転生令嬢ローズ・ゲルプ
Side Rose
私の名前はローズ・ゲルプ。ゲルプ男爵家の一人娘なの。そして、私はこの世界のヒロイン!
ここだけ聞くとただのやばいやつになるけれど、私がそう言うには理由があるの。
私は、元日本人!なぜかは知らないけれど、私はハマっていた乙女ゲームの世界に入り込んじゃったの。
私は元の世界でどうやって死んだかはわからない。そもそも本当に死んだかどうかもわからない。
けれどここが乙女ゲームの世界ととても似ていることは知っているわ。
まずは私がローズになった経緯を説明するわね。
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Side Momo
私は、幼馴染が3人いる。家が近所で、幼稚園から高校までずっと一緒だった。学校ではみんな美形だから有名で人気もあった。ファンクラブまで存在していたくらいだ。ちなみに過去形なのは、事件を起こして解体されたからだ。
「ねえねえ紫苑~。このゲームめっちゃおすすめ!ちょっとでいいからやってみてよ」
「桃、私こういうゲーム苦手って言ってるでしょ。なんか、耳が痛いのよ」
「いいじゃん。イケメンたちが私を甘やかしてくれる世界なのよ?何が嫌なの」
「そういうところだってば」
「www」
高校の昼休憩。私はゲーム画面を開いたスマホを紫苑に見せつけながらじゃれあう。
紫苑はお堅いタイプで、こういうゲームは苦手そうだと知ったうえであえて勧めてみた。
「お前またそういうのにハマってんのか」
「翠はシャラップ。これは、めっちゃスト-リー面白いから!紫苑、小説は好きでしょ?……どうせだし翠もやる?」
「俺への扱い雑だな」
「それはお前だからな」
蒼夜がとどめを刺した。翠は気にせず購買のパンをほおばりながら、私のスマホ画面をのぞき込んできた。
「ってこれ、姉貴がやってるやつじゃん。そんなに面白いのか?」
「それがですな、キャラそれぞれに4つのエンディングが用意されているんだけど、エンディング一つ一つが全く違う結果になってるの」
「それはそうなんじゃないか?」
大して翠は興味なさそうだ。
「他のだとさ、違うエンディングでも同じキャラだとさ、セリフの中身ちょっと変えただけとかあるんだよ~。
でもこれは、なんか秘密とか抱えているキャラだったらさ、こういう行動をとらなかったからこういうエンディングになって、こういう結果になった、みたいな。シーンの使いまわしがないんだよね~」
「へー」
「自分から聞いといてそれはなくない?」
「痛っ!!」
私は翠の頬を思いっきりつねった。
「そんなに桃が言うなら……。ちょっとやってみようかな」
「ありがとうございます!!」
心優しい紫苑様はやってくれるらしい。
「でも、あまり期待しないでね!」
そういう紫苑は、ある程度はやってくれるだろう。
――いやー私がこのゲームを勧めた一番の理由は他にあるんだけどなぁ……。
もちろん、ただ紫苑が苦手そうなゲームを私が勧める訳ではない。
当然、同士を増やすなら確実な所から……。紫苑はきっとこのゲームにハマる筈だ。
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「悔しい……!」
「言ったでしょ?やった方がいいって」
「まさか蒼夜似のキャラがいるなんて……」
「お次のターゲットは蒼夜です。ほら、悪役令嬢が紫苑に似てる」
「あー確かにな」
紫苑は、蒼夜と付き合っている。幼馴染カップルで、とてもお似合いだ。性格的にも色的にも。
初対面で一目惚れかましていた二人のことだ。互いに似たキャラクターが出てくるゲームにハマらない訳がないだろう!
「俺には?」
「人の高尚な心に鈍感そうなあんたに言う事は何もない!あんたができることは、あんたのお姉ちゃんを私に紹介することだけだ!」
「は?!人の高尚な心ってなんだよ!!」
「見たらわかるでしょう!」
「分かんねぇから聞いてんだろうが!!」
「うるさい翠、桃」
「「はい」」
蒼夜の凍るような目がすごく突き刺さる……。学校中の女子たちは、何夢見てんのこの冷血漢に!!こいつは顔がいいだけよ!紫苑以外にはね!!
