第13話:ひでーことするからさ
倒れたアダマスの足の石枷にトキが手を当てて魔力を込めると、元の六尺棒の形に戻った。それを持って立ち上がるトキ。
「待てよ、邪魔しやがって。先に手を付けたのは俺達だぜ」
いつの間にかダメオたち、もとい『羅銘露』メンバーが広場後方に勢揃いしている。口を開いたのは杖ダメオこと、ランスと呼ばれた男である。エルレアを後ろにかばってヴェガが鋭い目をやっている。
「ええ、それでどうにもならずに尻尾巻いて逃げ出して隅っこでガタガタ震えてたんですよね。アンタらのせいで服がドロッドロだ」
トキはつまらなさそうに足元の石コロを蹴飛ばして言った。邪魔したのはどっちだ、とでも言いたげな表情である。ここまでアダマスはほぼ無傷だったため、彼等の投擲した斧が有効打となる見込みも不透明だったが、当たりどころと威力によっては素材がダメになってしまう可能性もあったのだ。
ただ、泥飛沫で汚れたのはさすがに自分たちが繰り出した技のせいでは、とエルレアは内心で突っ込んだ。
「ハア!?? 俺の渾身の一撃を妨害したのはテメエだろうが!! 『ハザウィック』から獲物を横取りしようってのか!! その死骸を寄越せ!!」
斧ダメオ――今は武器を投げてしまったので素手ダメオと呼ぶべきか――が激昂する。
「さっきからその名前がどうしたんですか。傷ひとつロクに負わせられませんでしたが魔獣を怒らせたのは僕達ハザウィックですから素材を恵んでください、って言ってます?」
トキは口論を続けながら、さり気なくふたりに目配せをしている。『羅銘露』との間から位置を変えろと言っているのだ。あわせて、暗い中で目立たない程度に少しずつ前に歩を詰めている。
「本当に『ハザウィック』を知らねえのか? 『幽門』の妨害といいよお、ナメた真似してっと、ここがテメエらの墓場になんぜ」
「ええ、知らなかったかな、名門『ハザウィック』がこんなに口だけよく回る氏族とはね」
剣ダメオが凄んでいる隙にジリジリとトキの後ろに回っていた後衛ふたりに弓ダメオが目をやったのを、トキは睨んだ。
「そっちこそ、ザバンで食ってて俺達を知らないんなら、この際覚えておくといい。『悪食』だ」
「何がアクジキだ、テメエはただのアコギなコジキ野郎だよ!!!」
怒鳴って矢をつがえにかかった弓ダメオの指を、斜め下から襲った石の礫が打ち砕いた。さきほど足先で魔力を流しておいた石コロである。『羅銘露』側の暗黒空間での警戒不足が露呈した形であった。
「ギャッ!!」
トキは前に一気に詰めながら仲間に声をかけた。
「エルレアさん、ヴェガ、俺だけでやる。今からひでーことするからさ、目ぇつぶって後ろ向いといてもらえる?」
何らかの意図があると即座に察したふたりは、トキの背後に走りながら、すぐに言われたとおりに振る舞った。
「ひでーことされんのはテメエのほうだ!!」
風の刃をかざして襲いかかった魔法剣士、つまり剣ダメオを前に、トキは『晃之雉』の魔石を素早く取り出すや前方に放り投げ、それに向けて棒の強烈な突きを見舞った。同時に左手で顔を隠す。
砕け散った魔石は、強烈な閃光を一面に撒き散らした。突然の現象に、『羅銘露』の面々はなすすべもなく目を覆って悶絶した。




