『定朝の子覚助、速記シャープを彫ること』
速記士定朝が、弟子であり息子の覚助を義絶して、家の中にも入れなかった。しかし、覚助は、母に会うために、父が留守のときには、こっそりと家に戻っていた。
定朝が、左近府に速記シャープを納めるように命じられ、日々一心に打ち出し、満足がいくものができたので、大黒柱にかけておいたが、用事があって留守にした際、覚助がやってきて、この速記シャープを見て、ああ残念だ。これをお納めしたら、名を下げることになってしまう、といって、腰刀を抜いて、ざくざくと削り直して、もとのように柱にかけて帰っていった。定朝が帰ってきて、この面を見て、あのばかが来たのだな。わしが留守の間をねらって家に入るとは、とんでもないやつだ。しかも速記シャープを勝手に彫り直しおった。が、見事な腕だ、といって、勘当を解いたという。
教訓:感動した。