010 深夜の襲撃
それは、深夜のことだった。
「んにゅ?」
ガチャガチャという音に目を覚ますと、いつも両親に挟まれて僕は眠っているのに、僕の隣に両親の姿はなかった。
最近座り始めてきた首を巡らせて見渡すと、両親が武装しているのが目に入った。お父さんは鎧を身に着け、大剣を背負っているし、お母さんは魔法使いのような恰好で杖を握りしめている。
どうしたんだろう、こんな夜に?
窓は塞がれていて、外の様子は見えない。でも、なんだかガヤガヤと騒がしい。怒声のようなものも聞こえる。
大人数の村人たちによるケンカだろうか?
それにしてはなんだかおかしい気がする。
まるで戦っているかのような――――。
お父さんがお母さんに声かけると、お母さんは最後に僕の方に向かってきた。
何かを呟くお母さん。でも、僕にはまだこの世界の言葉がわからない。
でも、心配しないでと言っているような気がした。
それから、お母さんは僕の頭を撫でると、キリッとした表情でお父さんに続いて部屋を出ていく。
武装していたということは、お父さんもお母さんも戦いに行くのだろう。
でも、こんな夜に?
なんだかすごく胸騒ぎがする。
「ん!」
僕は居ても立ってもいられずに、寝室の棚に飾られていたゴーレム人形たちを総動員する。
まず普通のノーマルゴーレムの上にさらにノーマルゴーレムを乗せて、ゴーレムの梯子を作る。そこを走らせるのは、まるで甲冑を纏ったケンタウロスのような見た目のキャバリエゴーレムだ。
キャバリエゴーレムは、その見た目の通り、速く移動することができる。村の中を見て回りたい今はこれ一択だね。
僕はまるでキャバリエゴーレムに憑依するようにキャバリエゴーレムの視界を得ることに成功する。
そのままキャバリエゴーレムを操作して木窓を少しだけ開けると、キャバリエゴーレムは地面に降り立った。
おばあちゃんに何度か案内されて、僕は村の地図が頭に入っている。迷うことはないだろう。
そんなことを思いながら村の広場に出ると、いくつも松明の火が並び、村の中が明るく照らし出されていた。その中を、武装した村人が走っている。
どうやら、村の外壁の方に向かっているらしい。僕も外壁に向かってみよう。
しかし、村人たちは男も女もみんな武装している。物々しい雰囲気だ。怒声や悲鳴などで溢れている。
分厚い木の板を地面に挿しただけの外壁。そこにたどり着くと、まるで獣の鳴き声のような音が聞こえてくる。
よく見れば、村人たちが組まれた足場に乗って、必死に槍や弓で何かに応戦しているようだった。
ひょっとして、モンスターに襲われているんだろうか?
そんな僕の疑問に答えるように村の中に矢が降ってきた。
降ってきた矢は十本もないくらいだった。
でも、運が悪い村人に命中したらしい。
肩から矢を生やした村人が、肩を押さえてうずくまっている。
そこに現れたのは、なんとおかあさんだった。
おかあさんは無理やり矢を引っこ抜くと、杖の先を負傷した村人に向ける。
杖の先から緑色の光の粒子が走る。
すると、うずくまっていた村人がお母さんに頭を下げ、肩の調子を確認するように負傷したはずの肩を回していた。
ひょっとして、回復魔法?
まぁ、僕がゴーレムを創れるんだし、回復魔法があってもおかしくないか。
その時、お父さんの声が聞こえてきた。
おとうさんも足場の上に登って村人たちを鼓舞しているみたいだ。
もっと情報が欲しい。
僕はキャバリエゴーレムに指示を出すと、ひっそりと村人たちの足元を縫うように走ると、足場を伝って防壁の上に飛び乗った。
そこから月明りに照らされて見えるのは、ゴブリンといつか見た豚頭の姿だ。他にもオオカミに乗った槍を持つゴブリン、弓を持ったゴブリンの姿も見える。
木でできた防壁を壊そうと、豚頭の巨人が丸太のような棍棒で壁を殴りつけると、ぐらぐらと防壁が揺れた。
そんな豚頭の行為を止めるために、村人たちが長い槍で応戦している。
弓を構えたゴブリンには、弓で応戦して率先で倒そうとしているみたいだ。
その状況を見て、僕は思う。
たぶん、この戦闘は何度も繰り返されたものなのだろう。村人たちは自分が何をすればいいのかわかっている感じで慣れているし、木の防壁の表面を見てもいくつも傷が付いていて歴戦の風格を醸し出している。
今まではそれで大丈夫だったかもしれない。
このまま戦闘していれば、たぶん勝てるだろう。
でも、木の防壁はいつまでもそこにあるわけじゃない。消耗していく。そして、木の防壁の後ろには村がある。この木の防壁が破られれば、村が戦場になってしまう。
村の家々には子どもたちがいる。みんな不安を抱えてこの戦闘の勝利を、肉親が無事に帰ってくることを祈っているだろう。
なら、木の防壁はできる限り温存するべきだろう。
出しゃばるのはよくないけど、僕だってお父さんやお母さんのお手伝いをしたいんだ。
僕は迷ったけど、自分の力を行使することを決めた。
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