はぁ〜鬱陶しい。
とりあえず事はともあれ、荷物をまとめる・・・・特に何も持ってきていない。
咲に関してもほぼと言っていいほど何も持ってきていない。
「とりあえず、服とか諸々買いに行く?」
とりあえず聞いてみた。
「行く、行く。じゃあ、服と・・・」
とりあえず金がたくさんかかりそうだ。
部屋を出て、階段を下り、ロビーに降りる。
「すみません、ここら辺に色々な必需品が買える、いい店はありませんか?」
「あぁ、それならここから、20分くらい歩いた所に大きな商業施設があります。そこに行けばと」
徒歩二十分は遠いと思ったが、必需品のためなら致し方ないと思い、少し鈍った体を無理矢理動かす。
「地図を頂いても?」
「良いですよ。はいこちらです。」
そういって、宿を出て外の空気を吸う。きれいな空気だ。
地図を見ると、思ったより入り組んでいて到底20分では、着かないだろうと考えられる。
「あの嘘つき店主、やりやがったな」
女性だったから、やらなかったものの男だったら頭突きして、投げつけてやるくらい頭に来た。
心を落ち着かせ、平常心を取り戻す。だが、それでも頭に来る。僕は、とても嘘が嫌いだと言うスタンスのもと、生きてきた。自分は嘘つくのに。立ち止まって考える事は大切だというが、今は止まってはいられない。
「とりあえず、歩こう。」
ここは、農業の大都市であってか農作物が安く手に入るそうだ。しかも、この国の始まりはこの都市だから、歴史的建造物やいろいろな昔の文化がたくさんあり内陸の貿易都市でもあるので、人の行き来も激しいはずなのに、あの宿は儲かってない、どころか倒産寸前だ。おかしい。
入り組んだ道を抜けると開けた所に着いた。
「綺麗」と言って咲が指を指す。その先には大きな湖がある。この湖は、4000年前に火山が噴火して、その溶岩などで川が塞き止められて出来た湖だそうだ。美しい。写真では、見た事があったが実物は初めて見た。
「綺麗だね。だけど、ここで止まってたら、買い物の時間が短くなちゃうよ〜」
いまは、既に午後3時を過ぎていたので、早くしないと日が暮れてしまう。
「そうだね、早く行こう」
大型商業施設マリガルへはこちら、という看板を見かける。
要はやっとの思いで着いたという事だ。だが、大型商業施設の前なので人ごみが予測できたが、その予測を、大幅に上回る人ごみだった。しかも、街に置いてある銅像なども相まってたちが悪い。
何故混んでいるのかを、説明しよう。伝わるか分からないけど。
まず、大きな広場があり、その真っ正面にマリガルがある。それに対応するかの様に円状に建物が建っている。
要は、広場と言うのは建物を立てている過程で出来たものなのだ。そして、何故か、むかつく事に、広場の入り口的な所の、両脇には銅像が建っている。邪魔だ。・・・これが、入り口を阻んでいると考えると、むかつく。
次に中に入ると、ど真ん中に噴水がある。これも邪魔だ。しかも、混んでいるため噴水の水だめに人が入ってしまう。・・・冷たそう。
そして、最後にマリガルの前に銅像2つ。とにかく、邪魔だ。
たぶん、というか想像だが、銅像4つで四角形を描き、魔除けとか、言っているだろう。それは、それで良いと思うが、完全に場所をミスっている。それなら、広場の外でも良いだろと思う自分を押し殺しながら・・・無理である。頭に来る。なんとか、打開策を探すために周りを見渡す。
路地裏を通ろうとしても、同じ考えを持っている人が居たり、接客系の夜の店やそれこそ売春もある。
だが、とにかく邪魔であると言う事に変わりない。
打開策がなく、楽して店に着く事を諦めた。
「って、マリガルって言いにくっ」
「そうだね」
という、たわいのない話をする、17歳制服姿で過去に行く2人。いつもの大きな声で言っても咲に伝わりにくいぐらい周りがうるさい。
なかなか進まないが、そんな中突如声がかかった。
「ねぇ、ねぇ、そこの君。お姉さんと気持ちいい事しない?」
と路地裏から誘われる。と同時にまた、悪寒がする。悪寒を感じたのか、
「ごめんね〜、また今度。」
と言って、女性は去って行く。逃げる所を見るのは面白いが、僕としては夜の店に少し興味がある。
「涼、ここに興味があるなんて考えてないでしょうね。」
エスパーか、と思う。また空を見る。
「こんな、調子で保つんだろうか」
混んでいる道を、人と、何十とぶつかりながら進む。
「着いた、疲れた。」
正直なところ、通路の50メートル程度で、30分かかった。無駄な時間だ。ただでさえ短い残された時間を、こんな所に費やすなんてもったいない事、この上ない。しかも、また鬱陶しい都会に好んで戻って行ったみたいじゃないか。鬱陶しい事が邪魔で邪魔で仕方がない。
「まぁ、あとここに半年いる予定だし、しかも1日目だからいいか。」
と考えていると、店に入る事が出来た。この店内が、ま~た、豪華で眩しい。店に着いて、少し心が楽になったが・・・「はぁ〜、鬱陶しっ」