↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

ここはなにかが欠けている

モテる力を振り絞り

作者: 浮月重月
掲載日:2026/10/07

王国内で騎士となる為には、当然ながら色々なものが必要になる。

制式騎士団や有力貴族配下の騎士団では、物理、魔術の実力に加え、

問題への対応力や政治的な知識、外国語なども必要とされる。

そもそも王立中央学院を卒業していなければ相手にもされない。

つまり単なる腕力だけでは届かないのだ。


では兵士の場合はどうか。

こちらは必要最低限の一般常識と腕力さえあればなんとかなれる。

給金の面で言えば騎士とかなりの開きがあるものの、安定している。

腕力自慢、体力自慢は兵士が現実的な選択だろう。


あるいは冒険者という道もある。

年齢制限こそ一応あるが、兵士よりもなる為の関門はさらに下がる。

なにせ「九歳以上で犯罪歴さえないならよろしい」という職業だ。

しかも一獲千金の機会がある。ごくごくごく一部に限られるが。

兵士には大抵、採用されるための実戦試合がある。

冒険者には、それすらない。


◆


実際にはそんな事もないのだが。


戦う職業はかっこいい!かっこいいのだから女の子にモテる!

と考える少年達は結構多い。


うん、実際にはそんな事もないのだが。


孤児院出の子供達は、当然ながら自由に出来る金銭には乏しい。

よって将来の為に冒険者見習いに登録する場合が結構多い。

彼ら彼女らは置かれた境遇のせいで割と現実を見ている。


しかし真っ当な保護者がいる子供達には、そうでもないのがいる。

将来の為、とは言えるだろう。目的が方向音痴というだけで。

冒険者になって活躍すれば、絶対モテるのだ、と。


誰の未来も保証などされてはいない。

活躍してモテる未来だって、おそらくどこか知らないがあるだろう。

冒険者組合に意気揚々と乗り込んできたこの少年にだって。


「モテたいので冒険者になります!登録してください!」


開口一番、受付嬢に元気よく話しかけた。

これは恋愛感情ではなく、承認欲求というものなのだろう。

受付嬢も慣れたもので「ああ、またこういうのが現れた」という顔。

もはや日常茶飯事で表情も引きつる事すらない。


「わかりました。ではこちらの用紙へご記入をお願いします。

 不明な点があれば遠慮なくご質問くださいね」


と、冒険者証の申込書を手渡す。


「パート、性別男、年齢九歳、職種は戦士で武器は小剣ですね。

 現住所は王都内の…と」


受付嬢は書かれた申込書に不備や抜けがないか確認していく。


この少年パートは小剣を武器として使うとの事だが持ってはいない。

まあ見習いの頃から自前の武器を持てるような者は限られている。

実家が裕福であるとか、あるいは先輩冒険者から譲られているとか。

彼はたった一人で来ている。近くに知り合いらしきものも見えない。

多分思い込んだらまっしぐらという性格なのだろう。


申込書を確認し、冒険者証がパートへと手渡される。

実績など存在しないので、当然見習いからである。

それでも誇らしげに笑みを浮かべるパート。


微笑ましく見守っていた受付嬢だったが、次の一言で固まる。


「じゃ、ドラゴンを倒したいのでどこにいるか教えてください!」


◆


この世界には、竜(ドラゴン)と呼ばれる巨大かつ強力な生物が存在する。

ラプターやワイバーンといった「亜竜」と呼ばれる劣等種でさえ、

上級冒険者の五つ星、六つ星でなければ、その討伐は難しい。


まして真竜とされるものは、騎士団が対応するような存在である。

個人でこれを何とかしてしまうような人物など、そうそういない。

…いや、騎士団長や副騎士団長、元騎士団長にはいるのだが。

いずれにせよ冒険者が対応するような存在ではない。


さらに言えば、亜竜ですら王国では滅多に目撃証言がない。

いるだろう、とは言われているが、見かけたらそれは大問題となる。


そうした基礎知識をこんこんと、丁寧にパートへ伝える受付嬢。

キラキラと輝いていたその眼は落胆と共に少しずつ光を失っていく。

説明が終わると、彼は「はあーっ」とため息をついてこう述べる。


「つまりドラゴンはこの辺にいないんですね。

 せっかく冒険者になったのに倒せないのかあ。

 困ったなあ、モテないぞこれじゃあ」


いや、武器も持たず魔術も使えない子供がどうやって倒すのよ。

ツッコミを入れない受付嬢の自制心は大したものである。

そして彼はあくまでモテる事が目的らしい。


そもそも大型魔獣討伐は見習いには受けられない。

せめて中級の三つ星まで上がらないと同伴もさせられない。

説得というか言い聞かせというか、受付嬢は話を続けた。


◆


この一件からしばらく経ったある日。

ある十歳の少年が偶発でワイバーン単独討伐をしてしまう。


その少年が十名以上の美少女に囲まれていたのを目撃してしまい、

パートはさらにモテる冒険者への期待を膨らませるのだった。

「自分も十歳になったらワイバーンを倒すぞ!」と。


まあ、パートはまだ見習いだし、武器も持っていないので、

そこから何とかしないといけないのだが。

ある十歳の少年、この時中級の三つ星。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。