あの嘘つきは、お役御免だ。
咲に、店に連れて行かれる。
「ぜぇ、ぜぇ」
息が荒くなる。人がいて、少し混んでいる店内をとんでもない速度で歩かされる。最近家に籠ってばっかで運動不足である。この程度で、疲れている・・・あの男に近づいている・・・・無いな・・・ありうるか。
「多分ここだよ、頑張りましたでちゅね、涼ちゃん」
「僕は、幼児なのか、咲ちゃん」
少し幼児返ししてみた。我ながら情けない。
「うわぁ、キモ。ロリコンは生理的に無理です。近づかないで下さい」
敬語を急に使われ、戸惑う。だが、ロリコンについて真面目に反論しようと思う。頭を抱え、自分の記憶をたよりに反論する。
「咲、ロリコンはね、あくまで性癖の1つであってそれが気持ち悪いとはどういう事か、僕には理解が出来ない。しかも、君には性癖があるだろSという性格と性癖が、それはロリコンと大して変わりはないし、僕に言わせればSの方がたちがわるい。子供を襲ってしまうようなロリコンならまずいが、見ているだけなら問題ないだろ、要は人を言葉や行動で故意に傷つけるのと子供を襲ったり、盗撮するのは同じで、陰湿なのかオープンにやっているかの違い程度に思えるんだ。僕は、ロリコンではないが、こうも、咲に決めつけられる事によって僕は確実に傷ついた。しかも少し頭に来ているよ。そこのあたり、君はどう思っているのかな。」
「単純にキモいんですけど。あと、ロリコンを擁護している様に説明してたけど、最後けなしてたよね」
「バレたか・・・もういい。服を買いに行こう。」
「いいけど。私が買いたいのは、・・・・」
「多すぎじゃない?」
「多すぎじゃないよ。女の子はこれくらい使ってるんですよ」
僕には理解できないほどの、服を使い分けているそうだ。
「じゃあ、僕は、スーツ、寝間着、普段着を2着ずつだけでいいや」
「本当にそれだけで良いの?、それじゃあ、先に涼のやつ買いに行こう」
店に入り、店員さんにスーツの試着を申し出る。店員さんに何故か連れて行かれる。
「採寸を行いますので、こちらへ。」
採寸室らしき所に連れて行かれ、測る。
「終わりました。このサイズなら、こちらなんて如何でしょうか?」
出されたスーツは、上品な柄が施してある、とても美しいスーツが2着出される。
「試着しても良いですか?」
「勿論でございます。」
試着室に入り、スーツに着替える。
「咲、これでどう?」
「うわぁ〜、いつもの陰な涼からは発せられない神々しさがあるよ。」
咲が感動しているのは、勿論だ。僕は、イケメンで性格を除けばモテる要素しかないのだ。
その証拠に、咲の後ろ側にいる、女性が何人も僕の方を見ている。ナルシスとかと思われるしかないのだが、ただのナルシストとは決定的に違うのは、僕は本物のイケメンなのだ。
「やっぱ、僕はイケメンなんだな」
「ナルシストと承認欲求の塊なんだな涼君は」
「咲君、僕はイケメンだから。みんなに注目されるんだよ」
「ナルシストロリコンは、別れたい。私だけボタン押して帰るわ」
「それだけは、お願いします。勘弁して下さい。」
そういって、彼女の腕にくっつく。まるで、いつもの咲みたいだ。
「涼ちゃんは、甘えん坊ですね。」
無視する。というか、無視しないと追撃が来ると思い、無視する。
「これにします。いくらですか?」
「2着で、10000Gです。」
宿泊費の500倍。正直もったいないが、これからずっと使い続けると考えると、安い買い物だ。
そして、追加で咲の服と僕の服をまとめて決済する。
「合計20000G・・・使い過ぎでしょ。」
「女の子が、努力して可愛く見せようとしてるんだから、男は払って当然でしょ」
どこかで、聞いた事があった気がするが、気のせいだろう。
「ぜぇ、ぜぇ疲れた。」
買った荷物も相まって、出口が遠く思える。
「もう少し。頑張って。」
そういって、15分ほど歩くと出口が見え、光を浴びる。解放された気分にあふれていると
「あっ、化粧品買い忘れた。もう1回戻っていい?」
「良い分けないだろ、日が暮れそうだし、明日出直そう」
「仕方ないね、帰ろう」
そう言って、店を出るとある看板に驚いた。
商店前駅へは、こちら。
「あの嘘つき宿主。やっぱおかしいと思ったんだ。電車がないなんて。
順路に従って進むと・・・・・馬車の駅だった。
「そうだった。機械はこの時代発展してなかったんだ。僕の気力を返してくれ」
「乗って帰ろう。時間短縮だよ。」
馬車の操縦者に声をかける。
「乗せて貰いたいんですけど」
「良いですよ、どちらまで行かれますか?」
「すいません。宿までなんですけど名前が分からないんで、逐一説明しながらでも良いですか?」
「勿論」
馬車に乗り、案内をしながら進んでゆく。
「やっぱ、日没を反射する、湖は綺麗だな」
「そこは、海でしょ」
鋭い指摘を、咲にされる。海はこの国にないと反論したい所だが、この時代の帝国は、南端を少し戦争で延ばし海に面する所まで広げていた。要は、植民地を得ていたと言う事だ。
「それはさておき、明日も行きたいなら、1人で行けるか?」
「無理。涼が一緒じゃなきゃ嫌。」
「じゃあ、仕方ない。明日の、午前中だけ付き合ってやる。」
「ありがとう」
まぁ、そんな話をしていると、宿の前に着く。
「ここで、おろして下さい」
「はい、40Gです」
お金を渡し、宿の中に入る。入ってみると店主が欠伸をかいていた。
「お帰りなさい」
「これは、どういう事ですか、歩きだけみたいな説明したくせに馬車があるじゃないですか、馬車が」
「それは、その」
「僕の労力と、時間を返して下さい」
悪寒がし始めている。
「涼、女の人をいじめちゃいけないって分からないの?」
「はい、すいません」
「戻るわよ、部屋でじっくり話を聞いてあげる」
母親か、と思ったが、部屋に戻ったら、何が起こるか僕には想像できる。怖い。
「助けて下さい。」
日が暮れる直前、時間旅行1日目にして、彼女に怒られる僕。みっともない。