表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味パーティーのエルレアさん  作者: 甘栗八
第3章 ガンゾ=べラッソの遺産
52/75

第13話:マモリテ

 拠点内部は、わずかな自然光を取り入れつつ、壁の松明で明かりを確保する構造になっていた。魔力の照明のような気の利いたものはない。相手の視覚がどのようなものかわからないため、いっそ(とも)してしまったほうがこちらに有利だろうと、入口から順に灯りをつけつつ慎重に進んでゆく。迷宮のようには大きくはないと見える空間である。


 討伐隊の死骸が散乱している。一体は頭を完全に潰されており、別の一体は壁に打ち付けられて脚が引きちぎれている。天井にめり込んでいる死骸もあった。計算ではこの中では多くて四、五人が殺されているはずだ。やられ方を見るに、このアジトの守護者『マモリテ』は腕力勝負のつくりでやはり間違いあるまい。


 広めの空間が奥にあった。そこにつながって小部屋状に膨れた空間がいくつかあり、中には寝床と思しき藁の塊や、飲み水の樽などが置かれている。強盗行為での収穫と見られる荷物も積まれていた。これらの内部には、動くものの気配はなかった。


「通気孔も設けられてる。明らかに人工的な作りだ。土魔法に適性のある奴がいた可能性が高いな。これもガンゾだとすると、使役人形(ゴーレム)は土、石、鉱物製あたりかな」


 一行以外に、洞窟の中に音を立てる者はいない。




「むっ」


 トキが明かりを向けた先、最奥部のまた別の小部屋の中には、シーツの敷かれた寝台が横に置かれているのが見えた。その横には、異形の石像が佇んでいる。悪魔を模したのであろうか、蝙蝠のような醜悪な顔を持ち、短い角を額から二本生やした人型の魔物。『沙厳熊(アダマス)』よりは小さいがトキよりは背が高い。やや前傾姿勢で、両の腕は丸太よりも更に太く、拳は西瓜のように大きく地面についており、その先端は血で変色していた。下半身は逆にややほっそりとしており、脚も長くはない。

 手前の足元、部屋の入口付近に、ふたりの犠牲者が八つ裂きにされている。服装から、討伐隊兵士と例の道案内にされた新米盗賊だとわかった。


「わかりやすすぎて恐れ入るぜ、名札までついててもおかしくねーくらいだ。明らかにアイツがマモリテだな。今は止まってるようだが、魔力はまだこもってるふうに見える。この部屋に入ったら動き出す仕掛けかな? 他の奴のやられようを見るに、一度動き出すとアジトの出口までは行動範囲になるんだろう」


「動かないなら、距離取ったままで室内に魔法を撃ち込んでみる? 硬いヤツには効果薄いけど、アレ程度なら破壊できそうな気はするわ」


「つっても、あの部屋を調べねーとさすがに来た意味ない気がするしな」


 ガンゾが守りたかった何か、それがその部屋にあることは明白であった。アジト内の他の場所は見向きもされていない。むしろ、荷駄程度持ち出すならばどうぞご勝手に、くらいの割り切りが見て取れる。ここでヴェガの大規模攻撃魔法を見舞うと、室内まるごと滅茶苦茶になってしまいかねない。


 小部屋の様子を伺っている中で、エルレアは石像の隣の寝台の方に目をやった。誰かが寝かせられているのか、被せられたシーツに盛り上がりが見える。視線を横にずらしてゆくと。


 ……頭??


 かぶせられたシーツから露出したヒトの首のようなもの、色の薄い頭髪は短く揃えられている。皮膚全体をザラついた表面が覆っているようだ。わずかな明かりで照らした中ではあるが、青い……? あれもまた人形だろうか、と思ったエルレアは、しかしふと別の可能性に思い至った。


 青殻病(セイカクビョウ)……!!


 カワティシ領主の奥方が患っていたという病気だ。あの特徴的な肌を見たことがある気がする。ということは人間? それとも遺体? こんな惨事の横で普通の人間が寝ていられるものだろうか?

 息遣いなどはよく聞こえない。覆うシーツにも、目に見える動きはない。


「もう一体の使役人形(ゴーレム)かしら。やっぱり攻撃準備だけするわね」


 目を凝らしているエルレアを見て、同じ対象に注意を移したヴェガが、狙いを定めて杖の先端に魔力を込めたその時。


 石像(マモリテ)の眼が赤く光った。


「下がれ!!」


 その直後、爆発的な速度でマモリテが一行に突っ込んできた。上から振りかぶられたハンマーのような拳、トキの棒が瞬時に下からそれを迎え、地面へと逸らす。全体重で大地を殴りつける形になった石像。

 洞窟中に轟音が鳴り響き、小石がパラパラと天井から落ちてきた。

 受けた棒を半回転させると、トキは横から石像の頭部を殴りつけた。更に身体を回して足の裏で胴体を蹴りつける。空いた距離を走らせた棒、加速した先端で頭に突きを見舞う。マモリテは重い音を立てて地面に倒れ込んだがすぐさま起き上がった。


「身内への敵意に反応するとは高性能な石コロだ。来な、ガンゾの墓標に作り変えてやるぜ」


 トキは石像と正面から向かい合った。




 エルレアとヴェガは素早く距離を取り、トキの左後方、壁沿いへと回り込んでいる。


「あのシーツ、青殻病(セイカクビョウ)患者ではないかと思うんです」


「そうすると、あれを守っていたってことかしらね。じゃあ一旦マモリテに集中しましょう。私は援護射撃を狙うわ。エルレアちゃんは雷強化を解除して即時回復に備えて」


「はい!」


 ふたりもマモリテへの迎撃態勢を取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