016 お宝の使い道
「いいか、クラーク?」
濃い赤髪で長髪のヒゲ面な男。まるで山賊みたいな見た目だけど、これが僕のお父さんだ。
お父さんは大剣が大好きで、暇さえあれば庭で大剣を振っている。その動きはとても洗練されていて、僕がゴーレムを操る時に参考にさせてもらっているくらいだ。
そんなお父さんだけど、髪の隙間から見える緑の瞳は優しい光を帯びていた。
山賊みたいな見た目だけど、とても優しいお父さんであることを僕はよく知っている。
そんなお父さんが、僕を寝室のお父さんとお母さんのベッドに座らせた。僕の前には、これまで僕がゴーレムを動員して奪ってきたお宝が並べられている。
僕を見るお父さんとお母さん、おばあちゃんの後ろにはまだ箱が並んでいて、こんなにお宝を回収したんだなぁと感慨深い気持ちになった。
でも、どうして三人は真剣な表情で僕を見ているのだろう?
あれかな? 取りすぎだって怒られるとか?
でも、持っていたのはこの村を襲うかもしれないゴブリンや豚頭だし、持ち帰った時はあんなに褒めてくれたのに、なんで今さら?
「これは真剣な話だ」
そう言って、お父さんはベッドの上に置かれたお宝を二つのグループに分けた。だいたい半分半分くらいの分け方かな?
ちなみに、僕はこの生まれてからの一年くらいでかなりの言葉を覚えた。まだわからない単語も多いけど、日常会話くらいならたぶん大丈夫だろう。
まぁ、僕の喉がまだ発達していないので、発音はできないから、会話はできないんだけどね。
「クラークの土人形が持ってきた財宝だが、その半分をクラーク個人のものにする」
お父さんは右のお宝を指差してそう言った。
「そして、残りの半分は村のために使わせてもらう。わかるか?」
今度は左のお宝を指差して、真剣な表情で僕を見定めるように、そう問うてくるお父さん。
村のため。村人のことが大好きなお父さんの言うことだ。本当に村のためにすべてを使って、自分の取り分なんて最初から頭にないのがわかる。
そして、僕個人のものになるお宝。これも本当に僕のために取っておくはずだ。
不器用だし、見た目が山賊みたいだけど、約束を破ることなんて最初から頭にない。
まぁ、そんなお父さんだから僕は好きなんだけどね。
「あなた、さすがにクラークもまだわからないのでは?」
「アドルフも言葉を覚えたのは三歳のことだ。一歳の子には無理ってもんだ」
僕をそう心配そうに見ながら、お母さんとおばあちゃんがお父さんに苦言を呈している。
普通に考えればそうだよね。まだ一歳の赤ちゃんにこんな真剣な話はしないだろう。普通の赤ちゃんなら、言われてもわからないだろうしね。
でも、僕はもう言葉を覚えているスーパー赤ちゃんである。もちろん、お父さんが何を言っているのかわかるし、その意図もわかる。
普通なら、僕に確認を取ることなくお宝を使ってしまうだろう。むしろ奪い取られることの方が多いんじゃないかな?
でも、お父さんたちはそれをよしとしなかった。
だから、言葉がわかるかわからない赤ちゃんの僕にも、ちゃんと説明してくれるし、僕の取り分をちゃんと残してくれる。
まぁ、普通なら僕が言葉がわかるまで待つところなのだろうけど、村を見て回った僕は知っている。この村にはまるで余裕がない。
いつモンスターに襲われるかわからない村だ。壁の補修や武術を磨いたり、武器を生産したり、生き残るのに精いっぱいで、貯蓄してる暇なんてないだろう。
なのに、塩などの生活必需品は買わないといけない。
切羽詰まってるんだ。この村の現状は。
だから今、僕に訊いている。
この思いに、僕は応えたい。
「あぅ」
僕は固いベッドの上でハイハイすると、ベッドの上に置かれた財宝の前にやってきた。
「てい!」
そして、右側の置かれたお宝を全部左側に移動する。
「クラーク……?」
「まあ⁉」
「まさか⁉」
お父さん、お母さん、そしておばあちゃんが三者三様に驚いてみせる。
そう。右側に置かれたのは僕個人の取り分と言われていたものだ。僕はそれをすべて左側に移してみせた。
その意味すること。それは、僕の分はいらないから、全部村のために使ってほしいという意思表示に他ならない。
「クラーク……、お前って奴は……! オレの言うことがわかっているのか?」
「あい!」
僕はお父さんの言葉に頷いた。
「すごいわ! ねえ、あなた? これはすごいことよ!」
「驚いたわ。まさか、こんなことがあるなんてねえ……!」
驚きを通り越して、もはや驚愕の表情をするお母さんとおばあちゃん。
お父さんは、優しく僕を抱きしめる。
「クラーク、お前は最高の息子だ! オレはお前の父親になれたことを誇りに思う!」
「わたくしもです。わたくしもクラークの母親であることを誇りに思います!」
「ノブレスオブリージュ。まさか、こんなにも幼い頃からそれを理解しているとはねえ……。今は亡きわたくしの夫も誇りに思うことでしょう。もちろん、わたくしもです」
「えう!」
みんなは褒めてくれるけど、僕自身はそんなにすごいことをやったとは思っていない。むしろ、今までの大変さ以上に幸せになってほしい。そう思った。
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