第1章:到着
夜は静まり返り、人影のない通りを駆け下りる男の足音だけが響いていた。呼吸は荒く浅く、目に恐怖が滲んでいた。彼は何度も振り返り、もはや存在しない逃げ道を探そうとしていた。
路地は突然途切れていた。両側にはレンガの壁があり、隅にはゴミが山積みになっているだけで、他には何もなく、出口はなかった。
背後から聞こえてくる足音が次第に静まり、近づいてくるにつれ、男は息を切らして立ち止まった。薄暗い闇の中、影が動いた。振り返ると、その影が追いかけてくるのが見えた。
そして彼は気づいた。暗闇の中から伸びてきた、上げられた手。しかし、それはただの手ではなかった。目の前の壁に映るその影は、月光にぼんやりと輝く鋭い刃となっていた。
男は後ずさりし、喉に詰まった叫び声を上げた。逃げ場はない。死が彼を待ち受けていた。
「擬人化された存在としての死という概念は、人類の黎明期から存在してきた。太古の昔から、人類は死を、あらゆる生命と共に歩み、その終わりを待つ避けられない存在として想像してきた。」
「彼女は言語や文化によって、様々な呼び名で呼ばれてきました。痩せこけた者、平べったい者、骨ばった者、禿げた者、キリナ、骸骨など。彼女は常に、あらゆる存在には限界があり、誰も避けることのできない運命があることを私たちに思い出させてくれました。」
「しかし、神話や伝説の域を超えて、死は実在し、独自の意識、意志、そして目的を持っていることを知っている人はほとんどいません。死は単なる抽象的な概念や恐怖を植え付けるための象徴ではありません。死は観察し、判断し、介入を決断すれば行動する存在なのです。」
「彼らの存在は、人々に恐怖と敬意、物語と儀式、そして時には希望さえも呼び起こしてきました。なぜなら、死は終わりであるだけでなく、未知への架け橋であり、すべての魂が通らなければならない道だからです。」
「この世界では、死神はただ待っているのではありません。時には、死神は人間の姿をとって生きている人々の間を歩き回り、死神が近づいていることに気づかない人々の運命を弄び、最後の役割を担う前に、自分が何であったかを常に思い出します。」
死神が棲む場所は天国でも地獄でもなく、しかし両方の影を孕んでいた。重苦しい灰色の霧が全てを覆い、ひび割れた壁や歪んだ柱にかろうじて届く鈍い光を遮っていた。全ては永遠の静寂に包まれ、彼ら自身の足音と、通り過ぎる魂たちの遠くのささやきだけがそれを破っていた。
床は幾世紀もの歳月を経て、砕けた大理石のようで、幾重にも重なった汚れが刻まれていた。果てしない廊下は暗闇へと伸び、中には光を吸収するかのような濃い影に消えていくものもあった。崩れかけた塔やすり切れた彫像は、かつてこの地が栄華を誇っていたかもしれない古代を彷彿とさせる。しかし今、すべてが朽ち果てていた。
小さな光が宙を漂い、エネルギーの亡霊がかろうじて狭い空間を照らし、埃と忘れ去られた時の匂いが隅々まで染み込んでいた。遠くでは、スケルトンの小さな軍隊の残響が金属的なリズムのように響き、すべてが廃墟のように見えても、ここにはまだ秩序が…彼の監視下では…存在していることを彼に思い出させた。
そこは尊敬と恐怖を抱かせる場所だったが、それ以上に、無限の忍耐力を持つ者をも退屈させる場所だった。だからこそ、死神でさえ、日々の任務を超えて娯楽を求める理由を見出したのだ。
永遠の仕事は彼を疲れさせ始めていた。来る日も来る日も、魂を一つ一つ、来世へと導き、一つ一つの試練が正しく遂行されるよう見届ける。今のところ、彼の注意を引くような邪魔は何もなかったが…しかし、その繰り返しは彼を退屈させていた。
彼は魂の部屋の中央に立ち、部下たちを観察していた。小さな骸骨の小さな軍隊は、常に勤勉で、常に注意深く、静寂の霊廟の中で精確に動いていた。彼に与えられた任務を遂行するたびに、彼らの骨は静かに軋んでいた。
優雅でありながら軽蔑的な仕草で、死神は手を挙げ、深く穏やかな声で言った。
「私が留守の間、ここの全てをきちんと管理してくれ。戻ってきた時に散らかっているのは嫌なんだ。その間…少し楽しもう。」
