表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

016 お宝の使い道

「いいか、クラーク?」


 濃い赤髪で長髪のヒゲ面な男。まるで山賊みたいな見た目だけど、これが僕のお父さんだ。


 お父さんは大剣が大好きで、暇さえあれば庭で大剣を振っている。その動きはとても洗練されていて、僕がゴーレムを操る時に参考にさせてもらっているくらいだ。


 そんなお父さんだけど、髪の隙間から見える緑の瞳は優しい光を帯びていた。


 山賊みたいな見た目だけど、とても優しいお父さんであることを僕はよく知っている。


 そんなお父さんが、僕を寝室のお父さんとお母さんのベッドに座らせた。僕の前には、これまで僕がゴーレムを動員して奪ってきたお宝が並べられている。


 僕を見るお父さんとお母さん、おばあちゃんの後ろにはまだ箱が並んでいて、こんなにお宝を回収したんだなぁと感慨深い気持ちになった。


 でも、どうして三人は真剣な表情で僕を見ているのだろう?


 あれかな? 取りすぎだって怒られるとか?


 でも、持っていたのはこの村を襲うかもしれないゴブリンや豚頭だし、持ち帰った時はあんなに褒めてくれたのに、なんで今さら?


「これは真剣な話だ」


 そう言って、お父さんはベッドの上に置かれたお宝を二つのグループに分けた。だいたい半分半分くらいの分け方かな?


 ちなみに、僕はこの生まれてからの一年くらいでかなりの言葉を覚えた。まだわからない単語も多いけど、日常会話くらいならたぶん大丈夫だろう。


 まぁ、僕の喉がまだ発達していないので、発音はできないから、会話はできないんだけどね。


「クラークの土人形が持ってきた財宝だが、その半分をクラーク個人のものにする」


 お父さんは右のお宝を指差してそう言った。


「そして、残りの半分は村のために使わせてもらう。わかるか?」


 今度は左のお宝を指差して、真剣な表情で僕を見定めるように、そう問うてくるお父さん。


 村のため。村人のことが大好きなお父さんの言うことだ。本当に村のためにすべてを使って、自分の取り分なんて最初から頭にないのがわかる。


 そして、僕個人のものになるお宝。これも本当に僕のために取っておくはずだ。


 不器用だし、見た目が山賊みたいだけど、約束を破ることなんて最初から頭にない。


 まぁ、そんなお父さんだから僕は好きなんだけどね。


「あなた、さすがにクラークもまだわからないのでは?」

「アドルフも言葉を覚えたのは三歳のことだ。一歳の子には無理ってもんだ」


 僕をそう心配そうに見ながら、お母さんとおばあちゃんがお父さんに苦言を呈している。


 普通に考えればそうだよね。まだ一歳の赤ちゃんにこんな真剣な話はしないだろう。普通の赤ちゃんなら、言われてもわからないだろうしね。


 でも、僕はもう言葉を覚えているスーパー赤ちゃんである。もちろん、お父さんが何を言っているのかわかるし、その意図もわかる。


 普通なら、僕に確認を取ることなくお宝を使ってしまうだろう。むしろ奪い取られることの方が多いんじゃないかな?


 でも、お父さんたちはそれをよしとしなかった。


 だから、言葉がわかるかわからない赤ちゃんの僕にも、ちゃんと説明してくれるし、僕の取り分をちゃんと残してくれる。


 まぁ、普通なら僕が言葉がわかるまで待つところなのだろうけど、村を見て回った僕は知っている。この村にはまるで余裕がない。


 いつモンスターに襲われるかわからない村だ。壁の補修や武術を磨いたり、武器を生産したり、生き残るのに精いっぱいで、貯蓄してる暇なんてないだろう。


 なのに、塩などの生活必需品は買わないといけない。


 切羽詰まってるんだ。この村の現状は。


 だから今、僕に訊いている。


 この思いに、僕は応えたい。


「あぅ」


 僕は固いベッドの上でハイハイすると、ベッドの上に置かれた財宝の前にやってきた。


「てい!」


 そして、右側の置かれたお宝を全部左側に移動する。


「クラーク……?」

「まあ⁉」

「まさか⁉」


 お父さん、お母さん、そしておばあちゃんが三者三様に驚いてみせる。


 そう。右側に置かれたのは僕個人の取り分と言われていたものだ。僕はそれをすべて左側に移してみせた。


 その意味すること。それは、僕の分はいらないから、全部村のために使ってほしいという意思表示に他ならない。


「クラーク……、お前って奴は……! オレの言うことがわかっているのか?」

「あい!」


 僕はお父さんの言葉に頷いた。


「すごいわ! ねえ、あなた? これはすごいことよ!」

「驚いたわ。まさか、こんなことがあるなんてねえ……!」


 驚きを通り越して、もはや驚愕の表情をするお母さんとおばあちゃん。


 お父さんは、優しく僕を抱きしめる。


「クラーク、お前は最高の息子だ! オレはお前の父親になれたことを誇りに思う!」

「わたくしもです。わたくしもクラークの母親であることを誇りに思います!」

「ノブレスオブリージュ。まさか、こんなにも幼い頃からそれを理解しているとはねえ……。今は亡きわたくしの夫も誇りに思うことでしょう。もちろん、わたくしもです」

「えう!」


 みんなは褒めてくれるけど、僕自身はそんなにすごいことをやったとは思っていない。むしろ、今までの大変さ以上に幸せになってほしい。そう思った。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