第三話 餅は餅屋に
店長の助言通りに、ドレスコードは無いけれど、カジュアルな格好では行けないレストランに行く服装について、私は休憩所にいた女性スタッフに相談した。
「無難なのはワンピースじゃない?」
もうすぐ高校生になる子を持つ矢向さんは、おにぎりを頬張りながら他の女性たちに目配せをした。
「田奈さんはいつもパンツスタイルだからスカートのイメージ無いですね。セットアップのパンツスタイルでも格好良くていいと思いますよ!」
大学生バイトの栢山ちゃんは普段着慣れない服だと落ち着かないと持論を交えた。
「まず田奈さんの手持ちの服はどんな感じなんですか?」
真面目な意見を切り出してきたのは、私と同じフリーターで年下の長後さんだった。
「えっと、カジュアルで暗めの色のトップスが多くて、シンプルな無地が多いかな。きれいめな服は冠婚葬祭のものばかりで、総レースの紺色のトップスしか使えそうにない……」
「普段出勤してくる服装の傾向から考えたら、こういった服装はどうです? 手持ちで再現できなかったら、ここのブランドなら手頃な価格でそろえられますよ」
少しの情報で、長後さんはスマホで参考になるブランドサイトのコーディネートを調べて、私に見せてくれた。
これなら持っている服で再現できる。私は思わず、すごいと呟いた。
「この服装なら靴はパンプスならなんでも合いますし、田奈さんが出勤で履いてるおしゃれスニーカーでも合いますよ。ピアスやアクセサリーもあれば、十分じゃないですか?」
普段あまり喋らない、クールなイメージの長後さんの的確なアドバイスに、私も矢向さんも栢山ちゃんも、つい拍手をしてしまった。
「すごいわぁ、さすが長後ちゃんね!」
「アパレルと兼業してると違いますね!」
「ありがとう長後さん。これで着ていく服の悩みが解決したよ」
謎の拍手に長後さんは引き気味だったけど、少しの照れを隠すようにスマホを持って退席してしまった。
仕事でも口数少なく淡々としている長後さんの可愛らしいところを見れた気がして、私は緩む口元を手で隠しながら矢向さんと栢山ちゃんをちらりと見た。
二人とも私と同じ顔をしていて、思わず吹き出してしまった。
ともあれ、これでアフタヌーンティーに着ていく服は決まった。
家に帰ったらさっそく服をあわせてみようと、矢向さんと栢山ちゃんにお礼を言ってから私も休憩室を後にした。




