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婚約試験  作者: ring
3/3

サン

魔神の呪いがさっぱり分からないけど、次は私が苦手な魔力試験。


「此方に居られましたか。次の魔力試験の為にこの魔石へ魔力を込めて下さい」


係員に渡された魔石は30センチ位ある大きさ。さすが婚約試験! こんな大きいの初めて見たわ。


ぎゅっと凝縮して魔石が割れる寸前まで魔力を込める。うーん、トリャー!


「個性的な掛け声ね。次の魔力試験では絶対負けない!」


チビッ子オッタさんも無事に知識試験を合格したらしい。


「断崖絶壁はギリギリだったじゃない。それより合格者は7人よ、この魔力試験で二人が脱落する。去年はここで脱落したけど今年は必ず合格するわ!」


ニーオさんがチビッ子を押し退け私の隣へ座ると一生懸命、魔石へ魔力を込める。


「フンッ。私は向こうでやるわ!」


チビッ子…… 二回、空へ打ち上げられたのに元気だな。


そう言えば、そろそろお腹空いてきた。


「ねぇ、お昼はどうするの?」

「魔力試験の途中で出るわ。今年は楽に取れると良いけど」


ニーオさんは、はぁー。と長いため息を吐くけど、確か私が調べた時は普通にお昼休憩あったよね?




******

「いよいよ魔力試験の準備が始まりました! 各車、魔力を込めた魔石を嵌め込んでおります。現場のフェムティさん、体力、知識試験を合格した皆さんの様子を教えて頂けますか?」

「こちら魔力試験会場は、サポートの方々が忙しなく働いており、原動力となる魔石を嵌め、ハンドルやタイヤの微調整に余念がありません。司会のティムさんへ一度お返しします」

「フェムティさん、ありがとうございます。会場の皆さんへ今年の魔力試験のコースを紹介します。

スタート位置は、知識試験の合格者順になっております。


スターティンググリッドに並びましたら試験スタート。ストレートから最初は90度カーブを抜け、次に突入するのは5メートルある川を渡り、軽く火の輪をくぐり抜けた後、岩場を攻略しなければなりません。

昼食に用意したのはアッチィ共和国特産品ココナッツと、香りは最低、味は最高のドリアンを自力で取って昼食とします。


食事時間は15分、もし取れない場合はそこで脱落です。コースアウトも脱落になりますのでご注意下さい。


昼食が済み次第、コースへ戻り最難関である10メートルジャンプをクリア後、ゴールまでの200メートルストレート。

上位5名が魔力試験の合格者になります」


司会者の説明を聞いて、コース攻略を考える。うーん…… これは気合いで乗り切るしかない。


「フユちゃん、これは?」

「あぁ、私の秘密兵器よ。フフフフフ…」


真っ黒なマシンに私の秘密兵器を仕込み、ポールボジションへ向かう。



******


「いよいよ魔力試験が始まります。各車、所定の位置で、スタート合図を待っている状態。

スタートシグナルが赤から青になればスタートです。尚、途中で魔石へ魔力を込める場合、コース脇にある規定のピットへ入ってから行って下さい。


それでは、スタートシグナルに御注目下さい」


ブォーンブォーン……


回転を上げスタートダッシュを決める為にアクセルを吹かす。


ピ・ピ・ピ・ピ-。


いっけぇぇえぇ-ーー!!

ブォーン-ーー!!


「各車、一斉にスタート!! あー!!第7マシンはトラブルでしょうか! 動きません。

6台は最初の90度カーブを次々曲がって行きます」


フォーーンフォーン……


次は川ね、秘密兵器その1。出でよ! オール。そして魔力注入!


手のひらサイズのオールがみるみる大きくなり、私は力一杯漕ぐ!


「川を凍らせる者、風で車体を浮かす者、皆さん自分の魔力を存分に発揮……


あれば、何だ? 第1号車、何故か巨大オールで川を渡っております! しかも早い!」


オリャーー!!


バシャバシャ水しぶきを上げているが、渡れれば良いのよ!


トリャーー!!


クッ。二台抜かされたけど勝負は始まったばかり。次は火の輪くぐりね。


皆、自分の適正魔力を使っているけど私は、


「伸びろー!! もの干し竿!」


バランスを取ってまるで棒高跳び選手のように火の輪をくぐり抜けた。


よし!! 次行くわよ!

