第七話 レイトショーのお誘い
ベーカリーに付き合って一周間と経たない間に、また永山さんに誘われた。
今度は映画だ。
「ちょっと変な時間の上映で。誰も付き合ってくれなくて困ってるんです」
遅い時間の上映。たしかにレイトショーは付き合ってくれる人は少ないだろう。
ちょっと気になっていた作品だし、悪くないな、と思っていたら、永山さんは無邪気に続けた。
「田奈さんなら、観終わった後、無理に感想言わなさそうだし」
その気持ちがわかってしまうのが、なんか悔しい。
「あ、でも時間が時間なんで、無理なら大丈夫なんで」
「大丈夫です。行きます」
思わずその場で答えてしまった。らしくないな。
「ぁ……ありがとうございます!」
即答されると思っていなかったのか、永山さんはワンテンポ遅れて笑った。
その笑顔に、私の胸は重くなる。
レイトショーは人がまばらで、小腹を満たすために買った映画館のフードを口にしても、音が気にならなかった。
映画の本編が始まるまでに、私たちは静かにホットドックやチキンを食べ終えた。
お手拭きで口の端を拭いたら、ちょうど上映時間になった。
そこで私は思い出した。
この映画はアクションがメインだが、恋愛要素も多い作品だということに。
横目で永山さんを見る。
何も気にせず映画を楽しんでいる横顔が、こちらに向く気配がないことに、私は安心して映画に集中できた。
大丈夫だ。
誰に言うでもない言葉を心の中で呟いた。
映画が終わる頃には終電が間近になってしまい、私たちは小走りしながら駅へ向かい、慌ただしく短く挨拶をして解散した。
「じゃ、今日もありがとうございました! 気をつけて帰ってくださいね」
「こちらこそありがとうございました、そちらもお気をつけて」
お互いに別の電車に乗って、帰る。
終電に間に合ったことよりも、同じ電車でなくてよかった。
私はため息をつきながら電車の吊革を握った。




