儲りそうは本当なのか?/start up
ここで、いろいろな説明をしていきたいと思う。
まず飛ばされた時代は、今から500年前の王国。調べてみると、この時代はまだ機械が発展していないような時代である。医者に渡された資金だが調べてみると、この時代の値で言うと2人で3年間くらい不自由なく暮らせる額だ。次に、ありがたい事に、帝国とは言語が一緒だ。
最後に、地理的な事を解説すると、この大陸は大きな帝国と王国があり、その周りを諸外国が囲んでいると言う感じである。そして、ここは一番王国から遠い都市である。時間旅行はワープするごとに国境に近づくそうだ。ワープできる回数は戻る回数をのぞくと3回限りである。短くも長い時間の始まりである。
目を開くと、いきなり猛烈な光を浴びた。真っ昼間の晴天。正直暑い。
「うわっ、眩し。いいな〜、咲は帽子かぶっているから」
「それでも、結構まぶしいよ」
あの医者から渡された地図を見る。
「ここは、国境から一番遠い農業都市イシューという都市なんだな。どうする?まず。」
「まず、お金渡されたんだから、宿に泊まろうよ。お金もたくさんあるし」
確かに一理ある。家を借りても良いが、とてもではないが自由ではない。身動きを激しくするならやはり宿だろう、使いすぎたなら働けば良い。
近くの、宿を探す。そして、数十分歩いたところでいい感じの宿を見つける。
「こんにちは〜。泊まれる部屋はありますか。」
「あるどころか、暇すぎて困っているくらいですよ。」
「じゃあ、1部屋泊まらせて下さい。」
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。料金は1ヶ月200Gです。」
安すぎる。いや、というか何故1ヶ月単位なのか分からないが、200Gは僕たちの持っている資金の、100000分の1にも満たない額だ。あと、宿主はいきなり、ものすごい勢いで頭を下げて来た。
「何で、こんなに安いんですか?」
「それが、分からないんだよ。ここは、ちゃんと清掃もちゃんとしてるのに、誰も来ないんだよ」
そういって頭を掻く若い女性は、真面目に悩んでいる顔であった。
「この女が、涼を誘惑している」
「してないしてない。大丈夫だから。」
咲の、隠し持っているメンヘラが爆発しかけていた。学校では、マドンナと評されるほど美人だったが完璧な女性を演じるために、メンヘラを押し殺していたのだ。
「とりあえず、泊めさせて下さい。1ヶ月」
「ありがとう。今月金がなくって困ってたんだよ。泊まってくれるんだから、私が直接接客しても」
そういって、彼女は僕の手を握る。背中から悪寒がするが。
「お前、私の涼を・・・殺すよ」
「怖い、怖い、怖い。大丈夫、僕は君の物だから」
「良かった」
そういって腕を絡ませる咲は、正直愛が重たくなっている気がするが、気のせいだろう。
「では、ご案内します」
なんか、この店主。男感が否めないな。ボーイッシュを通り越して、もう口調とか男だ。
階段を上る。廊下の内装はというと、正直無茶苦茶綺麗である。歩いていると、部屋に案内された。
「ここです。この度は、我が宿をご利用していただきありがとうございます。ではごゆっくり」
ドアを開けると、ここに何故人が来ないのか分かる。無茶苦茶、殺風景で、あって良いであろう設備が欠けている。というか、何もない。ベッドとソファーだけだ。
「ここは、俺の部屋?」
「ぷっ。確かに涼の部屋だね。」
「いらないぞ。それ」
「私がいらないってこと。酷い。」
「そういう事じゃない。ごめん」
正直治してほしいところであるが、いざと言うときにちゃんとした奴なのでそこは安心している。
「ごめん。涼は病人だから、私がちゃんとしなくちゃね」
「なぁ、咲。俺ここで働きたいと思うんだ。ここで働けば儲かりそうなんだ」
と言って目を光らせている僕を見て、咲は
「勝手にすれば」
いつもでは想像できないくらいドライだった。