アクセル全開、ブォーンと轟音を鳴らし岩場へ突っ込む。


「出でよ! 巨大ハンマー!」


ハンドルを足で操り、通常ハンマーに魔力注入すれば巨大ハンマーの出現。力一杯岩場を叩き割り道を作る。


使い終わるとポイっと捨てるが、


「コラー!! 障害物増やすんじゃないわよ!」

「チビッ子オッタさん…… ごめんね。テヘ」


思っていたより近くにいた、チビッ子オッタさんの車体に巨大ハンマーが刺さったみたい。


看板に『お食事&ピット』の文字を見つけ、広場へ入る。

車から降りてヤシの木を蹴りココナッツを無事ゲット。ドリアンの木に登りその場でナイフを使い中身を食べた。に、臭いが……


スルスルと木から降りてピットへ向かう。デカイ魔石へ魔力を込めてから、ゴールへ向かい突っ走る!


フォーンフォーン……

後ろからニーオさんやチビッ子オッタさんも、追いかけてきた!

最後は10メートルジャンプ。


「フユさん、お先に行きますわ!」

「ニーオさん! 負けないわ!」


ニーオさんが氷で橋を作る。

「表れろ! 氷の橋」


私も車に仕込んだジェットエンジンに魔力注入!

「かっ飛ばせ! そして飛べー!!」


ガクンと車体が浮き上がり、宙を走る。

「届け-ーー!!!」


ガンっと車体が揺れて10メートルジャンプ成功だ! 残すはラストスパート!

隣に並ぶのはニーオさん。トップ合格は譲らない!


「「いっけぇぇえぇ-ーー!!」」


フォーンフォーン……


「ゴーーール!! 最初にチェッカーフラッグを受けたのは……第1号車だー! 僅差で第2号車、三位合格は第4号車…」


やった…… 魔力試験も合格した……。

車から飛び出し、現場に居たフェムティさんから、マイクを奪う!


「フユ、16歳! 魔力試験も合格しました! トレ様待ってて下さい。必ず私が呪いを解いて、トレ様のお嫁さんになります!」



わぁーー!!


大歓声の中、私はトレ様を探した。王様の傍にいるはずだけど姿が見えない。




「オホホホホー!! あんた、やるわね。でもトレ様の妻になるのは私よ!」


空中に突然現れたのは……


「出たな! 怪人!」

「あんた、さっきまで魔神って言ってたじゃない!」

「ヒィー!! シモベはいつ出番なの?」

「全身黒タイツ軍団は来ないわよ!」

「詳しいわね。でも、怪人には負けない!」

「あんたが、さっき言ってたのよ!」

「さすが魔神。あー言えば、こー言う」

「もう! だから魔神じゃなくて、魔法使いベラよ!

あんたと話していると調子狂うわ。


でも、試験に合格しても残念だったわね」


魔神がニタァと笑う。


「婚約試験を妨害した罪で捕まえろ!」


ワラワラと全身黒タイツ軍団じゃなく、騎士団が会場へなだれ込む。


「このベラ様に敵うと思ってるの?」


魔神が杖を振ると騎士団の動きが止まる。

「卑怯ものめ! 魔法使いブスめ!」

「ブスじゃなくて、ヌフよ!」


「あらら、魔神ブスだって。魔神ベラじゃないじゃーん!」

「うるさーーーい! せいぜい今のうちに笑うがいいわ。このコロシアム全てに結界を張ったの、あと一時間でトレ様の呪いが解けなくなるわ。


もし、トレ様を見つけてキスで呪いが解ければ、あんたの勝ち。但し、心からトレ様を愛していなかった場合は、フユ。あんたは男になるのよ。


さぁ、早くしなきゃ時間が無くなってしまうわ」


私が男? うん、相手がトレ様ならアリね。


でも、この広いコロシアムの中で探すのかー、トレ様を探せ! ってやつね。


「魔神! その勝負、受けてやる!」


私はひざまずき、額と両手を地面に着け祈る。

我が神、ネッパー神よ。迷えるフユに力をお貸し下さい。


『我が弟子フユ。我を呼んだか』


フロントラットスプレッド姿で現れたのは、師匠であるネッパー神。


「とりあえず騎士団の皆さんを、動けるようにして下さい。私は愛するトレ様を探します!」


モストマスキュラー姿で、頷く師匠へ後は頼みトレ様を全力で探す。


どこ? どこにいるの?

観客席を突っ走り、トレ様を探す。


はぁはぁはぁ…… 既に30分経過、まだトレ様の姿が見つからない。でも…


「絶対、諦めてなるもんか!」


ひたすら人々の中を探すと、トレ様の姿を発見!


「トレ様!! やっと見つけました!」

「近寄るな! お前まで呪いを受けるぞ!」


逃げようとするトレ様を追いかけると、トレ様はドレスに足が縺れ倒れそうになる。


「危ない!」


トレ様の下へスライディングした!


「バカ! どけ!」


あれ? 重くない。ゆっくり上を確認すると間近にトレ様の顔が!