部屋中に、満足げなきしみ音が響き渡った。小さな骸骨たちは頷き、散り散りになり、規律正しく効率的に縄張りを整理した。
死神は鋭い歯を見せて微笑んだ。今日は魂が来るのを待つだけではない。今日は、いつ、どのように人間の人生に介入するか、運命を変え、恐怖と好奇心を植え付け、そして娯楽を与えるか、自らが決めるのだ。
彼は、魂の部屋と忠実な軍隊を後にし、冷たい大理石の上を裸足で踏みしめ、しっかりとした足取りで出口へと向かった。暗闇がカーテンのように彼の後ろで閉じた。
生の世界は、彼にとって奇妙なほど混沌としていて、魅力的に思えた。あらゆる音、あらゆる光、あらゆる影が、彼の目の前で踊っているようだった。しかし、彼はすぐにあることに気づいた。人間の間を歩くには、変装が必要だと。
彼は冷たい光に照らされた建物へと足を踏み入れた。近くの病院だ。彼は鋭い歯を見せて微笑んだ。そこに、探し求めているものがあるだろう。
彼は静かに遺体安置所へと足を踏み入れた。そこは外界の喧騒から隔絶され、静かに遺体が横たわる場所だった。彼の目に留まったのは、他の遺体とは違い、それほど劣化していない遺体だった。皮膚はまだ人間の色を保っており、死神の灰色の影とは対照的に、温かみさえ感じられた。
彼の頭に、単純でありながら完璧な考えが浮かんだ。その皮膚を変装に使うのだ。
それは、生者たちの間で人目につかずに生き延びることを可能にするだけでなく、ある意味、この若者は彼に、今の役割を担う前の自分を思い起こさせるものだった。死神となる前、傷跡と永遠を背負う前、そして今の怪物となる前の自分を。
彼は、この肉体を人間性の仮面として用いることを、緻密かつ慎重に決意した。それは不必要な残酷さではなく、戦略であり、奇妙な郷愁であり、かつての自分、そして今、自分が何者になったのかを思い出させるものだった。
若者の皮をまとった死神は、生者の間を歩き、群衆に溶け込むようにしていった。足音は静かで、存在はほとんど感じられなかったが、真っ白な目はすべてを見通すようだった。
突然、一人の男が彼に近づいてきた。それは、安易な獲物を探している泥棒だった。「全部差し出せ」と男は唸り声を上げ、粗末な武器を近づけた。
大きな間違いだった。
死神は変装の下で微笑み、一瞬の時間を延ばした。そして瞬きする間もなく、真の姿が現れた。剃刀のように鋭い歯、底なしの白い瞳、そして指先は今にも切り裂きそうな剃刀のように鋭い刃と化していた。その手の影が泥棒に落ち、彼の内に秘めた致命的な鋭さを映し出した。
男は反応する暇さえなかった。静かで残酷な瞬間、生命は彼から去っていった。
死神は死体を調べ、視線を泥棒のシャツに落とした。唇はまるで人間のような笑みを浮かべた。それは彼のお気に入りのバンド、ウィズイン・テンプテーションのTシャツだった。彼はふざけるように男の服を脱がせ、それを衣装の上に被せ、布地を体型に合わせて調整した。
奇妙な感情が彼の体を駆け巡った。喜び。音楽のような単純なものが、生と死の狭間を彷徨う者でさえも感情を呼び起こすのだ。
準備は万端だった。衣装一式、生者達の元への最初の冒険、そして夜の闇の中で微笑みを誘う、彼ならではの個性。
死神が新たな変装をまとい、鋭い笑みで思考を照らしながら立ち去る間、遺体安置所は静まり返っていた…静かすぎるほどに。
数分後、数時間前に亡くなった若い男の遺体を探す医者が駆け込んできた。彼の足音は冷たい大理石の床にこだまし、まだ宙に漂っているかのような影には気づかなかった。
担架に辿り着くと、彼の顔色が一変した。遺体がもはや無傷ではないことに気づき、恐怖に目を見開いた。かつて少年を覆っていた皮膚は失われ、本来人間らしさがあったはずの場所に、冷酷な空虚だけが残っていた。
医師は息を呑み、一歩後ずさりした。目の前の光景を理解できなかった。背筋が凍りつき、答えられない疑問が頭に浮かんだ。
「誰が…あるいは何が…こんなことをしたのか?」
遺体安置所の暗闇の中で、彼自身の恐怖の残響が、まるで彼を嘲笑うかのような静寂と混ざり合っていた。死は既に遠く離れ、生者の間を歩き回り、そのゲームを続ける準備ができていた…そして、謎と恐怖、そして何もかもがもう元には戻らないという予感だけを残して。