「まあまあ、いつものことでしょ桃と翠のじゃれ合いは」
「「なにがじゃれ合いだー!!」」
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「ねえ、桃の推しキャラは誰なの?」
「え?気になる?どうせ、紫苑の推しキャラはヘルブラオだとして……」
「何で決めつけるのよ」
不機嫌そうに言うが、むしろそれ以外だったらちょっと私は蒼夜にチクらせていただかなくてはならない。
「ヘルブラオ一択でしょ。蒼夜に似てるし。なんか、ヘルブラオとヴィオラってうまくいかなかった世界線の蒼夜と紫苑だよね~」
「確かに~。じゃなくてっ!桃の推しは!?グリューン!?」
「そんな訳ないでしょ」
私は鼻で笑う。誰が好き好んで翠似のキャラを推しにするのよ。まあ、翠が好きな人を否定するつもりはないが、私はその中に入っていない。
「じゃあ誰よ」
「ヴァイスしか勝たん」
自信満々に私は言い切った。一瞬沈黙が下りた。
「え、あの胡散臭そうなやつ?」
「は?まだヴァイスを攻略してないからそんなことを言うんだわ!!どうせ、紫苑もヴァイス攻略したらあのキャラの尊さを理解できるようになる!」
「ハイハイ、桃ってそういえばカモられそうなタイプだったの忘れてたー」
紫苑の棒読みがウザい。
「まあ、人気あるキャラなのは知ってるけど……」
「でしょ!?」
「だってずっと敬語だし」
「敬語キャラいいよね!!」
「素顔見せないし」
「あの下にはどんな顔が隠されているのか、妄想が捗ったわ!!」
「隠し事多すぎ。ヴァイスって名前ももしかしたら偽名かもしれないし」
「謎に包まれたイケメンは夢がある」
「あと絶対人殺してる。警護のためとかじゃなくて、犯罪的な意味で」
「止むに止まれぬ事情があったのよ……」
「恋は、盲目なのね」
「世の中のお姉さまは私と一緒のことを思っています!」
紫苑が私のことをかわいそうなものを見る目でみている。失礼な!
「蒼夜、翠、桃の推しヴァイスだって」
「あー桃が好きそうなキャラだ」
「同感」
「俺攻略してみたけどさ、桃が好きそうな要素しかなかったぞ。マジで桃が好きな典型的なイケメンだったわ」
「いいでしょ!?」
いつの間にか翠もこのゲームをやり始めていた。翠は自分に似たキャラもいたことに驚いていたが。
「俺は男とは恋愛しないぞ」
「翠が同性愛に目覚めたからこのゲームするのかと思ってた……」
「んな訳あるか!!お前ら三人がやるから、俺もやらざるをえなかったんだろ!!」
「やらなくてもよかったのに」
「俺に一人で淋しく昼飯食えってか?」
「うん」
「うんじゃねえよ、この野郎」
「というか、このゲームの名前って撫子の学名なのか。学園とか国の名前にも花の名前が使われているな」
「花言葉とか?確か撫子って純愛じゃなかった?」
「まあ、乙女ゲームの題名にはぴったりな名前だな」
「そうだね。ダイアンサスって、かっこいいしね」
とりとめのない毎日。それがずっと続くと――信じて疑わなかった。
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Side Unidentified
「???」
目を開いたら、知らないところにいた。
どこだかわからない。ただ一つ言えることは、ここは私の部屋ではないという事だ。
――ところでなんか動きにくいわね。
起き上がることも、寝返りを打つこともできない。動くことはできるが。
――私、どうしたのかしら……。
不安に思い、それを紛らわすように腕や足を動かしてみる。そして、たまたま腕が視界の中に入った。
「う?」
どう見ても赤ちゃんの腕。うん、気のせい気のせい。まさか私が赤ちゃんになっている訳……。
「ふぎぁぁぁぁぁああああああ????!!!!」
私赤ちゃんになってる???何故???
「お嬢様どうしましたか?!」
私が大声を上げたから、侍女が部屋に飛び込んできた。……ん?侍女?
彼女は私を抱き上げて、大丈夫そうかを確認する。
「大丈夫そうね、よかった……」
そう言うと、侍女は私を丁寧にベビーベッドに寝かしつけ、私が寝るのを見守ると静かに外に出た。
まあ、寝たふりなんだけどね!とりあえず、今の状況について考えよう。
私はあの侍女が何を言っているのか理解できてしまった。
内容自体は問題ではない。だが、彼女がしゃべっていたのは日本語ではなかったの!そして、私はなぜか理解できてしまった。まあ、転生?特典としよう。次!
そもそもなんでそんな自然と侍女って単語が出てくる?まあ服装はメイドさんっぽかったし、あってるっちゃあってるっぽいけど。私はお嬢様らしいし。
という事は、ここは金持ちの家で、私はその家に娘として生まれたってこと!
うん、人生楽そうで何より。っというかここどこの世界??!!