「危うく上に倒れる所だった。お前、呪いで女性になった俺をよく見つけたな」

「ほえ? 私にはトレ様はどんな姿であってもカッコいい皇子様です」


私の上から退いて、起き上がる為にトレ様が手を差し伸べてくれた。


「好きです。ずーっとトレ様の事だけを愛しています!」


私はトレ様の手を引っ張り、よろけた隙に唇へキスをした。


慌てて離れようとしたトレ様の姿が光輝き……


「戻った…… 俺は男性に戻った-ー! フユのおかげだ。ありがとう」

「トレ様への想いは誰にも負けませんからね」


ガバッと抱きしめられ、心臓バクバク。ヤバい嬉しすぎて死にそう……


「フユ。あの魔法使いを捕まえに行くぞ」

「はい! 地の果てまで一緒に行きます!」


しっかり繋がれた手を離さないように私は、トレ様と共に魔神の所へ向かう。


「ま、ま、まさか! 私の呪いを解いたの!」


魔神が真っ赤な顔で地団駄を踏みまくる。師匠は何故か騎士団の皆さんと、会場の皆さんとポージングレッスンをしていた。


「これが愛よ! 」


ビシッと指差し魔神へ言うと、


「私の負けね。トレ様の事、本当に好きだったのよ。

平凡に見えて、化粧映えする顔立ち、適度な筋肉としなやかな体躯。きっと…、きっと私と一緒に女装皇子としてこの世界一の夫婦になれましたのに!」


泣いた魔神は、黒い涙を流していたが……


「それって、お友達が欲しかっただけじゃないの?」


フユの言葉にアッチィ共和国の島民達の心は一つになったのだ。


『『それな』』


かくして、魔神は去り。会場にあった結界も無くなりアッチィ共和国に平和が訪れた。



~fin~






勝手に終わらすな-ー!



「トレ様! 体力・知識・魔力試験に合格しました! フユと結婚して下さい!」


どうやったのか、トレ様のドレスが一瞬でタキシード姿に変わった。


「婚約試験を見事突破し、呪いまで解いてくれた。

五人いる中で一番冴えない俺で本当に良いのか?」


じっと見つめられて、ボンッと顔が真っ赤に染まる。


「トレ様が良いの! トレ様じゃなきゃダメなの!」


ぎゅっと瞼を閉じて、トレ様の返事を待っていると。唇へ何かが触れてフワッと抱き上げられた。


「フユからの告白は二度目だな」


耳元で囁くトレ様の声に。


「覚えててくれたの?」


トレ様の顔を見上げると、ククッと笑い。


「もちろんだよ。さぁ最終試験だ! 来いスリー」


トレ様の呼び声に現れたのは飛竜。


会場は、突然の飛竜にポカーンとしていた。


「皇子には、それぞれ守護獣がいる。守護獣に気に入られなければ婚約者になれない。フユ、私のスリーと仲良く出来るかな?」


トレ様は、会場に降りた飛竜の前に私を降ろす。


「守護獣さま。フユと申します。どうか私とトレ様の結婚をお認め下さい」

「スリー、お前が認めてくれるよう俺からも頼む!」


隣に立ち一緒に守護獣さまを見上げる。


バサッ!


翼を広げた守護獣さまは私の顔をベローんと舐めた!?


「やったぞフユ!! スリーからも認められた。今から俺の婚約者はフユだ!」

「トレ様!!」


私はトレ様へ抱きつき、首へ手を回す。まるで海外映画のような熱いキス。


おめでとう!! トレ殿下!! フユちゃん!


会場から割れんばかりの拍手と祝いの言葉を貰い。私は見事、婚約試験を合格してトレ様の婚約者になりました。








~おまけ~


二人の日常。


トレ様の婚約者となったフユは、王宮にある一室で暮らしていた。


「フユ。迎えに来た」


扉から現れたのは、飛行隊の制服姿のトレ様。


「今日もカッコいい…」


目がハートになりポケーと見惚れるフユに、


『うちの嫁さん、可愛すぎだろ。いや、まだ婚約者か』


トレ様、心が駄々漏れな蕩けるような視線をフユへ向ける。


「すみません、あまりにカッコいいから…」


モジモジして、顔を真っ赤に染めたフユ。


『なに? この可愛い生き物! 俺の嫁さんか』


トレ様は、ゆっくりフユへ近付き腰へ手を回すと自分の胸へ引き寄せた。


「ト、トレ様!」


胸に顔を埋めて背中へ手を回すとぎゅっとしがみつくフユ。


『結婚前… 結婚前… 結婚前…』


心の中で念仏のように唱えているが、トレ様はフユにベタ惚れだ。





トレッティは毎朝。この光景に号泣しているとかしていないとか?




おわり。

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