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018 始動!

「たぁ! たぁ!」


 僕は一生懸命に隣に座ったお父さんに向けて手を伸ばす。


「あらあら、どうしたの、クラーク?」


 お母さんが僕が膝の上から落ちないように僕を優しく抱きとめる。


「クラーク……。ごめんな、怖かったよな。もう怒っていないよ」


 お父さんも僕がいたことにいて気が付いて、すまなそうにそう言って僕の頭を撫でる。


 でも、僕はお父さんを諫めたくて声をあげたわけじゃない。


 僕だって怒っているのだ。その辺境伯って人に。


 だって、あんまりじゃないか。がんばった結果がなにもないなんて。


 僕は、がんばった人には報われてほしいと思う。


 お父さんも、お母さんも、おばあちゃんも、村のみんなだって貧しさの中で命懸けでモンスターと闘ってきたんだ。


 その結果が報われないなんて嘘だ!


 だから!


 もう辺境伯なんかを頼らなくてもいいように。今こそ恩返しの時! 僕が力を使う番だ!


「てい!」


 僕は右手の中に魔法で生み出した土を机の上にぶちまける。


「クラーク? いけませんよ」

「てい! てい!」


 お母さんに右手を押さえられてからは、左手で机の上に土をぶちまける。


「どこから土が……。なッ⁉」


 不思議そうな顔をするデニス。


 しかし、その顔は次の瞬間には驚愕に染まることになる。


 僕が土を操ってみせたからだ。


 風もないのにひとりでに意志を持ったように動く土は、確かに驚くかもしれない。


 でも、それで終わらないのが僕だ。


「これは……!」

「もしかして、この村ですか?」


 びっくりするお父さんと、僕に訊いてくるお母さん。


「あい!」


 お母さんに言った通り、僕が創ったのはミニチュアサイズのこの村だ。村を囲う木の壁まで完璧に再現できていると思う。


「いや、えっ⁉ これは何なんです⁉ こんな……!」


 椅子を蹴飛ばすように立ち上がって、大袈裟なくらい混乱しているデニス。


 デニスは僕の力を見るのは初めてだし、僕の力は普通の魔法とは違うようだし、仕方ない部分もあるかもしれない。


「これが、クラークのギフトだ」

「ギフト⁉」


 父上の言葉に仰け反るデニス。


 ギフトというのは僕にも実はあまりよくわかっていないけど、僕の力はそういうことになっているらしい。


 まぁ、名前なんてどうでもいいんだ。


 この力で、お父さんたちの役に立てるかどうかが僕のすべてなんだから。


「しっかし、よくできているな。すごいぞ、クラーク」

「にひひ」


 お父さんに頭を撫でられて、無意識に笑みが漏れてしまった。


 でも、本番はここからだ。


「てい!」


 僕が手を動かすと、ミニチュアの村の外でモコッと盛り上がる土の塊。それはうにょうにょと動くと、まるで妖怪のぬりかべのように手足の生えた壁になった。


 その名も壁ゴーレム。名前の通り、敵の侵攻を防ぐ壁になってくれるゴーレムだ。機動力は最低ランクだけど、耐久力が高く、頼れる防壁である。


「壁の人形……? まさか……!」


 お父さんにはもう僕のやりたいことがわかったらしい。


 僕はお父さんに答え合わせをするように次々と小さい壁ゴーレムを創って、一回り大きく村を囲ってみせた。


「たしかにこれなら……。クラーク、いけるか?」

「あい!」


 僕はお父さんの問いかけに手を上げて応える。


「いやいやいやいや! 待ってください! え? 先ほどから普通に話してますけど、クラーク様って言葉がわかるんですか? いえ、それよりも、この壁って何なんです⁉」


 僕とお父さんはわかり合えたけど、デニスは大混乱だった。


「まあ、落ち着け、デニス」

「は、はあ……。申し訳ありません、取り乱してしまって……」

「このことでデニスを罰することはない。気持ちはわからんではないからな」


 そう言って口元を歪めるお父さん。ヒゲでわかりにくいけど、たぶん苦笑しているんだと思う。


「デニス、驚くのも無理はないが、クラークはもう言葉がわかるらしい。そして、これは先ほど言い忘れていたんだが、クラークのギフトは土を操ることだ。まあ、これについてはオレたちにも把握しきれないところがあるんだが……。今回、クラークは自分が土を操って壁を作ると言ってるのだろう。どれほどの強度があるのかは確かめないといけないが、もし、クラークの作る壁が通用するなら、オレたちは領土を広げることができる!」


 そう一気に捲し立てるように言ったお父さん。


「ん!」


 僕はお父さんに同意するように頷く。


「はえあー……」


 僕が頷くのを見て、もう言葉にもならない呟きを漏らして、力が抜けたようにストンと椅子に座ったデニスだった。


 デニスにとって、お父さんの語った言葉はそれほど衝撃的だったらしい。


「クラークは本当にすごいですねー」

「たぁーい!」


 僕はお母さんに両手を掴まれて、導かれるようにダンスしていた。僕はまだ自分で踊ることができないので、面白かった。なんとなく、前世で見た飼い主に両手を掴まれて踊らされている猫を思い出した。あの猫たちもこんな気持ちだったんだろうか?

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