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アイリスの花~貴方に贈る一輪の花~  作者: 七海飛鳥
第一部 第一章 ようこそ、グロリオサ学園へ
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試験――開始。

ちょっと加筆しました。


矛盾しているところを改定しました。

「そこまで!」

周りの受験生が一斉に筆記用具を置く。早々に解答欄を埋め尽くしていた僕は、ようやく終わった暇な時間を喜んだ。


ざわざわとし始める受験生たち。ついさっき終わった学力試験の結果について話していた。



正直、準備の時間がなくて少し不安ではあった。だが、試験が始まりそれが杞憂だとわかり、少し安心したのだが、問題が簡単すぎてつまらなかったのだ。

持ち時間の半分を使うことなく終わってしまった。

早めに回答が終わったからと、立ち歩くことは許されていないため、そのまま自席で暇を持て余していたのだ。



――師匠がニコニコ顔で「今年の学力試験は難しくしておいたから、頑張れ」と言われ、どんな問題が出るかわくわくしていた。だが、思った以上に簡単でつまらなかった。騙したのですか、師匠?



師匠への恨み節は後にしよう。後で師匠を問い詰めることを決めた。



「でも、最後の問題だけは、少し興味深かったな……」

その問題は、風属性初級魔法である《(エアリアル)》の魔法陣を改良し、風属性上級魔法である《風嵐(エアストーム)》と同等の殺傷能力を持たせよ、という魔法陣の応用問題だった。


魔法を使うにあたって、発動方法が二つある。一つは詠唱、もう一つが魔法陣を描くことだ。

方法が二つあるという事は、それぞれに短所があるという事だ。


詠唱は、魔法を組み立ててから発動までにかかる時間が短いのが特徴だ。それに、魔法陣の形を覚えていなくとも、魔法を手軽に発動できてしまうのも特徴の一つだ。

だが、それ故に魔法の威力や範囲などが固定されてしまい、汎用性が低くなってしまう。更に、魔法陣で発動したものに比べ、威力も下がってしまうのが短所だ。


魔法陣は、線を付け加えたり減らしたりすることで魔法の威力や範囲などを変えることができる。汎用性が高い上に威力を絞れば使う魔力量も少なくて済むので、効率がいい。

しかし、魔法陣を描くには時間がかかり、線一つ一つに意味があるので書き間違えは大事故につながる恐れがある。その上、魔法陣を描くには専用の知識が必要になるため、初心者には向かない方法でもある。



この問題の難しい所は、あくまでベースは初級魔法という事だ。どんなに魔法陣を改造したとしても初級魔法の範疇に入っていなければならないが、初級魔法の魔方陣はそろって小さく改造できるところが少ない。

だが、方法がない訳でもなければ、その方法が一つしかない訳でもない。


僕はあっさりその問題を解き、学力試験を無事に終了させた。

ただ――。



――見られているな……。



青髪の令息と紫髪の令嬢。まあ、ここに仮面をしている人物など、僕一人しかいないから、気になってしまうのかもしれないが、なんとなくそういう意味の視線ではない気がする。

それ以外に何か目立つことをした覚えがない。


気味が悪いが、別に害意は感じられなかったため、無視することにした。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「測定、終了です……」

試験官が呆気にとられたように言う。


この試験は魔力量を図る試験だ。魔力の多さは貴族のステータスになるため、貴族が多く通う学園はこれが入学試験になっていたりしている。



方法は簡単だ。魔力の多さや属性によって光り方が違う魔石水晶に魔力を送るだけ。魔力を動かせない者は直接水晶に触れる必要があるが、僕は自由自在に動かせるため関係ない。


順番が僕の一つ前のピンク髪令嬢は、うっかりすると目が潰れるくらいの黄金の光を出した。そこに炎も黄金の光と比べるとうっすらではあるが見て取れた。


光の適正が強く、炎の適性がそれに比べとても弱い。魔力量は歴代の英雄並みにあるという事だろう。

目の前の少女はしばらく呆然としたかと思うと、はしゃぎだした。

無理もない。そこまで魔力量が多いと、成功は約束されている。


はっと我に帰り、申し訳なさそうに僕を見た令嬢は、そそくさとその場を後にした。


いまだ戸惑っている試験管を尻目に、僕は水晶の上に手をかざす。

すると、おどろおどろしい闇と竜巻の下で渦巻く水流、炎に焼かれる岩が出てきた。


この水晶は実態があるものを見せる訳ではない。そのため、どんなに激しい竜巻が現れようとも、激しい炎が現れようとも安全なのだ。――先程の強い光が出なければの話ではあるが。


そもそも実際に火が出ると危なすぎて入学試験に採用する訳がない。だが、見せる幻影がリアルすぎて思いっきり身構えている者もいるが。


僕は、自分の魔力量が桁外れだという事を知っている。二連続でけた外れの鑑定結果を見ることになった試験管の肩を叩いて、僕は仮面越しににっこりと笑った。

「これで終わりですよね?」

「え、ええ……」

「では失礼します」


僕は、闇に強力な適性がある。それより少し劣っているが、火、水、風、土にも適性があり、その魔力量も膨大だ。


普通は、あの水晶に浮かび上がった適正以外の魔法も使うことができる。

だが僕は光属性の魔法を使うことができない。一ミリの適性もないのだろう。



――見られているな……。



別に敵意は感じられなかったので、試験中も放っておいたのだが、未だに見られている。一体僕に何の用事があるのだろうか。

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