009 おばあちゃんと村
都会から村に帰ってきて数日。
僕は相変わらずゴーレムで遊んでいた。
まだまだ首も座ってない赤ちゃんだからね。やれることが限られるのだ。
旅の途中で僕がゴーレムを創れることを正式に両親の前で見せちゃったし、もう隠す必要もないよね。
そんなわけで、僕は人前でもゴーレムで遊んでいた。
ゴーレムって便利なんだ。動けない僕の代わりに動いてくれるからね。最近はこの家にいるお手伝いさんが寝室の掃除をする時も手伝っているくらいである。
とはいえ、これはゴーレムがフィギュアサイズの小ささだから、みんなが心を許してくれているだけだと思う。
僕が思い出すのは、都会への旅で御者を務めてくれたおじさんが、僕のゴーレムを見て怯えたような表情をしていたことだ。
まぁ、いきなり三メートルくらいもあるゴーレムが動き出したら怖いと思う。それは仕方がない。
でも、この世界には人間を襲うモンスターの存在もあるみたいだし、ゴーレムの力を使うこともあるだろう。その時に人々を怖がらせてしまうのは僕の本意ではない。
なんとかこの集落の人々にくらいはゴーレムに慣れてほしいなぁ。たぶん、たくさん使うし。
そんなことを考えている僕は今、両親の寝室よりも狭い部屋の中で、おばあちゃんに抱っこされていた。
おばあちゃんといっても、四十代半ばくらいかな? けっこう若い。
おばあちゃんは嬉しくて堪らないと言わんばかりにニコニコで僕の頭を撫でる。
おばあちゃんはとにかく僕の世話を焼きたがった。恥ずかしい話だけど、僕はまだ自分でトイレに行けない。だからおむつをしているのだけど、そのおむつを替える時だってニコニコだ。
なぜおばあちゃんが僕のお世話をしているのかというと、お母さんがダウンしているからである。といっても、病気じゃないと思う。単純に疲れてしまったんだと思う。
僕を出産してすぐに一週間以上の馬車の旅だ。それは体力を削られるよね。仕方がない。
おばあちゃんは、僕がかわいくて堪らないと言わんばかりに僕と遊んでくれる。
おばあちゃんはおしゃべりが好きなのか、僕にずっと話しかけてくれた。ひょっとしたら、昔話でもしてくれているのかもしれない。
でも、そのおかげでちょっとずつ僕はこの世界の言葉のニュアンスを覚え始めていた。
まぁ、まだ何を言っているのかわからないけどね。
言葉はまだ全然わからないけど、おばあちゃんは嬉しそうに話すのだ。
僕が前世、日本にいた時は、おじいちゃんやおばあちゃんと会ったことはない。お父さんと仲が悪かったらしい。
今さら思う。子どもに暴力に振るうような奴だったからね。やっぱりまともじゃなかったのだろう。
でも、前世のお父さんも最初からまともじゃなかったわけじゃない。なにせ、ゲーム機と『ガード・ゴーレム』を買ってくれたのはお父さんだったしね。
今思うと、僕は家族がまだまともだった時代を無意識に求めて、『ガード・ゴーレム』をプレイしていたのかもしれない。
そんなことを思っていたら、おばあちゃんが膝の上に乗せていた僕を抱っこして立ち上がった。
そのまま部屋の外に出ると、長い廊下を歩いて玄関から外に出た。
途端に香ってくるのは、緑の青臭い匂いと土の香りだ。
目の前に広がるのは、大きめの円形広場である。その周囲を家々が囲み、そのさらに外側には畑や木の板で作った壁が見えた。
この集落、村? は、木の板で囲った空間で自給自足の生活をしているみたいで、畑や井戸など、基本的なものが揃っている。
でも、文明レベルが低いのか、プラスチックやガラス製品は見当たらなかった。
そんな村の中を、おばあちゃんが案内してくれる。
村の人々は、おばあちゃんと僕を見るなり敬礼や頭を下げたりしていた。やっぱり、僕の家は村の中では偉い家らしい。たぶん、村長とか?
村の端から端まではそれなりにあるけど、村自体はそんなに広いわけじゃないと思う。
でも、そんな村の中でたくさんの人が暮らしている。
農作業に精を出す人々、鍛冶師や薬屋なんかもあるみたいだ。大工たちは村を囲う木の板の修繕をしていたり、新しく見張り台なんかを立てている。
村を囲う木の板の内側には石を積み上げた壁もあり、いざという時は、その石の壁の上に立って戦うのだろう。
いつ襲撃があってもいいようにか、武装しながら働いている者たちもいた。
木の壁で村を覆っていることからわかっていたけど、この村は何者かに頻繁に襲われているらしい。
思い出すのは、旅の途中で襲ってきた豚頭やゴブリンたちのことだ。あんなモンスターがいつ襲ってくるともしれない所で暮らしているのか。
僕が大好きだったゲーム『ガード・ゴーレム』は、タワーディフェンスゲームだった。文字通り味方の陣地を守るために兵力を整えていくゲームだ。
村を守りながら、発展させる。そのために僕の知識が役立つ日もくるかもしれないね。
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