021 お支払いは僕もちで!
「その証拠というわけじゃないが、デニスも見た通り、村人が不自然に減っていたり、怪我人がいるわけでもなかっただろ? オレたちも驚いているんだが、全部、クラークが一人でやったことなんだ」
「は、はあ……。にわかには信じられませんが、信じる他なさそうですね……」
父上の言葉に、デニスはもう疲れたと言わんばかりに答える。
まぁ信じられない気持ちもわからなくないけど、本当なんだから仕方がない。
というか、話をスムーズにするためにお父さんたちがゴブリンを倒したことにしてもよかったんだけど、お父さんは素直だったね。
「というわけだ。実は似たような箱があと五つもある。だから、支払いは心配しなくてもいいぞ?」
「それはありがたいですな……」
ははっと疲れた笑いを浮かべるデニスだった。なんだか一気に十歳くらい老けたように見えるくらいだ。
「それと、デニスには頼みたいことがある」
「はい? 何でございましょう?」
「我がランドール男爵家が抱えているトバイアス辺境伯への借金の返済と、ランドール村への移住者の募集だ」
「借金の返済でしたら請け負うことも可能ですが、移住者の募集ですか? せっかく村が広くなったのにですか?」
「うむ。今日、クラークの力を見て確信した。ランドール村は、信じられないほどの早さで発展していくだろう。その時、村の中に住む者がいないというのは悲しいからな。それに……」
そこでいったんお父さんは口を閉ざす。
そして、なんだかやるせない顔で再び口を開いた。
「今まで、このランドール村からトバイアスに職を求めて旅立った若者は大勢いる。そういえば聞こえはいいが、その実は口減らしだ。彼らがもし望んでくれるなら、再びこのランドール男爵領のために力を貸してほしい」
口減らしか……。日本では日常では聞かなかった言葉だけど、その意味は知っている。
やっぱり、村の中で生活できる人々の数には限りがあるということだろう。
トバイアスというのは、ずいぶん昔に僕も行ったことがある都会だろうか?
自分で望んで都会に行くのは応援したいけど、行きたくないのに行かざるをえないというのは悲しいことだと思う。
成功して、安定した暮らしをしているならいいんだけど、生活に困っているなら、帰ってきてほしい気持ちはあった。
だって、お父さんの言う通り、僕はこれからも村を発展させるつもりだ。そのスピードは、たぶんお父さんが考えているよりも早いと思う。
その時、村の中に村人がいないというのは悲しいからね。
「男爵様……。かしこまりました。必ずや」
「助かる」
◇
その後の商談はスムーズに終わった。
今頃は、お母さんとおばあちゃんがデニスから品物を受け取っていることだろう。
チラッと見えたけど、大きなベーコンの塊が見えた。僕はまだ食べられないけど、とてもおいしそうだったよ。
話では、今日は村人総出の宴会になるらしい。日頃の疲れを吹き飛ばすようだ。たぶん、あのベーコン塊も切り分けられて村人たちに食べさせるのだろう。
そのために僕の集めたお宝が使われるのは、なんだか誇らしい気分がした。
僕も村のみんなが大好きだからね。
そんな僕は、お父さんに肩車されながら工事現場に来ていた。
工事現場。ちょうど木の壁を抜いている最中らしい。村人総出で鍬などで土を掘り返しているところのようだ。
「やっているようだな!」
「領主様! クラーク様も!」
「今やっと二本抜けたとこでさあ」
「地中深くに刺さってるんで、抜きにくいのなんのって」
村人たちはがんばっているけど汗を垂らしてがんばっているみたいだけど、人力だと時間がかかるよね?
それに、とっても大変そうだ。僕も手伝おう。
「てい!」
僕は右手に生み出した土をぺショッと木の壁の近くに投げる。
「ンゴオオオオオオオッ!」
土はどんどん周囲の土を吸収して大きくなっていく。それは木の壁の刺さっている部分の土も巻き込んで、大きく膨れ上がる。
できあがったのは、毎度お馴染みのノーマルゴーレムだ。
ノーマルゴーレムって、能力が平均的だから使いやすいんだよね。消費するMPも少ないし。
「うおおおおおおおおお⁉」
「土の巨人!」
「すっげー!」
「ありがたや、ありがたや……」
「おらも拝んどこう」
ノーマルゴーレムの登場に、なぜか一斉に拝みだす村人たち。なんだか怪しい宗教みたいで怖いと思うのは僕だけだろうか?
「あいあ!」
でも、ノーマルゴーレムができたからにはもう安心だ。僕が指示を出すと、ノーマルゴーレムが、ズゴッと木の壁を一気に引っこ抜く。
「おおおお!」
「すげー!」
「おらたちがあんなに苦労してたのに!」
「きっとおらたちのためにクラーク様がお力を貸してくだすったんだ!」
「クラーク様、ありがとうございやす!」
「ありがたや、ありがたや……」
また拝まれちゃった……。
変な宗教とかできないといいけど……。
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