んで渡ろうと考えていたのに、女の子は僕がテレビで見た冒険家のように、川を飛び越えたんだ。
「さぁ、手を伸ばして」
渡り終えた女の子が僕に手を差し出した。
残念ながら、冒険家でではない僕にこの川を飛び越える事はできない。僕は女の子の手を取ると、川の真ん中にある石に足を乗せた。
「うわっ!?」
体重を乗せた瞬間、足が滑った。そして、大きな水しぶきが上がり、僕の右足が川の中へと落ちた。
「……あっ」
落ちちゃった……。
どうしようか迷っていると、笑い声が聞こえた。前を見ると女の子が僕を見て笑っていた。僕は恥ずかったけど、彼女が笑っているのを見ていると、僕も笑っていた。
「ごめん。落ちちゃったや」
僕が謝ると、女の子は首を振って、いいよって言ってくれた。
「じょしゅを助けるのは冒険家の……つとめ? だったけ?」
僕はきょとんとした後、それがさっき女の子に説明した事だったのを思い出した。
「うん、そうだったね」
僕は女の子が覚えていてくれた事が嬉しかった。そして、女の子の手を借りて、僕たちは川を渡りきった。
僕たちは山に向けて真っ直ぐ進んだ。僕の右足は水に濡れて歩くたびに変な音がする。でも冒険家のじょしゅはそんな事で歩くのを止めたりしない。道を横断して、大きな木の横を通り過ぎる。そして、目の前に崖が見えた。
僕たちの背丈ぐらいある石の崖だ。その奧には山へと続く階段が見える。
「どうしようか?」
女の子が僕の方を見て聞いてきた。
「……僕が先に登って君を引っ張り上げるよ」
そう言うと僕は石の隙間に足と指をかけた。
「あぶないよ」
女の子が心配そうに僕の方を見る。
「冒険家を助けるのがじょしゅのやくめだから」
そう言って僕は、その崖を登り始めた。
本当は怖かった。こんな高い場所を登った事なんて一度もなかったから。でも、女の子が見ているから、何とかなるかもしれないって思ったんだ。
「うんっ……しょっと」
左足が地面から離れた。怖かった。もしかしたら、このまま落ちちゃうかもしれないから。でも、伸ばした手はもう崖を越えていたし、女の子が後ろで僕を見ている。だから僕は右足を放して上へと登った。
「あっ」
僕の顔が崖を越えた。あともう少しだよ。そう女の子に言おうしたとき、足が滑った。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
……足は滑ったけど、何とか腕で身体が落ちることはなかった。でも、もう足が動かない。怖かった。本当に落ちちゃうと思った。目からも涙が溢れそうになる。
「だ、大丈夫?」
女の子が僕に聞いてきた。僕は何か答えなきゃと思った。
「……う、うん」
口から出た言葉は震えていた。
どうしよう……動けない。ずっとこのまま動けなかったらどうしよう……。
僕がそんな事を思っていると、おしりに何か温かいモノが触れた。
「え?」
見ると女の子が僕のおしりを両手で押し上げていた。
「私も助けるから。……二人で、この崖を登ろ」
「……うん」
いつのまにか目に溜まっていた涙も消えていた。そして、足も動くようになっていた。僕は登る。さっきは一人だったけど、今は二人で登るから、今度は大丈夫。
そして、僕は登り切った。
崖の下をのぞき込むと、女の子の顔が目の前に合った。そして、女の子が笑う。僕も笑う。そして、僕は手を伸ばした。
女の子は僕の手を握る。手がちぎれそうになった。でも、僕は痛いのを我慢して、女の子が崖を登るまでがんばった。
女の子が崖を登ると、僕はその場に座り込んだ。
「ありがとう」
座り込んだ僕に女の子がお礼を言う。僕はそれに笑って答えた。
「……じょしゅのつとめをはたしただけさ」
テレビで見たじょしゅが言っていた言葉を言う。まさか自分でこの言葉を使うなんて思ってもなかったから、ちょっと嬉しかった。
女の子は僕の言葉にきょとんとすると、すぐに僕と同じように笑った。
「そろそろ行こうか」
女の子がそう言って、僕に手を差し出した。
僕は頷くとその手を取った。
もうすこしで夕方になる。でも、目的地はもう目の前だ。
立ち上がった僕たちは、階段の方へと走り出した。
その階段は家の階段よりも長かった。
はじめは走っていた僕たちも、すぐに歩いて登る。
今まで一番しんどかった。
女の子もつかれているのか、階段を上る足がゆっくりになってきている。それでも、僕たちは立ち止まる事なく、階段を上った。
「……ここは?」
登り切った僕たちが見たのは、夕日に染まって、紅く光る神社だった。
僕たちは、その初めて見る神社を歩き回った。ここのどこかにある帽子を探して、僕は女の子の手を握って、二人で探す。
もう夕方だ。帰らないとお母さんに怒られる。でも、冒険を僕たちは最後まで続けたかった。
そして、僕たちは神社の裏へと回った。
「わっ!?」「んっ」
神社の影から出た瞬間、紅い光が僕たちの目に入ってきて。僕たちは眩しくて、目を閉じた。
「……ん」
目をこすって、ゆっくりと目を開く。
そして、僕たちは宝物を見つけた。
「うわぁ……」「…………」
大きな夕日。その赤色が、僕たちが住む街を、真っ赤に染めて、空も、空に浮かぶ雲も、家も、街も全部赤に染めていた。
きれいだった。
こんなすごい景色は初めてみた。
たぶん、女の子も僕と同じ気持ちだと思う。
そう思って僕は女の子の方を見て、呼吸が止まるかと思った。
女の子はずっと前を見ている。そして、その横顔は、太陽の光に輝いていて、僕はさっきの景色よりも、この女の子の方がきれいだと思った。
そして、風が吹いた。
「きゃっ!?」「わっ!?」
強い風だった。僕たちは飛ばされないようにその場にうずくまった。
すぐに風は止み、僕は風が飛んでいった空を見上げた。木の葉が舞い上がっていく。そして、それとは逆に、何かが落ちてきた。
「あれ……」
女の子がそれに気がついて、僕もそれが何なのかわかった。
それはゆっくりと落ちて、僕たちから少し離れた場所に。ポトンと小さな音を立てて地面に落ちた。
僕はそれが落ちた場所へと駆け出し、それを拾い上げた。
赤いリボンがついた麦わら帽子。
女の子も近づいてきた。
僕は振り返ると、手に持った麦わら帽子を女の子へ差し出した。
「はい。……見つかってよかったね」
「……うん!」
僕から麦わら帽子を受け取ると、女の子がこれまで見たことがないほど、とても嬉しそうに
笑って頷いた。
読んでくれてありがとうございます