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予知夢の巫女

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2025/09/27




 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 世界の希望たる存在が、亡骸になって大地に横たわっているのは。




 新しい夢を見た。


 今まで同じ夢ばかりだったのに。


 今日は新しい夢を見たのだ。


 未来が変わったのだろう。


 私は、旅の仲間たちに夢の内容を伝えた。


 仲間たちは積極的に話し合い、夢の内容をかえるための努力をしていく。




 私は予知夢を見る存在。予知夢の巫女だった。


 私にとって、夢は未来を示すもの。

 予知夢は繰り返し見ることができるが、内容は変わらないものだった。


 何をしても、どんな事をしても、まったく変わらなかった。


 悲劇を何とかしようとしても、夢はいつも同じ内容で、たどり着いた未来も同じ。


 まったく同じ夢を、何度も見ては、絶望にさいなまれる。


 夢と同じ現実を見て、また絶望に。


 幸福なものがあれば、まだましだった。


 けれど。


 私が予知夢としてみるものは全て悲劇のものだったから。


 いつも夢を見るのが、辛くて、悲しかった。


 けれど、それが変わるようになったのだ。


 1年前から。





 同じ夢を繰り返さなくなったのは、


 魔王を倒すための、勇者さまの旅に同行するようになってから。


 勇者さまは型破りな方だった。


 常識というものを母親のおなかの中に置いてきたのだろう。


 立ちふさがるあまたの困難を、常人が思いつかない方法で切り抜けていく。


 その様をみているのは痛快で、私は彼にいつも何かしらの期待をしていた。


 だからなのだろうか。


 未来を知る事が怖くなくなっていった。


 型破りな勇者さまの行動が、未来を変え、私の予知夢の内容を何度も変えてくれたから。


 特に酷い内容の、絶望しかない予知夢の時だって、勇者様の行動の影響で、翌日にはほんのわずかにだが、夢が変わっていた。


 私は勇者さまに期待をしている。


 彼なら、運命を変えることができるのだと。


 でも、そんな勇者さまでも変えられないかもしれない未来がある。


 9度まったく同じ夢を見た。


 最後の戦いで魔王に敗れる勇者さまの夢を。


 今までそんなに同じ夢を見た事が無い。


 私は不安で押しつぶされそうだった。


 けれど勇者さまは、不安にまけるなと励ましてくれる。


 結果なんて、最後までどうなるか分からない。


 死んだ人間の前で悲しむような事があったって、人間達は逞しく生きて、いつも笑顔にかえているのだから。


 だからどんな夢を見ても最後まであきらめないでほしいと、勇者さまが言う。


 戦いの全ては、力だけではない。


 心を挫けさせないことが大事なのだと。





 不安を抱えながら臨む最終決戦。


 戦いの渦中の状況は、9回見たあの夢の通りになってしまった。


 勇者さまが命を落としたのだ。


 大地に倒れ伏した亡骸は、夢の通りだった。


 仲間たちは膝をおとし、絶望にさいなまれる。


 私の心も、暗い闇に覆われていく。


 けれど、私の心に勇者さまの声が響いた。


 未来はいつだって、人の想いが作り出すもの。


 今目の前にある不幸な環境なんかじゃない。


 それはただ、通り過ぎるだけの今の光景に過ぎない。


 ーーそんな、勇者さまの声が。


 決まった未来などどこにも存在しなくて、予知夢でさえ旅を盛り上げるドラマチックな要素に過ぎないと、勇者さまは笑いながら、いつかの旅の中で喋っていた。


 それが本当なら、私も前を向こう。


 勇者さまがくれたものを無駄にしないために。





 私は膝をおとす仲間たちを叱咤し、奮い立たせる。


 戦いはまだ終わっていない。


 自分たちが立っている限り、心を挫けさせない限り、勝敗は決していないのだと。





 勇者さまの死に嘆き悲しみ、絶望していた者達は立ち上がり、魔王との戦いを続ける。


 この戦いの結末がどうなるかは分からない。


 けれど、私たちの心は最後まで折れないだろう。


 勇者さまが私達に与えてくれたものは、こんな絶望などでは折れたりしないと、そう証明しなければならないのだから。



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